タッチ アンド キス

 何故、魔法少女たちが魔物を倒すことが出来るのか。

 それは、彼女たちが持つ魔力マジカルに起因する。

 魔力がある事で彼女たちは人知を超える力を行使することが出来、魔力こそが魔物への対抗策でもある。

 無論、通常兵器でも魔物にダメージを与えることはできる。

 ただ、その効率が段違いだ。

 魔力は魔物にとって毒のようなものだと誰かは言った。

 そして、魔法少女にとって魔力は車で言うガソリンの役割をしているという。

 けれども、もしガソリンを使い切ってしまったら。

 車は動かなくなるが、魔法少女はどうなるのだろうか?


 ♢♦♢


「「コピー!?」」


 そう、それが俺の能力だ。

 ちなみに魔法少女には2つのタイプがある。

 何か特別な力に特化しているタイプと装備が強いタイプ。


「ほう、それは中々面白い能力じゃのぅ」


「ですが、コピー能力って大抵かませですよね」


「ぐっ……」


「でっ、でも私はすごい能力だと思うよ?」


「んー、何か発動条件とかデメリットがあるんですかー?」


 デメリットはない。

 今のところは。

 ただ、発動条件が少しある。


「コピー対象に触るのと、対象の能力や武器を知っていることが条件で、同時に3つの魔法少女をストックしてその中から1つを選んで戦うって感じです」


「条件がいささか緩いような気もするのぅ」


「うっ……」


 嘘は言ってない。

 でも、今言った条件では良くて80%くらいまでしかコピーできない。

 100%になるには、もう一つ条件がある。

 それは キス だ。

 そして、キスした場合その魔法少女の事を知らなくても無条件でコピーすることが出来る。

 でも流石にいきなり言うのは恥ずかしい。

 初対面の、しかも年頃の女の子に能力の条件はキスですなんて言えるほど俺の心臓は強くない。


「ま、まあそんなもんだって」


 よし、何とかごまかせたみたいだ。

 若干名が俺の事を訝しむように見つめているが、ごまかせたことにしておこう。


「折角じゃし、もっと能力が見たいのぅ」


「んふふー、そんなこともあろうかとおあつらえ向けの指令がここにー。3人くらいで行ってもらおうかなー。レオ君は誰と一緒に行きたいかな?」


 甘い声と可愛らしいウィンク。

 天春さんは俺に選択肢をくれるなんて優しいなー……。

 なんて思うわけもなく。

 てか、今さっき自己紹介されたばっかの人の中から選ぶって難しくないか?

 第一印象で決めてしまっていいのだろうか。

 俺が決めかねていると俺の隣に座っていた夏目さんが手を挙げるとともに勢いよく立ち上がる。


「はいはいはいっ!私、夏目もも立候補します!」


「ももちゃん元気いいねー。じゃあ、一人はももちゃんで決定だねー。じゃあ、もう一人はー……」


「「儂(我)だ!!!」」


 夏目さんに続くように、勢いよく二人立ち上がる。

 ツインテロリっ子と男の娘だ。

 そんな二人の顔を見て天春さんの笑顔が凍り付く。

 あ、目がめっちゃ泳いでる。

 この二人じゃ何か困るのか?

 初対面の感じだと冠は少し頼りなさそうだし……。

 とりあえず助け船を出してみるか。


「時間跳躍にすごい興味があるんで尊慈さん、一緒に行ってくれませんか?」


「え、嫌よ?」


 空気を読め。

 なにナチュラルに断ってんだよ!


「う、うん。レオ君もそう言ってるし冥ちゃんダメかなー?」


「面倒くさいので嫌です。個人的には冠きゅん……冠君と二人きりで行かせるのがいいかと」


「どうしてもー?」


「……わかりました。このまま断り続けるのも面倒ですし行きますよ」


「ありがとー」


 そう言われた尊慈さんの顔は少し赤らんでいるようにも見えた。

 両刀かな?


「じゃあ、3人に行ってもらうのはスライムの討伐任務だよー」


 ♢♦♢


 俺には特別な支度は無かったが二人は何か支度があるのか、俺は部屋を出て先ほどまでいた建物の外で待つことに。

 先ほどまでどうやら築年数もそこそこなちょっと大きめの一軒家にいたようだ。


「お待たせしました」


 まずは尊慈さんが家から出てきた。

 先ほどまでとは違う服装に着替えたらしいが、それ意味あるのか?

 なんて思っていると彼女に舌打ちを打たれる。

 もしかして、読心術って魔法少女の必須スキルなのか?


「ごめんねっ、お待たせー!」


 少しして、夏目さんが出てくる。

 出てくるのは良いんだが、少し勢いよくないか?

 てか、ものすごい勢いで突っ込んできてる。

 そっかー転んじゃったかー……。

 ここは男らしく受け止めてあげたいところ。

 が、彼女が突っ込む先は俺ではなく尊慈さんの方向。


「へっ!?」


 どうやら、尊慈さんは気が付くのが少し遅れていたらしい。

 そのままぶつかられて突き飛ばされる。


「ちょっ!?」


 そう、ぶつかった彼女がさらに突き飛ばされ今度は俺の方向に飛んでくる。

 かっこよく受け止めるぞ、なんて思ってはみたが時すでに遅し。

 案外早いスピードの彼女と俺は思いっきり正面衝突。

 顔に何かがぶつかるのがわかる。

 ぶつかった衝撃で視界がぼやけてよく見えない。

 だんだん視界が戻ってきたぞ。

 戻ってきた視界で最初に見たものは、大きくとても綺麗な黒色の瞳だった。

 鼻に息が当たる。

 そして、唇には甘くやわらかな感触が。


 どうやら俺は尊慈さんとキスをしてしまったようだ。


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