第6話 黛、部活始めるってよ…

 春休みに出会った師匠こと東田紗季との出会いからさらに一週間が経ち、そろそろ四月も終わるという頃、俺は放課後の教室でとある作戦を練っていた。

その作戦というのは、「部活設立」だ。青春の三大神器とも呼ばれる(俺の中で)それは、多くの学生たちが一つの目標に向かって努力し涙なしには語ることが出来ないほどの代物だ。本当、部活アニメとかって必ず仲間同士の対立があって、そういう苦難を乗り越えて夢を叶えたりするんだよね。ま、現実にそんな本気で部活に取り組むやつはそんなにいないがな。

だが、今回俺が考えている作戦において、部活は作戦に必要不可欠というか作戦そのものであるのだ。何を隠そう今回の作戦は、「新たな部活を作り、そこを治療の拠点にする作戦」だ。…さっきから全く隠してなかったよね、ごめんね。

まぁ、隠す隠さないは置いておくとして、この間から作戦が失敗続きということで、なぜ始業式が始まってから失敗続きなのかを自分なりに考えてみたのだ。だって考えないと死んじゃうもん。

そして、俺が出した結論は「相手を定めずに、作戦を行っていた」だ。

例えば、始業式の日の衝突作戦や隣の席作戦、これらはどれも自分で行動はしているが運命というか、来るかもわからない相手を待っていたのだから成功率なんて無に等しい。現実は、ラブコメ主人公のようにご都合主義で世界が回っているわけではない。突然空から可愛い子が降ってきたり、何もしてないのに最初から自分を好きな救済ヒロインがいるとも限らない。

だからこそ、現実には現実的な作戦でラブコメを起こすしかない。その現実的な作戦が「部活」だ。部活ならば必然的に放課後は毎日部員と関わるし、イベントがあれば仲良くなってラブコメに発展するチャンスもある。ならば俺のラブコメ病を治すチャンスも増えるのではっていう算段だ。

しかし、これは学生なら誰しもが思っていることだが、二年生から部活に入るというのは実に気まずい。すでに部活での人間関係は完成しているし、実力もないので他のメンバーの足を引っ張ってしまう。それではラブコメをするどころか迷惑をかけるだけなのでそれは避けたい。ついでに言えば部活事態にそんなやる気もない。だからこそ、高校二年生で部活となると作るほか選択肢がない。

この学校には、数多くの部活動が存在する。例えば文房具収集部ぶんぼうぐコレクトぶや、地球外生物生態研究部など何をしているのかわからない部活が多い。二つ目のとか特に。

それは別にウチの学校が部活に熱心というわけではなく、校長先生が適当なので大体は申請すれば通ってしまう。ソーシャルゲーム(以下ソシャゲと略)で最低ランクを出すくらい簡単だ。しかも申請時には人数指定すらないと来た、これはもう勝ち確だろ。それでも申請しに行くので、こちらも準備していかなくてはならない。

では、俺の考えた最強の部活を発表しよう。

「俺の考えた最強の部活は、青春研究部だ!」

青春研究部。高校生の男女間の交流に関して様々な体験を実際にすることで、高校生にあった適切な関係を築き青春を謳歌する。

というのが、表向きの理由で…要するには、女子と疑似ラブコメ体験をして病気を治すのだ。何という完璧な作戦、これならこの理不尽な病気ともおさらばだ。

さて、校長室に出陣するとしますか。



「んー、ごめん。この部活動は申請通せないわ。」

俺は絶句した。バカな、ソシャゲで最低ランクを出す確率で成功するのに。むしろ失敗する確率のほうがソシャゲで最高ランクを単発一回目で引き当てるくらいの確立だぞ。せめて理由が知りたい。

「そ、その…なぜダメなんですか。そんなに俺のプレゼン駄目でしたでしょうか」

「い、いやぁープレゼンは良かったんだけどね。ただ…」

まさか、俺の本当の狙いに気が付かれたか。それだと、かなりまずい。再挑戦は不可能だ。それに俺の計画が台無しになる上に死ぬ確率が格段にアップしてしまう。心臓が破裂しそうになりながらも、俺は校長の言葉を待った。

「ただ…実はもうこの部活は存在するんだよ。しかも名前も活動内容も全く同じものが」

「へ…?」

俺はその場で放心状態となった。

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