私、夜空へ羽ばたきます

「ビッビィィィ(ハリーお願い、スープ皿を壊して)――!」


本当は悲鳴を上げるつもりだった。

でも、私のクチバシから吐き出されたのは……

ハリーへのメッセージだった。



「ニャァー(任せておけ)!」



言葉が――


――通じた?


ハリーがテーブルに跳び乗り、旦那様のスープ皿をひっくり返す。

パシャリと熱いスープが飛び散り大騒ぎ。


「何事だ――!?」と旦那様がイスから転げ落ちる。

「旦那様――ッ!」とメイドたちが駆け寄る。


「食事が台無しじゃないか、今日は何と言う日だ!」


私を捕まえていた白い作業服姿の老人の手が離れた。

その隙に私は空中に羽ばたいた。

ハリーは人間たちの手をかいくぐり、室内を逃げ回る。


「スゲェェェ――ッ、ハリーすごいぞォォォ――!」


ビリーは一人拳を握りしめ興奮している。

ハリーが足をかけた花瓶が倒れ、水がカーペット敷きの床に飛び散る。


「捕まるなハリー! 逃げろぉー、あははは」


すごく楽しそう。


ふと窓の外を見ると、屋敷の前に馬車が止まっていた。

そこへメイド服を着た人間が走っていく。


「ピッピィィィー(ハリー、この窓開けられないかしら)?」

「ニャァァァ(任せておけ、三代目)!」


ハリーが窓に向かって跳んだ。

ガッと把手を両手で挟んで回す。

体をムチのように振り回すとその勢いで窓が外側に開いた。


「スゲェ――ッ、カッコ良いぞ――!」


呆気にとられている大人達の中でジミーは更に興奮している。


「ニャアー(ジミーは何て言っている)?」

「ピッピィー(カッコ良いって言っているわ)!」

「ニャーゴ(そうか、カッコ良いって言っているのか)……」


ハリーは把手にぶら下がったまま、ゆっくりと目を細めた。


「ニャアー(行け三代目、後のことはオレ様に任せておけ)!」

「ピィー(ありがとうハリー、行ってきます)!」


私は窓から夜空へ飛び込む。

星空の真ん中にポッカリと浮かんだ大きな青いお月様。


私はピッピ。


人間の言葉も、

猫の言葉も理解する、

ちょっぴり変な鳥。



でも、



こんな私にも仲間ができました。


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