波乱のど真ん中 2

季節は冬の事でした


仕事に行ったはずの叔父が 昼過ぎ頃 血相をかえて帰って来ました


玄関を入るや否や 鍵を掛け 布団を頭からすっぽりとかぶり

何かを言いながら部屋の隅にうずくまっていました


母が…

「どうしたの!?」

と…聞くと叔父は


「坊主頭の刑事が 俺を張っている!バスの中でも 電車の中でも道端でも……怖い顔して俺を睨んでいるんだよ!」


と 震えながら言うのです

母は急いで父に電話をして呼びました


父が帰って来て 叔父の様子を見たとたん…


「おい!家中の刃物を全部隠せ!」

と 母に命じました

叔父のただならぬ様子が

父は一目でわかったようです


父は 若い衆を呼び

叔父のそばについて見張っている様に言いました

時々聞こえて来る叔父の呻き声…そして


「窓の外から坊主頭の刑事が見てる!向こうへ行け!」

と 怒鳴り声がしてました


叔父はアル中の症状により幻覚を見始めたのです


夜になりようやく落ち着きを取り戻し眠ってしまったので

若い衆も帰し父達も床についた……頃


また……


「うぁぁぁぁぁ~!」

という叫び声がしたかと思ったら 物凄い勢いの足音がし……叔父が真夜中の外に飛び出して行きました


至る所に血の跡があります


父がすぐに追いかけたのですが見失ってしまい 兄と若い衆が辺りを捜し回りましたが

見つける事が出来ず


叔父は尋常な神経でないので他人様に迷惑をかけてはいけないと

父地元の警察に通報


地元の警察は父とはいろんな意味で顔馴染みなので 刑事さん達が5~6人 すぐに駆け付けてくれました


そして事情を聞いた後 叔父の寝ていた布団をめくると


シーツが血だらけ……

その中に2cm程の赤黒くて丸い……まるでコンニャク見たいな物が2個ありました


最初は吐血したのかと思ってましたが

それを見た刑事さんが


「舌を噛み切ったな」

と つぶやきました


そう……叔父は自分の舌を噛みちぎって


自殺を図ったのでした


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