第13話 新たな決断

「そうだ、だからお前に協力してもらったんだ」

そしてグリアスはアルベルトに協力してもらった経緯となぜアルベルトなのかを話す。そして自分たちが作り出した剣を使わせた事。それによって気を失ってしまった事を話した。

その話を聞いたアルベルトは自分はなんで今まで気づかなかったのかと自分に失望してしまう。

「とまぁ、こんな感じだ。なんか質問あるか?」

グリアスが質問はあるかと二人に聞くとアルベルトが驚きと、チラチラと心の底から湧き出てくる憎しみによって震える手を挙げる。自分があの夢の少年だというのと、剣から流れ込んできた映像の、あの少年だという確信を得るために。

「俺と一緒に……青いペンダントのようなものは、落ちてきませんでしたか?」

アルベルトは夢の中ではっきり覚えている最後の光景の青い石がついたペンダントの事をグリアスとレーダスに聞く。

「ああ、それならその剣についてるだろ」

アルベルトはグリアスの意外な返答に少し戸惑いながらも自分の手元にある剣を手に取る、そして剣の柄で一際目立つ青い石を見る。アルベルトは自分の顔が暗くなっていくのを自分でも感じていた。その宝石はあの夢に出てきたペンダントについていた青い石だったのだ。その事実にアルベルトは憎しみを沸々と膨らませる。その異常な光景にレーダスが心配そうな顔をして、アルベルトを気にかける。

「どうしたんだ、アル君?」

突然声をかけられてアルベルトは我に帰る。

「いや、なんでもありません」

「そうか……ならいいんだが」

「……それよりも、もうすぐハルマを起こした方がいいのではないのですか?」

「ああ、そうだな……おい、ハルマ起きろ」

レーダスがハルマの元に行き地面で横になっているハルマを揺さぶる。するとハルマが目を開けて、背伸びをする。そして自分はなぜ寝てたのかをレーダスに質問をする。するとレーダスは拳を振り上げるポーズをとっている。アルベルトはその光景を見ながら一つ忘れていた目的を達成するためと一つの決断をする。

「レーダス団長、少しいいですか?」

アルベルトはハルマを殴ろうとしているレーダスを呼ぶ。

「なんだ? アル君」

レーダスはアルベルトの前で腕を組んで聞く。

「俺はレーダス団長に助けてもらって、寝るところも用意してくださったレーダス団長に本当に感謝しています」

アルベルトが頭を下げるとレーダスは赤く染まる顔を背ける。

「そんなに真正面から言われると、照れるんだが……」

アルベルトは、照れて体をうねらせているレーダスを見る。これを見たら多分他の男は……言うまでもない。なんせいつも凛としている団長が、今照れているのだ。実のところ言うと俺も惚れそうだ。しかしそんなことを考えている場合ではない。

「その、わがままを言っているかもしれません、それでも……俺は、俺のすべきことをやらないといけないんです」

するとレーダスがふぅー、と深呼吸をして体をぴんと伸ばす。

「そうか、なら行けばいい、君は自分のすべきことを思い出したなら私には止める理由がない」

レーダスは当たり前のことだ、と言うような表情をアルベルトに向ける。その表情を見たアルベルトは礼を言いながら頭を下げる。

「だーが、君のすべきことが終わったら、ちゃんと帰ってくるんだぞ? 私たちはいつでもお前を歓迎する」

レーダスがそう言うとその光景を見ていたグリアスが口を開く。

「その話なんだが……俺たちも連れて言ってくれねぇか? 祠も無くなっちまったし」

「……もちろんいいですが……ここを離れられるのですか?」

アルベルトが突然の申し出に答えるが、自分の中での疑問をグリアスに質問する。グリアスはあっ、そうだった、というような顔をする。しかしグリアスに変わってその質問に対し答えたのはアステラだった。

「はい! それならその剣を新しい祠がわりにすれば、私たちはアル君と一緒に行けますよ? 

アステラが言うには、この剣を祠として俺が持ち歩けば、二人とも一緒についていける、と言うのだ。しかしなぜわざわざ祠がわりに? とアルベルトは疑問に思う。

「私たちは、長い間封印されていたので、核がなくなってしまいました。なので祠というのは私たちにとって核、言い方を変えると体、のような存在になるのです。」

アルベルトはその説明に、なるほどというような表情をする。だが人間としての最大の質問をする。

「その大事な祠を、振るっていいのですか?」

アルベルトは人間としての基本的なことを質問する。普通に考えて、神が宿っている神聖なものを、血で汚したりしたら……とアルベルトが考える。

「あぁ、それなら心配するこたぁねぇ、俺たちは祠の半径50メトラだったら自由に動けるだろう、まぁそれ以上離れると強制的にその剣の中に戻されると思うけどな」

つまりグリアスが言うに俺が戦う時は剣から抜け出して、俺の戦いを観戦している、と言うことだ。それならなんの躊躇もなく敵を斬れるだろう。だが、もしもその剣が壊れたら……まあその時はなんとかしてもらおう。

「そういうことなら、俺も一人と言うのは少し心寂しいので、お願いしてもいいですか?」

アルベルトが逆にお願いするとアステラは任せろ、と言わんばかりに手を腰に当てる、グリアスは、顔をそっぽに向けて、まあ、しょうがねぇな、と言わんばかりの顔を見せる。もともと一緒に行きたいと言ったのはあんただろ。と言いたいところだが、アルベルトはそこを受け流す。

「なら俺も行こっかなー……ねっ?」

ハルマがアルベルトに両手を合わせてお願いをする。あぁー最悪だ、こいつがいると色々と面倒なことが、はぁー。とアルベルトはめんどくさそうにため息をつく。

「人数は多いほうがいいな」

アルベルトはそのお願いを了承する。するとハルマがよっしゃあ、と言わんばかりに腕を突き上げて喜んでいる。しかし。

「っ!?」

後ろの方でギシギシと木を軋ませるような音がする。アルベルトが後ろを向く。だが音を出したのは一瞬で移動して抜いたレイピアを腰に掛けているレーダスだった、すると彼女は満面の笑みで微笑む。その光景を見たアルベルトは少し恐怖を感じて、なぜ彼女が瞬間移動して剣を使ったのかを考えようとするのを無理やり放棄した。

「レ、レーダス団長、そろそろ帰りましょう」

「あぁ、そうだな、帰ろう」

こうしてアルベルトたちは帰るのであった。未知なる世界への不安と心配、そして好奇心、心の底から湧き出てくる憎悪を抱いて。

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