極道 5

私はせきを切った様に父に声を掛け続ける…


「ねぇ!何か話して!」

「起きて!」

「わかる?ちびだよ」


「起きてったら!何か話してよ!」

「お父チャン…起きて」

「お父チャン!!」


私はこの時父を幼い頃呼んでいた

「お父チャン」

と 呼んでいた…

何故そう呼んだのか自分でもわからなかった…


時々…

「ン…」


「ン…」


と 呻き声なのか?

返事をしようとしているのか?

言葉にならない声が聞こえる…


すると…母が

「きっとお前に返事をしているんだよ…手を握ってあげなさい」

と 私に言ったのです


私は父の手をそっと握りました


しかし…握り返してこない…


父の手は骨と皮の様にやせ細っていた


何十年ぶりだろう…

父と手をつないだのは…

覚えていない…


私は更に声を掛け続ける

「起きないと顔に落書きしちゃうよ」

「ほら…書いちゃうよ」

「ねぇ…怒らないの?…」


が…

やはり父は何も言わない

たまに 「ン…」 と言うだけだった…


そこに医者がきた…


「御家族だけになった方がいいでしょう…」

「個室に移しましょう…」


父は例の「死の部屋」と呼ばれている所に移される事になった…


父のベッドが移動される…

他の患者さん達が父に声を掛けてくれた


「頑張れよ!」


「待ってるから戻って来いよ!」


「負けんなよ!」


泣いてくれてる人もいた…


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