2.given (香坂陽子)

 坂田くんが塾の夏期講習に来た。

 そんなの、聞いてない。


 講習初日、僕はいつものように中林くんのとなりに座った。教室に受講生はまだまばらだった。中林くんはルーズリーフにハサミを入れてなにか作っていた。

「これ、なーんだ」

 ノートの上に切りぬいた紙を置かれる。四本の足で動物だってことは分かった。歪んだ頭にツノとも耳とも言えないでっぱりがふたつ付いている。そして背中にもでっぱり。これは……?

「……牛?」

「えー、なんで分かんないの。ハムスターだよ」

 うそだろ。

「中林くん、ハムスター見たことないの?」

「あるわ。なんなら飼ってたわ。ジャンガリアン」

 教室の後方のドアから数人の男子がどやどや入ってくる。その集団のかげに坂田くんが紛れていたなんて、まさか夢にも思わなかった。

「あれ、香坂くんじゃん」

 シュールなラッコの絵がプリントされた白いティーシャツ姿で、坂田くんは僕の真後ろの席に鞄を置いた。

「なに、ここ、知りあい?」

 中林くんが僕と坂田くんを交互に見やる。

「うん。図書館トモダチ」

「なんじゃそりゃ」

「よかった、知りあいがふたりもいて」

 塾とか初めてだからさぁ、と笑いながら、坂田くんは机に勉強道具を並べる。僕はかろうじて「夏期講習、申し込んだんだ?」と会話を繋いだ。よく考えれば当たり前の質問に、坂田くんは「そうそう、ちょっとお試しで」と軽やかに答えてくれた。

 急にうるさく鳴りはじめた心臓にそっと手を当てる。今日、ナベシャツを着てきて本当によかった。お年玉を切り崩して買った胸を潰すための下着。高かったし、着るとけっこう苦しいけど、胸はだいぶ平らになるから夏でも薄着になれる。それだけで気が楽だった。

「ていうか、中林はなにしてんの」

「切り絵」

「あやとりはもう卒業したの?」

「うん。ひととおり思い出したから。坂田、これ、なーんだ」

 中林くんが例の切り絵を差しだす。坂田くんは神妙に目をすがめ、

「……クマ?」

「うそー、なんでふたりとも分かんないのよ。どう見てもハムちゃんでしょ」

「いや、どう見てもなんらかのキメラ」

「坂田もやる?」

「いいよ、リクエストちょうだい」

「オッケー。じゃあ、オオサンショウウオ」

「ははーん、まかせなさいって」

 中林くんからハサミを受けとり、坂田くんはふたつ折りのルーズリーフに迷いなく切りこみを入れはじめる。その隙に僕はペンケースから付箋を取りだし、サッと走り書きして中林くんのノートに貼った。

『女ってこと、だまってて!』

 メモをちらりと盗み見た中林くんが、ふうん、と人の悪い笑みを浮かべた。なにも言わず、僕のメモの下に返事を書きつける。

『OK あとでなんかおごって』

 仕方ない。僕はうなずき、念を押すように中林くんの目を見た。中林くんのニタリとした笑みがいっそう深くなる。くそ、イヤなやつに借りを作っちゃったな。

「できた」

 後ろから坂田くんの声がした。ふりむくと、かなりそれっぽいオオサンショウウオが二匹、鏡合わせで机のうえに乗っていた。

「え、上手い。かわいい」

 おもわず声をあげる。坂田くんはふふ、と笑って、

「あげる」

「え、あ、ありがとう」

 差しだされた切り絵をとまどいながらも受けとる。中林くんは僕らのやりとりをにやにやしながら見ていた。

 いつのまにか教室は受講生で埋まり、先生が大量のプリントを抱えて入ってきた。正面に向きなおって、僕はオオサンショウウオをペンケースにそっとしまった。


 一週間にわたる夏期講習で、僕は思いのほかふたりと仲よくなった。授業のあとは自習室で勉強して、夕方になったら三人で一緒に帰った。ふたりのことをなんとなく口数の少ない人だと思っていたら、意外とよくしゃべるし、たまにコントのようなやりとりまでするから、僕も自然とたくさん笑った。

 中林くんは約束を守りとおしてくれた。最初はあの悪い魔女みたいな反応にヒヤヒヤしたけど、僕の嘘にポーカーフェイスで合わせつづけてくれた。

 最後日、坂田くんと別れたあと、僕は中林くんを寄り道に誘った。

「約束のお礼。なんかおごる」

「どうも。じゃ、アイスがいいな」

 通り沿いのこじんまりした商店で、中林くんはショーケースから雪見だいふくを選んだ。

「夏なのに?」

「雪見だいふくはいつ食べたっておいしいんだよ」

 会計をすませてアイスを手渡すと、中林くんはすぐにパッケージを開け、ふたつあるアイスのひとつにピックを刺して、「半分こ」と僕に差しだした。

「え、いいよ。おごりだし」

「いいから、いいから。溶けちゃうから」

 アイスを片手に、僕たちは数メートル先のちいさな公園に入った。日差しを避けて砂まみれのゾウとパンダにそれぞれ腰かける。少し離れた砂場では、まだ歩きはじめたばかりという感じの女の子がおばあちゃんと砂のお城を作っていた。

「香坂くんって、志望校、姫女から瀧高に変えたの?」

 大福の牛皮をびょーんと伸ばしながら、中林くんがそう尋ねてきた。

「え、ううん。姫女だよ。瀧高はその、なりゆきで坂田くんに嘘ついちゃったから」

 なんだ、と中林くんが肩をすくめる。

「てっきり入学までに手術して男になるとか、そういうことなのかと思った」

「……そんな簡単にはいかないよ」

「そうなんだ。そうだよね」

 こんもり盛った砂のお山を女の子がぐしゃりと潰し、潰してしまったことにショックを受けて泣きだした。あらあら、大丈夫よ、とおばあちゃんがなぐさめる。その一部始終を中林くんはにこりともせずに見つめている。眼鏡の奥の目はいつもどおり眠そうだ。

「正直、自分でもよく分からないんだ」

 バニラアイスがつるりと喉をすべり落ちる。その冷たさにまかせて、いままでだれにも言えなかったことを口にした。ことばは案外、臆さずに出てきた。だって、中林くんは他人にあんまり興味がない。

「自分がその、トランスジェンダー? なのかどうか、ずっと確信を持てずにいる。女の子の枠に収まるのはね、どうしても無理。それはどうしても、どうしても無理。けど、じゃあ男なのかって言われると、それも微妙で。なんていうか、自分が男と女の境界線の上にいるような感じなんだ。世のなかに、中性って性別があればいいのに、って思う。……変だよね」

 苦笑いしてアイスをかじる。中林くんは、はあともほうともつかない相槌を打つ。

「それって要するに、紫を赤か青のどっちかに分けろ、みたいな話?」

「えっ」

 意外としっかり話を聞いてくれてたことに驚いてしまった。

「あ、うん、そう。……そうそう。赤っぽい紫も青っぽい紫もあるけど、でも、やっぱり紫は紫だし、みたいな」

「ふうん」

 これっぽっちも興味のなさそうな顔で、中林くんは溶けはじめたアイスをまるごと口に放りこみ、手についた牛皮の粉をはたき落とした。

「体がどっちつかずの人はいるよね。うちの病院でもたまに産まれるよ。卵巣と精巣どっちも持ってるとか、性器の形がなんかちがうとか」

「ああ、うん。性分化疾患だよね。本で読んだことある」

 こころに合わせて体も中性になれたらいいのに、と思うこともあった。けど、そういう体を持って生まれる人が実際にいて、そのなかには手術やホルモン治療が必要になったり、周りの目に悩まされたりする人もいると知ったとき、軽い気持ちで望むことじゃないんだと後ろめたくなった。

「恋愛は?」

 中林くんが尋ねる。

「男が好きとか、女が好きとか、どっちでもいいとか」

「それは……まだ分かんない。男の子に惹かれることはあるけど、たぶん憧れっていうか、自分もこうなりたいっていう願望に近い気がする。つきあいたいとは全然思わない。ていうか、男から好きって言われるのは嫌だな。それって僕を女として見てるってことだから」

「ふうん」

「そもそも自分のこころが中性だと思うと、男と女のどっちが異性で同性かもよく分かんなくなるし。体だけなら確実に同性は女だけど。女湯や女子トイレがすごく苦痛ってわけでもないんだ。そこはもう割りきってるっていうか、はいはい、体は女子です、みたいな。性別の記入欄も、ほんとは男・女のあいだの点に丸つけたい気持ちだけど、そこは飲みこんで、はいはい女に丸です、って。けど、そうやってなんだかんだ割りきれちゃう時点で、やっぱり完全なトランスジェンダーとは言えないのかなぁ、なんて」

 溶けたクリームが垂れそうになって、あわてて最後のひとかけを口に押しこむ。中林くんは組んだ足に頬杖をついて、公園のフェンスの向こうを眺めていた。背が高いから、パンダの腰かけが異様に小さく見える。

「ていうかさぁ」

「うん」

「香坂くんのいう、その、中性って感覚? それが異常か正常かなんて、だれも証明できないんじゃないの」

「証明?」

 ちらりと横顔をうかがう。長めの前髪から覗く垂れ目が、そのとき初めて、ほんの少し見開かれたような気がした。

「うちの理科の先生が言ってたんだけど、AをAだと証明したいとき、ドンピシャでAって導けることはめったになくて、BからZまでの可能性を全部否定して初めてどうもAらしいってなるんだって。それも完全にAだとは言いきれなくて、もしかしたらZの次にまだだれも発見してない未知のアルファベットがあるかもしれない、って」

「はあ」

「要するに、ひとつのことを科学的に証明するのってめちゃくちゃ難しいわけ。だから、こころに中性っていう性別が存在するかって疑問もさ、そこらの人が変とか変じゃないとか、正しい正しくないって決められる話では、そもそもなくない?」

 そもそも。

「よしんばね」

 よ、よしんば?

「よしんば染色体がどうたら、脳のこの辺がこうたら、って証明ができたとして、なるほどねぇ、で終わる話じゃない? じゃあ治療して女っぽい思考回路にしましょうとか、産むのやめましょうとか、そういう話にはならなくない? だって、香坂くん、こうやって話しててもべつになんもおかしくないじゃん」

 頭をがつんと殴られたような気がした。中林くんは僕の顔を見ない。ただまっすぐ正面を向いて、キーボードを打つようにことばを連ねる。

「うちは産婦人科だからさ、そりゃいろんな赤ちゃんが生まれるのね。俺は直接見たことないけど、顔に大きなアザのある子とか腕の短い子とか、ほんとに色々。家族は複雑だろうし、本人も成長するにつれて悩むと思う。でも、うちの親は医療者としてもっときついのたくさん見てきたから、そんなの全然当たり前だって言うわけ。軽く見てるってことじゃないよ。肯定してるの、生まれてきたことを」

 砂場にいた女の子とおばあちゃんは、いつのまにかすべり台に移動していた。さっきまで火がついたように泣いていた女の子は、いまはすっかり上機嫌ではしごをペタペタ叩いてる。おぼつかない足取りではしゃぐ女の子を、中林くんはルーペを覗きこむような目で見つめている。

「まるでちぐはぐな形で生まれて、すぐに死んじゃう子もいる。順調に育ってたはずなのに、おなかのなかで突然心臓が止まっちゃう子もいる。不妊治療に何度も挑戦して、それでもおたまじゃくしみたいな段階で流れちゃう命もある。いま生きてる人たちはみんな、生きられる最低ラインをたまたまクリアしただけで、それだけが共通点で、あとはみんないろんなとこがちょっとずつちがうんじゃないの。全員おなじようになるわけないよ。見える部分も見えない部分も。それが当たり前でしょ、生き物なんだから」

 当たり前でしょ。

 そのことばがこんなにも空へ響くように聞こえたのは初めてだった。まるで前人未踏の惑星を目指すロケットのように、高く高く飛び立っていく。

 じゃあ、と口にした声がうわずった。

「僕が自分を中性だって思うこと自体は、べつにいいのかな。わがままとか、女らしさから逃げてるだけとか、男と女のいいとこ取りとか、そういうんじゃなくて、ほんとのほんとにそう思ってるって、言ってもいいのかな」

「いや、知らない。俺は香坂くんじゃないし」

 急にしぼんだ風船みたいにならないでほしい。

「香坂くんのこころは、香坂くんにしか分からないよ。それにかこつけて男子トイレ入ってきたりしなければ、俺はべつになんでもいいわ」

 それに、と言って中林くんが足を組みなおす。

「この手の話は、俺より香坂くんの方がよっぽど先輩じゃん。香坂くんは自分の性別がなんなのか、ずっと考えつづけてるんでしょ。本を読んだりネットで調べたりして。でも、世のなかにはたった一度も、一秒だって、自分の性別を疑わずに生きてる人もいる。そういうやつが香坂くんに性別とはーとか生物学的にどうだーとか説教垂れても、説得力なくない? 芸歴十年は超えてる天才子役の牧野あすみに、ポッと出の役者が芝居のいろはを説くようなもんよ。そういうのに歳とか人生経験とか関係ない。その問題に深く長く向きあってきたやつの方が、圧倒的に“分かってる”よ」

 みいちゃん、そろそろ帰りましょうね。

 おばあちゃんに手を引かれ、女の子が公園をあとにする。まえを通りすぎるとき、おはじきみたいな目が僕らをふりかえり、無言で手をふってきた。中林くんはニッコリにはほど遠い笑顔で「ばいばーい」と手をふりかえした。

「香坂くんはセーラームーン読んだことある?」

 また鋭角から攻めてきたぞ。

「漫画は読んだことない。アニメはちいさいころ観てた気がするけど、うろ覚えだな」

「俺は姉ちゃんと一緒に全巻読んで、アニメも全部観た」

「すごいね」

「で、小学生のころ、男でそれはキモいってけっこう引かれたんだけど、やっぱり作品は好きだしさ。それで、自分の好きなものをあんまり友達に言わないようになった」

 中林くんと話しやすい理由が、もうひとつ見えてきた。この人もふたつの箱に分別するのが苦手だったんだ。パイロット、お花屋さん、電車に恐竜、ピンクとブルー。セーラームーンがなぜ女の子の箱に入るのか、入っていたとしてなぜ自分が手に取っちゃいけないのか、中林くんには分からなかったんだ。

「でも、中学入ったら変なやつなんかいっぱいいてさ。からかってくるやつもいるけど、全然からかわないやつもいて、そういうやつとだけつきあってればいいや、って思ったら楽になった。坂田だってそうじゃん。優等生みたいな顔してるけど、あいつもそこそこ変だよ。こないだなんて他人の家の塀をずっと眺めててさ、なにしてんのかと思ったらトカゲ見てんの。尻尾が虹色できれいとか言って。おまえそれ人んち覗いてるみたいだからやめな、って言っちゃったよ、俺」

「昨日は帰り道に花の蜜吸ってたしね」

「あんなのしょっちゅうだかんね、あいつ」

 よっこらせ、とジジくさい掛け声で立ちあがり、中林くんはズボンについた砂粒をはらった。

「いいとか悪いとか、認めるとか認めないとか、だれに許可取ったところでどうなんの。おかしくないよー、普通だよー大丈夫だよーってだれかが言ってくれるのをずっと待ってる? そんなぺらっぺらのことば、だれだって簡単に吐けるもんだよ」

 中林くんのことばは注射針のように鋭い。ふわふわした期待も不安も容赦なく切って捨てていく。でも、世のなかを斜めに見るその視線が、いまはふしぎと小気味いい。

 なんだか笑ってしまう。

 そうか、待ってたってだれも迎えに来ないんだ。

 それなら、安心だ。

「行こう」

 そう大きくうなずいて、僕も立ちあがった。


 野菜の無人直売場のまえで別れる寸前、そういえばさ、と中林くんが言った。

「香坂くんは、そもそもなんで坂田に男だって嘘ついてるの?」

「それは……」

 ふいに図書館の書架のまえに佇む坂田くんの背中が浮かびあがる。

「ちょっと、見栄はっちゃっただけ」

 照れ笑いをしてごまかすと、中林くんは例によって、

「ふうん」

 と、気のない返事で引きさがった。

「ま、なんでもいいけど。どうせそのうちバレるんだし」

「いや、それは、まあ」

「そうでしょ? 男子校通うわけにはいかないんだから」

 バレたら教えてね。今日一番の意地悪な笑みを浮かべる中林くんをどついてから、僕たちは手をふって別れた。

 防災無線のスピーカーから午後五時を告げる『夕焼け小焼け』が流れだす。どこかの家の台所からカレーの匂いが漂っている。ふと初日の講習で切り絵を差しだした坂田くんを思い出した。あのときもらったオオサンショウウオは、お守りのようにペンケースにしまってある。

 図書館の一角、『性・ジェンダー』の本棚。四段ある棚のうち、坂田くんは上から二段目の本によく手を伸ばしていた。それだけでもう気づいてしまうものはある。その棚に並んでいるのは、同性愛やセクシュアルマイノリティに関する本だ。

 女の子のほうが苦労するものがあるのなら、男の子のほうが苦労するものもあるんだろう。

 髪を短く切り、男の子のようなかっこうをしても、僕は許される。まわりは勝手に「ボーイッシュな女の子」として僕を見る。女の子と手を繋いでも「仲がいいんだね」で片づけられる。中林くんのような反応は初めてだったけど、今日みたいに自分の気持ちを打ち明けても、こっぴどく拒絶されることはたぶん少ない。

 でも、坂田くんはちがう。

 坂田くんが、具体的になにを知りたくてあの本棚のまえに来るのかは分からない。君嶋先輩のような人のことを知りたいのか、先輩と一緒にいる自分の立ち位置を確かめたいのか、それとも僕とおなじように、まだ発見されていないアルファベットを探しているのかもしれない。なんにしても、坂田くんがそれをだれかに相談するハードルは、きっと僕よりも高い。

 ――香坂くんのこころは、香坂くんにしか分からないよ。

 中林くんのことばがよみがえる。そうだ。おなじように、坂田くんのこころも坂田くんにしか分からない。たとえ似たものを抱えていたとしても、それだけで僕が坂田くんの荷物の重さを分ちあえるわけじゃない。鏡合わせの切り絵のように、自分の荷物を持ってあげられるのは、鏡に映った自分だけだ。

 それでも、僕は坂田くんがとなりにいて嬉しかったよ。

 あの本棚のまえで、となりに並んで、視線をさまよわせながら本に手を伸ばす人がいて、ほんの少しだけ心強かったよ。

 足もとの草むらでなにかがひょろりと動いた。

 クローバーのかげから、夕日をうけて鈍くきらめく尻尾がのぞいていた。おもわずくすっと笑い、それから、こころのなかでそっとつぶやいた。

 どうか、そのことだけ。

 僕の嘘がひらくとき、そのことだけは伝えられますように。あの切り絵を坂田くんがくれたみたいに、今度は僕がなんでもないふうに笑って、「あげるよ」って差しだせますように。

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