極道 6

個室に入ると少しだけ父が動いた

わずかに目を動かし部屋の中を見渡している

多少意識があるのかもわからない…


ただ 目は閉じる事なく部屋を見回していた

その時私は父の言葉を思い出しました


「この部屋に入った者は3日以内に必ず死ぬんだ…なぁ…怖えぇだろ」


父はこの部屋に入れられたのがわかっているのだろうか?

そう思いながら父を見ると…


父の右目から涙が耳に向かって一筋流れていた…


父…泣いてるの?

それとも自然に涙が出てるだけなの?


その途端…

私の目からも涙が溢れ出てきたのです…


父…


得意の演技なんでしょ?

私が泣いた途端


「ハッハッバカが騙されやがったな!俺が死ぬ訳ねぇだろう!何泣いてんだ!お前本当に情けねぇ野郎だな」

とか言って起き上がるんじゃ?


でも…


父は起きない…


私は左手で父の手を握り右手で手の甲を軽く叩きながら

何故か 童謡を歌っていた…


まるで 赤ちゃんをあやす様に…

やはり何故そんな事をしたのかわからない…


私は1時間近く

泣きじゃくりながら父の手を握り歌い続けました


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