Robotech Touchdown ─ロボテック タッチダウン―
芳川見浪
プロローグ
第1話 Start Game
『リップスタック走る! ラインとは思えないほど速い!』
実況を背に、特殊繊維強化ゴムに覆われたフィールドを鋼鉄の巨人が駆け抜ける。
長さが1m近くもある楕円形のボールを右の二の腕と肘を使って固定し、胸のあたりでキープしつつ左手でカバーしながら走る。
リップスタックと呼ばれる赤い
巨人の進路を阻むため、黒いカラーリングの
速度を落として回避も難しいと判断した赤いラガーマシンは、振り返って後ろへボールを投げる。
ボールはすぐ後ろを走っていた同じチームのラガーマシンへと渡された。
そのラガーマシンもボールをキャッチして直ぐに後ろへ投げて、
そのラガーマシンは他のラガーマシンに比べて腕が長く、人型とは言いにくかった。
『ボールは一度下がってクォーターバックのレオールに渡ったああ! ロングパス狙いか!?』
実況の予想は正しく、レオールは機体を弓なりにしならせながら投擲フォームに入る。そのまま長い腕を使って遠心力を加えながら相手のクォーターライン目掛けてボールを投げる。
放物線を描きながらそれは真っ直ぐ狙い通りの場所に落ちる。落下地点には誰もいない。
地面に落ちてスクラムかと思われたが、自陣
そのままラガーマシンは相手陣地を高速で走り抜ける。
ラガーマシンは、風が通り抜けていくようにディフェンスの網をくぐりながら着実にエンドゾーンとの距離を縮めていく。
『速い! 速いぞぉ! ランニングバック最速と呼ばれる機体の名は伊達じゃない!』
そしてランニングバックポジションのラガーマシンの前に、最大の敵が立ちはだかる。そのラガーマシンはディフェンスよりも一回り大きく5m半程。
フルバックという、最後の砦を成すポジション。サッカーに例えるならゴールキーパーである。
ランニングバックは一度左へフェイントをかけて独楽のように回転しながら右から抜き去る。その一連の動作に無駄は無く、風に雲が流されるように通り抜けていく。
しかしフルバックはそれを見破っていたのか左腕を後ろへ伸ばし、飛ばした。文字通り腕を切り離して。
ジェット噴射で初速から高速越えしたその拳は真っ直ぐランニングバックの背中へ飛んでいき、背中の突起物を掴んで有線で繋がったフルバックの元へ引き戻そうとしていた。
ランニングバックはその場に膝をついて何とか堪えるが、動きを止めてる間にワラワラと相手のディフェンス陣が集まってくる。現在ランニングバックに出来るのはボールを落とさない事だけだ。
しかし諦めたわけではない、こういう時頼りになるのがチームメイトというもので、実際ディフェンス陣をくぐり抜けて一際細いラガーマシンがこちらへと向かってきていた。
最低限の装甲のみを残したその機体は腕の先をブレードに変化させてフルバックとランニングバックを繋いでいる鋼線を切断した。
自由を取り戻してすぐに体勢を立て直したランニングバックが再び走り出す。
フルバックはもう片方の手を伸ばそうとするも細いラガーマシンに蹴り飛ばされて腕が大きく右へと逸れる。追い討ちをかけるように細いラガーマシンはその場で跳んで、フルバックの突き出た胸部を支点にして頭部へと膝蹴りを行う。
その隙にランニングバックはエンドゾーンへと到達してタッチダウンを決めた。
『タッチダアアアアアウン!! やはりポイントをとったのはこの機体!! 最速のランニングバック! ハミルトォォォン!』
タッチダウンを決めたことで、6ポイントを勝ち取ったその機体へ惜しみない歓声が降り注いでスタジアムごと揺るがせる。
この鋼鉄の巨人達が繰り広げている戦いは、今やスタジアムに留まらず、世界各地で中継を見ているラフトボールファン全員を熱狂させていた。
これから始まるのは、ラフトボールと呼ばれるスポーツに魅せられたラフトボウラー達の物語である。
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用語解説
ラフトボール……4m〜6mの巨大ロボに乗って行われるスポーツ。13人対13人の2チームに別れて、お互いのエンドゾーンへボールを運ぶか、エンドゾーンの上空に立てられているゴールへボールを蹴り飛ばしていれるかするとポイントが入る。
アメリカンフットボールとラグビーのルールが合わさったようなもの。
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