闘い 10


次の日の朝

父は既に起きていた


次男が開けた壁の穴にカレンダーを掛け見えなくしていた


少し気分が良さそうだ…

(やったのか?)


朝食の準備が出来 少しだけ口にする父

すると…

「やってねぇぞ…」


えっ!?

自分から振って来た

「何を?」

母がとぼけて聞き返す


と 父は仏壇の下の扉を開け お経本と数珠を包んである風呂敷包みから例の袋を取り出した


父…

こんな所に…

バチ当たるぞ

あっもう当たってるか(笑)


中身を見せる父…


覚醒剤の小袋2個とペンケースの様な缶に入った注射器

(見せたって最初から何袋入ってたのかわからない…)

それを袋に戻しながら父が言う


「これは俺が持っているからな!打たねぇけど イザ という時の為にな!」


(ん?…イザ…ってどんな時だ?)


「しかし おめぇらもバカだな!こんな物事務所にゃ売る程あるってのによ ムキになって バカがガンクビ揃えやがって!バカだバカだと思ってはいたがこれ程バカだとは思わなかった」


またまた

馬鹿に「バカ」を連発されてる…


父 笑いながら私を見る

「なぁちび!バカ奴等だな!」


私に振って来た

(あのぉ…私もそのバカの一味なんですケド…)


まぁ…今となってはそんな事どうでもいいか…

結局 父は打たなかった…


らしい…


本人はそう言っている

が…

奴は大嘘つきだから全くアテにはならない


でも 今は信じるしかないな…

取りあえず 騒ぎまくった私達の行動は無駄ではなかった?


薬は父の手にあるが今さら奪う気はサラサラない

「イザ」という時が来ない事をタダ…タダ祈るばかりだ


闘いは終結した(笑)


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