マーチン……


ドクン――


心臓が高鳴った。

1等星の輝きが二つに分かれ、また一つに戻った。

頭がぼんやりする。


何かおかしい。


農地の中に立つ大きな木に止まる。

頭がふらふらする。

おかしい。


ズキン――


頭が痛い。

おかしい。


長い時間飛び続けて疲れたのだろうか。

確かに羽の付け根が重く感じるけれど……


ドクン――


心臓が脈をうつたびに光が二つに分かれる。

やっぱりおかしい。


『薬品の効果はじわりと効くように薄めている』


セバスの言葉を思い出した。

私、クスリを吸い込んでいたんだ。

ジミーのスープ皿に体当たりしたときに。

それが今になって……


ドクン、ドクン、ドクン――


怖くなった私は羽を動かし飛び上がる。

私、死ぬの?

怖い、怖いの!


ビリーは!?

ハリーは大丈夫かしら?

二人はクスリを吸い込んでいなかったかしら?


私は体が小さいからクスリが良く効くだけ。

もしそうならば、ビリーとハリーは大丈夫かもしれない。

そうであればいいのだけれど。

神様――どうか二人をお守りください――


ああっ……マーチン……

私、あなたの元に帰ることができるかしら。

私の姿を見たら、あなたは何て声をかけてくれるかしら。

もし、私が死んだと知ったらあなたは……


満面の星空の下、私はふらつきながらも飛び続ける。

眼下には真っ黒な大地の中にまばらに灯る家々の明かり。


地平線のその先に向かって飛び続ける。


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