私、戦います!
月明かりの屋敷の前広場。
そこに一台の見覚えのある馬車が止まっている。
御者が乗り込み、手綱を引こうとしている。
私はそこへ向けて急降下する。
「何事だぁ!?」
御者の頭に体当たりすると、黒い帽子がずり落ちた。
男はまん丸に目を開いて私を見た。
「てめぇーはクソガキに与えたクソ鳥じゃねぇーか!」
男はセバス。目付きの鋭い執事だった。
「くそっ、何をしやがる! どっかへ行きやがれぇー!」
男の周りを飛び回る私を追い払おうと手を振り回すセバス。
でも私は負けない!
あなたは悪い人間。
私を助けてくれたご主人と奥様、そしてジミーを殺そうとした。
それに――
「ピィィィ(あなた、ハリーを蹴ったんですって)――!?」
「ぶはっ……」
私はセバスの顔に体当たりをした。
彼はしかめっ面をして私の体を手で払った。
「セバスさま、どうなさいました? 早く逃げましょう」
つり目気味のメイドが馬車から顔を出した。
私は思いっきり羽ばたいてメイドの顔に突進した。
「ひっ……!」
メイドは顔を車内へ引っ込め、窓をピシャリと閉めた。
私はガラスに叩き付けられる。
その瞬間、大きな手で掴まれる。
「いい加減にしろ! 大人しくしていれば死なずに済んだものを――」
セバスが低い声で言った。
私はクチバシで思いっきりその指を噛んだ。
でも、ごつくて固い彼の手は噛んでも噛んでもびくともしないの。
苦しい……
マーチン……
「あうッ!?」
突然、バチンという炸裂音。
セバスの悲鳴が聞こえ、私から手が離れた。
「そこまでだ!」
痛そうにうめき声を上げてうずくまるセバスに声をかけた鞭を持った男。
白い口ひげを生やした、私を肉屋の店主から救ってくれた老人だった。
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