第四話「願いは現実の拒絶なのか?」 3

 レンズに『コネクト OK?』という表示がされる。相手は紗希だ。

「……よくない」

 そう言いながら彩花は空中にあるOKの部分を指で押して、接続許可を出す。

『よっ』

 眼前にピンクの熊が出現する。

「なに?」

『なんで怒っているの?』

「いや、そんなことはないけど」

 イライラが紗希に伝わってしまったのかもしれない。

『……そう。そういえば、言い忘れていたけど、対戦は毎週しないといけないんだ』

「毎週?」

 声に出して答える。相手にはそれが文字に変換されて伝わっているはずだ。

『そうそう、そうしないとゲームの参加資格がなくなっちゃうんだよ。彩花が言っていたゲームをやめる方法の一つ、強制的にやめさせられるんだけど』

「そう、なんだ。じゃあ、紗希とやれば」

『それがそうもいかないんだよな。一度対戦した相手とは、かなり時間を置かないと対戦できない仕組みになっているんだ。連戦はできないようになっている。そうしないと誰かと組んで一方的に勝ちを手に入れられるから』

「そっか」

 別にそれでよくないか、という気が彩花はしたが、そういうルールがあるのがゲームというものだろう。

「どうすれば、いいの?」

『んーと、ランダムで誰かと連絡を取って、ああ、ゲーティアにはそういう機能があるから、それで時間と場所の都合をつけてやりあうっていう方法があるけど』

「そういうのは、ちょっと苦手」

 見知らぬ相手とやり取りしていきなり会うなんて信じられない。

『だろうね、そこでだ。都合のよい相手がいる。転送するぞ』

「うん?」

 紗希からファイルが送られてきた。簡易なセキュリティチェックをして、そのファイルを展開する。

「これ?」

『そう、僕のところに来ていた』

 添付ファイルの元の差出人が上部に表示されていた。

 ミチルからだった。

「ミチル」

『どこにいるかはわからないが、どこかにはいるらしい』

 時間差を設けてデータを送る方法はある。しかし、そこまでする必要性が感じられない。少なくとも、昨日か今日に出されたものだろう。

『ファイルの相手が対戦相手を探している。ちょっと特殊な相手でな。だけど初陣には適しているだろうね』

「知っているの?」

『まあ、やりあったことはないけど。良い意味でも悪い意味でも、僕は知っているよ』

「悪い意味?」

 紗希が意味深な言い回しをした。

『……まあ、強いってことだよ。他にもあるが、そこはお楽しみってことかな』

「そう」

『それじゃ、僕が話をつけておく』

「お、お願い」

『てなわけで、今夜、ここに来てくれな』

「え、もう?」

『うん、相手の意向で』

「そ、そう」

『ん? どうしたの?』

「うんと、あのね」

『うん?』

 彩花は今日見た夢のことも言おうと思うが、すべてを話すわけにはいかないのでなんとなく思いとどまる。

「なんでもない。わかった」

『そっか、じゃあ現地集合で』

 接続を切り、彩花は息をつく。

 実質的な初戦か、と思うとわずかに緊張した。

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