episode5
『月見れば 千々にものこそ 悲しけれ
我が身ひとつの 秋にはあらねど』
現代語訳:月を見ると様々なことが悲しく感じられる。私だけの秋ではないけれども。
小さい時から文学を愛す彼女は
大人になった今、突然百人一首にハマり始めたようだ。
そんな彼女のお気に入りの一句らしいのだが
正直言うと、
僕にはまだその魅力が理解出来ていない。
そりゃ、歴史に残るくらい優れた文学ってことくらいは分かる。
そんなにいいもんかね。と言ってはみたものの、
百人一首全首を残り10日で覚えると意気込む彼女に届くはずもなく。
月を見ると悲しい、か。
やっぱり昔の人は感性が豊かだな。
ぼんやりと何もすることがない昼下がり、
ベランダのサボテンを見つめて考えてこんでいた。
気がつくと、彼女はノートに突っ伏して眠っている。
肌寒くなってきたこの頃。
風邪を引かせないようにそっと布団をかぶせる。
そうか、秋が来るんだな。そろそろ。
今日くらい、古の貴族のように、
想い人と月を思って呑むのも悪くない。
早速、缶ビールを開ける。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます