第3話 物語の結末を
忘れられない物語がある
どこまでも真っ直ぐな少年の愛と正義の冒険譚
焦がれに焦がれて読んだ物語の結末を
僕は未だに知らないけれど
僕はもうその先を分かっている
ランドセルの中 空色背表紙の本
始終持ち歩いた世界は僕の宝物
その物語のつづきを知りたくてボクは夢を描いた
その本の最終巻を読み終えて微笑んでいる大人の僕
小さな掌に一番大きな小銭を握りしめて
大人になったような気がしながら
商店街の片隅にあるちっぽけな本屋へ駆け込んだ
幼いボクにとってその王道世界は広大で未知
つづきが出る度にボクの胸は躍り弾み
その先を待ち望んだ
いつからだろうか
本棚の中で折り目もつかない本が横たわって
僕がそのつづきに目を通さなくなったのは
その物語の最新刊を手にした時の高揚感は
昔も今も変わらず心にあって
その世界に浸りたい思いも根強くあるのに
僕は巻数を積み重ね その先を見失う
また後で そんな頼りない約束を心に課して
僕はまた僕を裏切る
明日 明後日 次の休日こそは
次期繰越から約束放棄へ
僕はボクの意思さえ見失ってしまうようだ
ランドセルを背負ったボクが今の僕に後ろ指を差して
その真っ青な背表紙が空色に見えるのか?
そんな問いを投げつける
今の僕には灰色お空がお似合いで
その背表紙にも先の読めるストーリーにも
夢は抱けないけれど
それでも伸ばす手は確かにあって
僕の中に色濃く残るボクがいる
だからもう一度
僕とボクで最後の約束をしよう
この物語の結末を
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