episode3

いつもあの娘は、一人ぼっち。

僕はいつも話しかけるけど、

何にも返してくれないし。

喋ってくれたと思ったら

うるさい。

って一言だけ。

あの娘が来るようになって、

多分5年くらい経った。

今日もあの娘が来た。

いつもみたいにブランコに座って、

いつもより心做しか

苦しそう。

何を考えてるのかな。

僕に出来ることは・・・。

そんなこと考えてたら

居なくなっちゃってて。

今日は話しかけるタイミング逃しちゃった。

その日を境にあの娘は

来なくなった。

普通の冬の日だって、

これまでの年よりずっとずっと

寒くって。

寒くって寒くって。

僕は体調を崩してしまった。

あの娘が来なくなって・・・

何日かな?

あぁ。あの日話しかけてればなんて、

自分を責めたけど。

もう、僕は・・・。


しっかりして!!!

背中の方から、声が聞こえる。

もう、僕には振り返る力もないんだ。

キラリと光る指が僕の頬を包んだ。

あぁ。あぁ。

僕は、僕は、彼女の幸せを願っていたのでは

無かった。

僕は、彼女と。

彼女と幸せになりたかったのだ。

彼女の指の光は、

僕の、僕の最後の希望を。

打ち砕いたのだ。


彼女の涙が僕の髭に、体に、耳に

そっと伝う。

その感覚に、いや、彼女に

一抹の愛情をおぼえながら。

おめでとう。

これが最後の僕の泣き声。

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