第8話 勇者vs虎

 「チェ、チェ、チェリ~。」

 「ピア。落ち着いて!」


 今は風呂にかっている。


 「なんで!風呂なんですか!」

 「ピアは魔王が夜襲してくるからって寝てるの?魔王を野放しにしちゃ駄目!私たちがどんな場所だろうとしっかりと見張っていないと!」

 「そ、そうだよね。…。でも、バスタオル一枚なんてはずかしいよ~。」


 眼福。眼福。


 「チェリーとピアって、成人してるんだよな?」

 「当たり前だ。冒険者登録は15歳の成人が前提条件だ。」


 15歳で成人なのか…。


 「酒を飲んでもいいんだよな?」

 「お酒?!僕、大好きだよ!」


 「それなら、友好を深めるために…じゃじゃーん!」


 米焼酎の杜人そまびとを台所からパクって来ました。


 「それ!お酒だよね!」

 「多分。美味しいお酒だ。」


 俺は飲めないからわからん。ただ、酔っぱらって、全裸になるのを狙っているだけだ!


 「ピアさん。ささささ、一献。」


 一緒にパクって来たおちょこにお酒を注ぐ。


 とくとく


 「ピア!毒が入ってるんじゃ!」

 「チェリー。もし毒なら、こないだ僕が毒におかされた時に放置しておくよ。」

 「でも!」

 「いただきます!」


 ぐびぐび


 「ぷはぁぁ~」

 「いい飲みっぷりですね!ピアさん!チェリーさんもどうですか?」

 「チェリーも飲みなよ!はい!」

 「そ、それじゃ、いっぱいだけ…。」


 とくとく


 ぐびぐび


 「ぷはぁ。」


 心なしか、肌が赤くなってる気がする。今日はのぼせないように風呂の温度も下げてある!完璧だ!


 「魔王!つげ!」

 「は、はい?ピアさん?」

 「つげといってるだろ!」

 「はい!」

 これは…


 とくとく

 ぐびぐび

 「ぷはぁぁ~」


 飲み終わると何も言わずに、ずいっとおちょこをだす。


 とくとく

 ぐびぐび

 「ぷはぁぁ~」

 「チェリーさん。ピアさんを止めたほうがよくないですか~?」

 「あたしぃ~。もう、らめぇ~。」


 こっちは、よぇぇ!


 「おい!」

 「はい!」


 とくとく

 ぐびぐび

 「ぷはぁぁ~」


 焼酎の瓶が空になるころ、洗面所のほうに人の気配を感じ振り向くと、妹のいちが覗いている。


 「!!!」


 「おかーさん!おにーちゃんが、お風呂でお酒を飲んでる~!!」

 「あぁ!まて!いち~!」


 妄想は消え、空になった焼酎と浴室に充満するアルコールの香りだけが残る。

 俺、殺されるかもしれない。


 副題:風呂場で無礼講

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