なぜいままで本文付きレビューがないのかと首を傾げました。
素晴らしい秀作です。
中盤までは、「絵をつけて絵本として読みたい」と思わせる牧歌的な展開。その言い回しや情景の童話的表現は、ノスタルジックで思わず引き込まれます。
そして「死」を緩慢に受け入れ、大らかにそれと向き合う主人公動物の姿に、なんとも言えない哀愁を感じつつも温かな気持ちになるのです。
ところが中盤にさしかかると、見事にそのしみじみとした胸の温かみが裏切られます。非常に良質の裏切りです。
ストーリーはミステリアスにテンポを上げ、先の読めない展開が読者を釘付けにします。
そして感動のラスト。
その一文を目にしたときに、最初に感じていたあの胸の温もりがふわりと蘇り、豊かな読了感がいっぱいに広がります。
掌編ですが、非常に読み応えのある一遍です。
ぜひご覧になってください!