第11話 目覚めと覚醒

 身体中に切断されていた感覚が戻っていく、そしてゆっくりと目を開ける。

「アル……敵を目の前にして気絶してしまうとは……情けない……チラッ」

ハルマは冗談混じりに(突っ込んで欲しそうな顔をして)そう言う

「ごめ……すまなかった……」

自分が体験していた少年の口調が体から抜け切らず、思わず言ってしまった言葉を強引に直す。

「いやっ、そのぉー……突っ込んで欲しかったんですけど……」

「ならば私が突っ込んでやろう!」

そう言うとレーダスは手をぎっちりと握りしめてハルマの顔を殴ろうとする。

「すいません許してくださいもうしませんごめんなさい」

ハルマは不敵な笑みを浮かべたレーダスに頭を何度も下げ必死に謝る。そんな光景を見ながらアルベルトは立ち上がる。そして再び剣を持つ。

「どうかしたのか……? アル君?」

レーダスの問いには答えず剣を握りしめながら祠に近づく。そして剣にありったけの力を込めて祠に突き刺す。

「アル君! 何をして……!?」

祠に剣を突き刺した瞬間、光が発せられ目の前が光で溢れる。三人は思わず目をつぶってしまう。

「くっ!?」

光がおさまると、三人は目を開ける。

「!?……なんだったんだいまのは……祠が……ない!?」

そこにあったはずの祠が消えてレーダスを含めた三人は驚きをかくせずにいる。

「アル……まさかお前は…………手品師!!?」

「「……」」

ハルマが放った言葉で三人の間には沈黙が流れる。

「うなぁ訳あるか!! 少しは頭を使え!!!」

そんな沈黙を切り裂いたのは、清々しい怒声をのせたツッコミを繰り出した……

「「「誰?」」」

三人は声を揃えて言う

「くっ!!?」

目の前の人……?をよく見ると、真紅の目、真っ黒い髪の毛、黒い服にくさりを巻いたような格好に身を包んだ男。年齢は……17〜19までの、整った顔立ちの男が苦痛の顔(ハルマが滑った時によく見せる顔)をして立っている。

「フフフ、破滅の神でも面白い顔を見せるんですね」

またしても出てきた人……?は地面にまでかかる純白の髪の毛、蒼い目、ふわふわとした白い服に結構健康的な胸の女……年齢は破滅の神と呼ばれていた男とそんな変わらないだろう。

「「「だから誰?」」」

またしても三人は口を揃えて言う。

「あっ……申し訳ございませんうちのグリアスが……」

グリアスと呼ばれる男は思いっきり後ろを振り向いてツッコミを入れる。

「う、うるせー! 俺だけじゃなくてお前」

「申し遅れました、私は創生の神アステラ……気軽にアッスーと呼んでください!」

グリアスが突っ込むのを無視して、アステラと名乗る女は自信ありげな変なあだ名を押し付けてくる。

そんなぶっ飛んだ光景に三人は。

(ネーミングセンス悪いのか!? この人は?)

(天然属性の美少女なのか!? この美少女は?)

(いや突っ込むところそこじゃないだろ!?)

三人の息のあった心のボケツッコミとツッコミは誰も知らないところで交差する。

「ところでそこの人……は……?」

アルベルトはグリアスと呼ばれている男に念のため自己紹介を促す。

「あぁー? 俺かぁ? 俺は俺だ」

その男の超適当な自己紹介に四人は沈黙する。グリアスと呼ばれる男はまたもめんどくさそうに頭を描きながら自己紹介を始める。

「チッ……俺は破滅の神グリアスだ……好きなように呼んでくれ」

アルベルト、レーダス、ハルマの三人は重大なことを思い出す。それはここにきた目的、祠の調査、つまり祠に刻まれていた神の名のことを。

「まさか……?」

「本当に実在したとは……」

アルベルトとレーダスはそう言う。

しかしハルマはアステラの前に行き大きく息吸って。

「アステラたん!! 結婚してください!!!」

はっ?何言ってんのこいつ…的な顔を見せるアルベルト。レーダスとグリアスは拳をポキポキと鳴らしながらゆっくりとハルマに向かって歩き出す。

「さぁ!! ハルマ! 死のうか?」

「……」

レーダスは怒りに引きつった顔を、グリアスは威圧で押し殺そうとする顔をハルマにむけている。そして二人は攻撃性の高い声で。

「炎よ、我が身に力を!!」

「我は破滅の神! 今こそ力を解放せん!!」

二人が詠唱をしているのに気づいたハルマは、やっと自分のしでかした重大なことに気づく。

「すいませんでしたぁぁぁあぁ!!!」

ハルマは地面に頭突きしながら謝る。

「大丈夫だハルマ、威力は一番低くする!!」

レーダスはより一層右手に魔導文(スペルアクター)を刻ませ渦巻く炎を強くし清々しい顔で応える。グリアスは右手の手のひらで、黒い炎を凝縮させている。

「爆ぜろ!! 爆炎の獅子(ファイアエントラスト)!!」

「黒渦(ダークエンシェール)」

二人がまとっている赤い炎と黒い炎はハルマに向かって放たれる。

「お母さん、お父さん、僕は結局どうあがぁぁぁあぁぁぁぁぁあああ!」

ハルマの命は戦場に散ったのであった。

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