第4話 女戦士vs倒れる

 今は風呂にかっている。


 「おい!魔王!」


 浴槽に浮かぶ風呂桶ふろおけの中にバスタオル姿の女戦士がいる。学校以外で妄想が現れたのは、初めてだ。いよいよ、俺の頭が…。


 「聞いているのか!」

 「おい。なんで俺んちの風呂にまで現れる?」

 「ふん!レベルが上がって、移動範囲が広がったんだ!」


 迷惑な…。


 「ここでも俺と戦うのか?」

 「いや…。このエリアだと装備が取り出せないみたいで…きゅ、休戦だ!」

 そう言って、ザブーンと風呂桶ふろおけの中で肩までつかる。


 「そっか。」

 ふー。これでのんびり風呂に入れる。俺は長風呂派だからな。


 「ところで、なんで俺が魔王なんだ?」

 「魔王以外にそんなデカイ奴がいるか!」

 「いや。ほら。俺のクラスメイトとか、みんな俺と同じ服きて、同じ大きさじゃん。」

 「あんなちゃちなゴーレムで誤魔化されるか!お前しか話さないじゃないか!」


 いや。話してるんだけどなぁ?妄想の音がみんなに聞こえないように、妄想にもみんなの音が聞こえないのか?


 見た目だけなら、金髪美少女で可愛いんだけどなぁ。…バスローブ一枚。エロいな。


 むくむく


 ちょっとからかってやるか。


 「おい!後ろを見ろ!」

 「こ!これは…!」


 さぁ、悲鳴を上げやがれ!


 「巨大芋虫キャタピラー!油断させておいて、襲うなど!だが、私は負けん!」


 ポコポコ

 「パンチ!キック!」


 ポコポコ

 「パンチ!パンチ!」


 そうじゃないだろ?!こいつ処女設定か?…だんだん。気持ち良くなってきた。


 「む?!進化したのか!ならスキルで攻撃だ!」


 ポコン

 ≪スラッシュ≫パンチ!

 ポコン

 ≪スラッシュ≫キック!


 「はぁはぁ。まだまだ!」


 ポコポコポコ

 「パンチ!キック!パンチ!」


 きもちぃ~~~


 ふらっ

 「はぁはぁ…。まだ…ま…だ…。」

 「ん。どうした?のぼせてるじゃないか?!」


 蓮根レンコン農家の手伝いで、熱中症には詳しい。女戦士をつかんで急いで脱衣所に運ぶ。

 バスタオルに寝かしてやり、濡らしたティッシュで頭と足を冷やしてやる。

 「おい。意識はあるか?俺の指の水滴を飲め。」


 …コクン


 少しの間、軽く扇いでやると顔色が良くなりすうぅーっと消えていった。


 「何やってんだ俺…妄想相手にセクハラして看病して…。とりあえず、もうひとっぷろ入るか。」


 副題:風呂場でハッスル

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