第10話 記憶の中の感情
俺は深い谷底に向かって落ちている。死を意味するその状態には絶望や恐怖なんかよりも、深い憎悪と怒りを浮かべている……
(絶対に……!)
だがその感情は突如として途切れるのであった。
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少年は目覚める
「うぅっ!!?」
少年は苦痛に顔を歪める。
そしてゆっくりと体を起こす
「ここ……は……?」
周りを見渡すと、しんとした薄暗い場所、わずかに届く光は石でできた祠らしき物をうすく照らし出している。
(とっ、とりあえずっ、あそこに……)
少年は立とうとする。
「くっ!」
体は痛みで言うことを聞かない。だが少年は、這いつくばってその祠に近づいていく、そしてたどり着く。
「はぁー、はぁー」
少年は祠に着くと息を整える。そして今こうして生きている自分と身の回りのことを考える。
「なんでこんな所に……? 僕はなんで生きて……」
ここは恐らくあの怪物に吹き飛ばされて落ちた谷の一番下、いわば谷底、暗く冷え切ったこの場所に違和感は感じないが、自分が生きていることに疑問を浮かべる。
「僕は生きているのか……」
そう呟くと祠に手を触れ立ち上がろうとする、だが祠に手を触れた瞬間。
「!?」
祠に手を触れた瞬間、身体中に微弱な力が、流れ込んでくるような感覚を覚える。少年は驚いて手を離す。
「なっ? なんだろう……今の」
少年は疑問に思う、すると突然。
(人の子よ……)
か細い女の人の声がどこからか聞こえてくる。
「僕は……ここに、居る……助けてくれ」
少年は絞り出すように声を出し、助けを求めるが。
(人の子……いや少年よ……私はあなたの心に話しています……」
少年は今の現状を理解できないでいた。
(私……いや私たちはここから動けません……)
その声の主はどうやら、自分の体を通して語りかけていることにようやく気づく。
(率直に言って……封印を解いてほしいのです……)
突然のスケールの大きい話に少年は唖然とする。
「でっ、でも……僕は……」
訳がわからずおどおどしていると、後ろで何か重たいものが地面に突き刺さる音を耳で拾う。
(ならば……それを使え……)
今度は男の声が響く。
(それを持って祠を貫くだけでいい……)
少年はその言葉を聞き先程の音を奏でた物体……剣に手を触れる。
「!?」
剣に触れた瞬間……目の前が暗くなっていく感覚に襲われる。
(まだ……君には早かったか……せめて君が……その時になるまで守ってやろう……)
その言葉を聞いたのを最後に少年の意識は途切れるのであった
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