第2話 歩きスマホは危険デス

歩きスマホは危険デス

耳にタコが出来る程

聞かされた事項は

右から左に流れる日常で

僕は今日もスマホ片手に伏し目で歩く


前を見て歩くこと

そんな単純なことも忘れ

下を向いた瞳は

涙を流すことに適しているようで


泣くことが増えた僕の日々は

焦がれていたカッコ良さとは程遠く

嗚咽を堪える術だけを磨いてしまって

僕は布団に潜りながら

スマホの明かりを覗き込んだ


星空は無い 月明かりも無い

けれども人工灯が僕を照らす

明日の僕を彩る世界が絶え間なく広がって



下を向いていても

歩を進めることは出来て

下を向いていても

人並みに生きることは出来たのに

いつの間にか現れた違和感が

僕の身体を石に変える


脳は矢継ぎ早に計算を繰り返し

情報の算段を立てているのに

僕の身体は取り残されて



口角を上げた 

けれども瞳からは涙が落ちた


背筋を伸ばした

けれども顔は下を向いたまま

僕の心は人並みに曇っていく


前を見て生きることを忘れてしまった僕は

上を向いて歩くことそれさえも忘れてしまった様で

涙を堪える術も 目を細めて笑う術も見失って

解決策を求めて僕は目を伏せる

何よりも馴染んだ行為に安らぎを抱きかける


けれども誰かが僕の耳を掴んで

僕は安らぎから日常へと帰結した

耳に馴染んだ声が告げた一言

歩きスマホは危険デス

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