番外編39〔さようなら異世界〕最終話
番外編39〔さようなら異世界〕最終話
「待たせたな、タロウ。さあ、やろうか。」
オリアンは、僕の前まで来ると笑みを浮かべながら言った。
しかし、その目は真剣そのもので、この勝負に賭ける意気込みが半端でないことがよくわかった。
僕は勝負の前に、気になっていたチェスハの事を尋ねた。
金棒を粉々にされた時は、遠目に見ても落ち込んでいるのがわかったからだ。
しかし、すぐに元気になり、手を振りながらオリアンを送り出す変わり身の早さに何かあったのかと、気になっていたのだ。
「オリアン、チェスハは何かあったの?ミウが金棒を粉々にした時は落ち込むとは思っていたけど、なぜかすぐに元気になってたみたいだし…」
すると、オリアンは少しビックリしたように、
「ほお~、タロウでもわからない事があるのか。」
と、呟いた。
「いやいや、普通は大切な物を壊されて落ち込むのはわかるけど、逆に喜ぶなんて思いもしませんよ。」
するとオリアンは、「フフフ」と笑い、
「まあな、アイツの事は今でもわからない事が多いからな。
でも、お前ならわかるんじゃないか?チェスハが喜ぶ事、好きな事は。」
「チェスハさんの好きな事?喜ぶ事? あっ!」
僕はすぐにピンと来た。チェスハさんの好きな事といえば、『美味しい食べ物』と『お金儲け』だ。
金棒と食べ物は関係がないから、お金儲けの方だ。しかし、さらに疑問は増えた。粉々になった金棒とお金儲けが結び付かなかったからだ。
僕はオリアンに、再び尋ねた。
「粉々になった金棒と、お金儲けが何か関係あるの?」
オリアンは困ったような顔をして、頭をポリポリとかきながら、
「いや…俺にもよくわからねえんだ。『奇跡の破片』がどうとか、『運命』だとか…な。
だがチェスハが言うには、あの破片の山が、全てお金になるんだとよ。」
「え!?あの金棒の破片が全部お金に?!」
僕は思わず破片の山に目をやった。
するとそこには女性達に囲まれている、笑いの止まらないチェスハの姿があった。するとオリアンは、
「まあ、詳しい事はミウにでも聞くんだな。チェスハから破片を貰って嬉しそうにしてたからよ。」
「ミウまで?チェスハさん、一体何を考えたんだ?」
確かにチェスハさんは、お金儲けに関しては天才的な閃きがある。しかも、転んでも只では起きない、いや、何倍にもなって起き上がって来る。『最恐』と恐れられたオリアンを手玉に取り、『勇者』と呼ばれたタロウをも呆れかえさせる。ある意味この世界で1番強いのはチェスハさんではないかと思えた。
その証拠に、みんなの前で見せた『オリアンとチェスハの奇跡の破片』にはあるカラクリがあった。
それは、チェスハの拾った破片だ。
一見チェスハは、散らばってある破片を無造作に拾ったように見えたのだが、実はオリアンが拾った破片の一番近くにあった破片を拾っただけなのだ。
冷静に見れば、一番近くに落ちていた破片同士が合わさるのは奇跡でも何も無いのであるが、巨大な鉄の金棒が目の前で粉々になったり、神と呼ばれていた黒龍を振り回すという信じられない光景を目の当たりにした後だと、大抵の者はすぐに奇跡を信じるようになるものである。
僕と一緒に居た時間が長いチェスハは、僕の信じられないような力を何度も見てきている。
だからこそ、冷静な思考を保ったまま、ミウ達を言葉巧みに操り、ただの鉄の破片を『奇跡の破片』に変えてしまったのだ。
しかし、いくら近くに落ちていたとしても、100%キレイに合わさる保証は何処にもない。
しかし、その100%を引き当てるのが、チェスハの凄いところかもしれない。
そして再び降りオリアンが口を開いた。
「まあ、そんな事はどうでもいい。俺には関係ねえ事だ。とっとと始めようぜ。
って…、そういえばタロウ、お前手ぶらじゃねえか?」
「あ!そういえば…」
僕は、剣術大会にもかかわらず、武器を持たずに試合をしていた事に、今更ながら気が付いた。
「だ…だって、オリアンがいきなりみんなと試合をしろって言うから…」
するとオリアンは大声で笑い、
「アハハハハ!悪い悪い。でもよ、試合をするのに丸腰で行くなんて、お前ぐらいなもんだぜ。
まあ、どうせここにある武器じゃ、お前にはキズ一つ付けられないのはわかってはいるんだがな。
でもまあ、あれだ。丸腰のタロウをボコボコにしても、格好がつかねえからな。俺のを貸してやるよ、これを使え。」
オリアンは、そう言うと自分の持っていた木刀を僕に差し出した。
「え?じゃあオリアンはどうするの?」
僕はオリアンから木刀を受け取ると、オリアンに尋ねた。するとオリアンは、
「安心しな、まだまだ予備はたくさんあるからよ。ちょっと待ってな。」
そう言うとオリアンは、試合を見に来ていた仲間達に、
「おい!俺のサケ樽を持って来てくれ!」
と、大声で叫んだ。すると仲間のアイガ達の姿が見えなくなったと思うと、すぐに3人がかりで大きな樽を試合場の入り口まで運んで来た。
それを見たオリアンは、嬉しそうに走って樽に近付いた。
よくその樽を見てみると、何本もの木刀が刺さってあるのがわかった。
オリアンの木刀は、普通の木刀とあきらかに違っていた。オサケを染み込ませているせいか、少し柔らかく重い、力を入れて握れば指の形が残りそうだ。
僕はオリアンが木刀を取りに行っている間に、軽く一振りしてみた。
「ブン!!キラキラキラ……」
すると、木刀から『水しぶき』ならぬ『オサケしぶき』が半円状に宙を舞った。
「おお~~~!!」
と、同時に観客席からもどよめきの声が上がった。
そのしぶきに太陽の光が当たり、試合場の真ん中に虹が浮かびあがったからである。
オリアンもその虹に気付きニヤリと笑みを浮かべた。
そしてオリアンは、樽の中から1本の木刀を手に取ると腰紐に突き刺した。
そしてそのままこちらに来るかと思いきや、オリアンは樽のオサケを柄杓のような物でゴクゴクと飲み始めた。
「か~!うめえ~!!試合前のオサケはやっぱうめえ~!!!」
そして、そのまま仲間に目で合図を送った。
すると、アイガ達は木刀の刺さった同じような樽をいくつも持って来た。
オリアンはその木刀をおもむろに掴むと、試合場のあちこちに投げ始めた。
「ビュンビュン!ビュンビュン!ビュンビュンビュンビュンビュンビュン!!!!」
「ザク!ザクザク!!ザクザクザクザク!!!!ザク!!」
あっという間に何十本という木刀が、試合場のあちこちに突き立った。
その光景を見たオリアンは、「よし!」と一言頷き、さらにオサケを口に入れた。
そして腰に付けていた木刀を取り出し、空に向かって掲げたかと思うと、口に含んでいたオサケを木刀に向かって吹きかけた。
すると、オリアンの頭上にも小さな虹が現れた。
僕は、オリアンの行動の意図がわからなかった。
「ん?この突き刺さった木刀って、何かの意味があるのかな?」
その何十本の木刀は、僕の動きを封じる為ではないかと最初は思った。何も無い広い場所と、障害物のある場所では、スピードも殺され、動きも封じられると思ったからだ。
しかし、それはオリアンも同じだ。超スピードが売りのオリアンが、わざわざ動きを制限するような事をするだろうか?
それに今の僕なら、いくら固い木刀だろうが、無視して突っ切る事も出来る。オリアンがその事に気付かない訳がない。
僕は、不意にあるアニメを思い出した。
そのアニメの中に『千刀流』という話が出てきた。
内容はというと、その刀の持ち主は、あらかじめ戦場に『千本の刀』をいたる所に隠しておくというものだった。
戦いにおいては何があるかわからない。刀が折れ、弾かれ、武器が無くなったとしても、その場に千本の刀がいたる所にあれば、いくらでも替えが利く、それゆえ無敵という話だ。
ちょうどその時、オリアンが僕の前に立ちはだかった。
「よし、準備は万端だ!さあ、始めようぜ!」
僕は、今考えていたことをオリアンに尋ねた。
「ねえ?オリアン?この突き刺さってる木刀って…」
すると、オリアンは呆れたような顔で、
「は?お前と俺との試合だぞ?1本や2本の木刀で足りると思うか?いちいち試合を止めるのもつまらねえ!お互い好きな物を使えばいい!」
「あれ?僕の考えすぎなのか?」
僕は苦笑いを浮かべると、
「アハハ…、やっぱりオリアンにはかなわないや。」
すると、オリアンは、
「何言ってやがる。これからキッチリと負けを認めさせてやるよ。おい!審判!!」
オリアンは、審判に試合開始の号令を促した。
そして、それを聞いた審判は、
「これより!特別試合!オリアン対タロウの試合を行います!!!!」
審判が叫んだと同時に、地割れというか、地鳴りというか、もはや言葉にもなっていないような歓声が会場を飲み込んだ。
オリアンは、僕の顔を見ながら、
「タロウよ、俺はこの時を待っていたぜ!」
と、睨みを効かせながら言った。が、その顔は、オリアンのトレードマークの、『藍色』ではなく、少し赤みががった藍色で、紫色にも見えた。
僕はオリアンに、
「もしかして、オリアン酔っぱらってる?
せっかく『勇者』にしてあげたのに、僕に負けたら、村の子供達が悲しむよ。」
するとオリアンは、
「うるせえ!あれから10年以上経ってんだ!ガキ共もデカくなって、本当の事を知ってやがるよ!」
それを聞いた僕は、
「なんだ、じゃあ僕が勝ってもいいんだ。」
と自信ありげに言ったが、オリアンはニヤリと笑い、
「いいや、勝つのは俺だ。」
と、なんだか自信満々だった。そして、次の瞬間、オリアンは客席に向かって、
「いいか!お前ら!!15分…、いや、10分だ!!!俺は10分以内でタロウを倒す!!!
もし、10分経っても、タロウがこの場所に立っていたら俺の負けだ!!!」
そして、そのまま審判にも、
「おい!審判!3本勝負なんてケチな事無しだ!どちらかがぶっ倒れるまでの1本勝負だ!!!タロウもそれでいいよな!!」
と、言ったかと思うと、いきなり僕に近付き、
「お前も、その方がいいんだろ?」
と、耳元で囁いた。
僕は、いきなりの事で戸惑ったが、
「え!?何?? もしかしてバレてる?オリアンは、あの事を知ってるの?」
と、一瞬焦ったが、その動揺を見破られまいと、
「もう!オリアンたら、オサケ臭いよ!そんなんで僕に勝てるハズがないじゃない。
僕は1本でも2本でも、何本でもいいよ。」
と、強がってみせた。
すると審判は、
「いや、一応、ラウクン国王に聞いてみないと…」
するとオリアンは、審判の声を遮り、
「そんなもん、俺が聞いてやるよ!
お~い!国王~!!!10分1本勝負でいいよな~!!??」
と、国王専用の部屋から見ている、ラウクンに向かって叫んだ。
するとラウクンは、何を言ってもムダな事は、わかっているので、両手で大きな丸を作り、2回首を縦に振った。
「よっし!決まりだ!!!さあ、始めようぜ!!」
と、オリアンは嬉しそうに呟いた。
僕とオリアンは、お互いに背を向け、あちこちに突き刺さっている木刀を避けながら、開始線まで歩いた。
開始線といっても、激しい試合続きの会場だ。何処が線やら地割れやらでわからなくなっていた。
それでも僕は、「だいたいこの辺かな?」と目星を付けて、立ち止まり振り返った。
一方、オリアンは歩きながら地面に刺さった木刀を掴むと、こちらを振り向き、両手に1本づつ二刀流で構えた。
その瞬間、会場を凍りつくような緊張感が覆った。観客達も息を飲み込み2人を見守った。
そして、
「10分1本勝負!始め!!!!!」
会場の隅に居た審判の声が響き渡った。
「ブン!」
「ブン!!」
僕とオリアンの考えていた事は同じだった。
僕とオリアンは、開始の合図と共に手に持っていた木刀を投げつけた。
「バッキ~ン!!」
お互いの投げた木刀が中央でぶつかり合い、鈍い音がこだまし、木刀は砕け散った。その瞬間、弾け飛ぶ破片と共に水しぶきというか、オサケしぶきが宙を舞った。
が、そこからは僕とオリアンの考えは違っていた。
僕は投げつけたと同時に、オリアンに向かって走った。途中、刺さっていた木刀を手に取り一撃を食らわそうとしたのだ。
オリアンに先に動かれ、見えなくなっては、攻撃を防ぎようがないからだ。
しかし、オリアンは動かなかった。木刀を投げたと同時に、さらに足下にあった木刀を掴むと、二刀流のまま僕の攻撃を受け止めようとした。
オリアンは、頭の上で2本の木刀を交差し構えたが、僕はお構い無しに木刀を振り下ろした。
「ベッキ~ン!!!!」
僕はオリアンを傷付けまいと、少しは力を加減して攻撃をしたのだが、それでもその衝撃に木刀は耐える事は出来なく、オリアンの頭上で2人の持っていた3本の木刀は、粉々に砕け散った。
するとオリアンは、その事がまるで当たり前のように、表情ひとつ変えず、いや、むしろ少し笑みを浮かべ、瞬時に次の木刀に向かって走った。
僕はとにかく、オリアンに距離をとられないよう、オリアンの後を追った。
いくら超スピードでも同じ方向に動けば、姿は見えるからだ。
オリアンからは攻撃を仕掛けて来るということは無かった。
たまに立ち止まり、僕の攻撃を受け止め木刀が砕け散ると、次の木刀を手に取り、僕の攻撃を受け止めるという事を繰り返していた。
しかも、そのやりとりがお互い『超高速』で行われていたため、観客には2人の姿は見えず、たまに聞こえる激しい破裂音と、同時に見えるサケしぶきによる虹が、会場のあちこちで見られた。
そして、その『タロウVSオリアン』の世紀の一戦も、オリアンの提示した10分も待たずして、あっけなく幕を閉じた。
僕はオリアンの後を追いながら、不思議に思っていた事があった。
「どうしてオリアンは、攻撃をしてを来ないんだ?確かに今の僕の方が『力』も『スピード』も上だけど、このままオリアンが逃げ回ったら、『僕が10分立っていたら僕の勝ち』っていうルールでオリアンの負けになっちゃうのに。
逃げ回って、僕の体力を削るつもり?でも今の僕なら体力もオリアンより上だよな。しかも10分やそこらで体力が無くなるなんて、オリアンだって思ってもいないはずだし。」
すると、一つの仮説が頭を過った。
「もしかしてオリアンは、わざと負けるつもり…いや、引き分けを狙っているのか?
『タロウ』はこの国の『伝説の勇者』だ。言わば『絶対的な英雄』でもある。たとえ相手が世界最強と言われるオリアンであろうが、他の国から来た人達の目の前で負けるというのは、『タロウ』は伝説でも何でも無くなる事を意味する。
だから、オリアンは時間を決め、それまで攻撃を受け続け、10分経ったら「参った参った、やっぱりタロウには敵わねえ!ハハハハ!やっぱりタロウは伝説の勇者だ!なあ!みんな!」と、僕を伝説の勇者のまま、僕の世界に帰そうとしたのか?
そうすれば、タロウと互角に戦ったオリアンの名前にもキズが付かないんじゃないか?」
と思っていた。そして、その答えに辿り着いた時、なぜか怒りが湧いて来た。
僕の知っているオリアンは、勝負に関しては一切手を抜かなかったからだ。
確かに相手が弱いと、ふざけたりすることはあったが、あのラクとの試合でさえ本気だった。
僕との試合前にも『絶対ぶったおす!』と言った言葉も、ウソだったと思うとさらに悲しくもなった。
試合開始から3分程経った頃だろうか、僕は追いかける足を止め、オリアンに向かって叫んだ。
「オリニャン!!??ん?ニャン?」
僕の声を聞いたオリアンも、足を止め、さらになぜか構えていた木刀も構えを解き、
「ハァ~…」
と、タメ息を漏らすと、手に持っていた木刀を肩に担いだ。
そんなやる気の無いオリアンの姿を見た僕は、さらに頭に血が上り、顔が真っ赤になった。
するとオリアンが、
「なんだ、もう終わりか…、もう少し遊べると思ったんだがな。」
と、訳のわからないことを言ったので、僕はさらに頭にきて、木刀をオリアンに向けながら、
「オリャン!僕がころもらからって、ハカにしれるれしょ!!」
と、僕はオリアンに向かって叫んだつもりだったが、木刀を向けた先にオリアンはおらず、
「らに、かっれにるごいてるんれしゅか!!」
と、改めてオリアンに向かって、木刀の先を向けた。すると、
「はれ?オリャンが3人?え?5人?ふんしんのしゅつ?」
と、オリアンの姿が3人、4人、5人とドンドン増えて行った。
そんなオリアンが近付いて来たが、オリアンの顔はドンドン歪み、と同時に会場全体までもがグルグルと回り始めた。
そんな僕を、オリアンは指先で額を「チョン」と押した。すると、
「ドッテ~ン!!」
僕は大の字にひっくり返り、そのまま気を失ってしまった。
「タロウ!!!!」
真っ先に飛び出して来たのは『ミウ』だった。
いくら相手がオリアンでも、タロウが負けるなんて事は、これっぽっちも思ってなかったからだ。
「タロウ!!タロウ!!目を開けて!!!!」
そんな悲痛とも取れる声を聞いたオリアンは、すまなそうに、
「ミウ、大丈夫だ。タロウは酔っ払って寝てるだけだ。」
「?…酔っ払って寝てる?」
ミウは頭を上げオリアンを見た。するとオリアンは、
「タロウは無茶苦茶強いが、所詮はまだまだガキなんだよ。まんまと俺の作戦に引っ掛かりやがった。ハハハハ!」
余裕のオリアンとは逆に、なぜタロウが大の字なって倒れているのか、その光景を目の当たりした観客達は、驚きのあまり言葉を失った。
その沈黙が、思ったより長く感じたのか、オリアンが思わず口を開いた。
「おい!コラ!審判!見ての通りタロウは戦闘不能だ!さっさとこっちに来て俺の勝利宣言をしろ!!!!」
ボーゼンとしていた審判も、名前を呼ばれた事で「ハッ」っと我に返り、僕の状態を確かめようと、小走りにオリアンの元までやって来た。
そして、僕の隣で片ヒザをつくと、僕の顔を覗き込み呼吸を確認した。そして、生きていることを確認すると片腕を掴み持ち上げ、その手を離した。
すると、掴まれていた手は重力に逆らうこと無く、そのまま地面に落ちて行った。
その頃になると、静かだった観客席からもざわめきが起こりつつあった。
「な…なんだ?…タロウがいきなり倒れたぞ?」
「一体、何があったんだ?」
「ま、まさかオリアンのヤツ毒を使った?」
「毒…」
「それしか考えられねえ!」
「こら~!オリアン!!毒を使うなんて卑怯だろ~!」
と、試合の最中に何らかの『毒』を使ったのではないかとのブーイングが会場中から巻き起こった。
するとオリアンの仲間達が反論した。
「バカやろう!オリアンはな、勝負に『毒』や『卑怯な手』を使った事は一度もないんだよ!いつでも真っ向勝負!だから世界最強なんだよ!なあ!オリアン!!」
そんな仲間達の声を聞いたオリアンは、
「え?…、いや…まあ…タロウみたいな子供にとっては『毒』…なのかな?ハハハ…」
と、複雑な表情で頭をかきながら言った。
「は?」「え?…」
オリアンの言葉を聞いた仲間達や観客は、一瞬呆気にとられたが、すぐに津波のような怒号がオリアンを襲った。
「このクソオオカミ!なんて事するんだ!」
「そうまでして勝ちたいか~!」
「この卑怯者~!!」
と、観客席から罵倒が飛び交う中、さらには仲間達からも、
「オリアン~!俺達は信じていたのに~!!」
「いつからそんな男になっちまったんだよ~!!」
と、涙を流す者まで出ていた。そのうち観客の1人が、
「てめ~みて~な卑怯者は、タロウに変わって俺がぶった押してやるよ!」
と、言ったかと思うと、柵を越え会場に乱入してきた。しかも、それを発端に次々と、「俺も!俺も!」と乱入してきたのだ。
さらにそれを見ていた衛兵達や、本来なら観客の暴動を抑える側のセオシルでさえ、
「こ、これだけいれば、今ならオリアンに勝てる!」
と、観客と共にオリアンに向かって行った。
それを見たオリアンはニヤリと笑い、
「いいね~!やっぱり祭りはこうでなくっちゃな!!
何人でもかかって来やがれ!ハハハハハハ!!」
するとオリアンは、持っていた木刀をセオシルに投げつけると、クルリと背を向け会場の隅に向かって走り出した。
「コラ~!オリアン!逃げるのか~!」
セオシルが走りながら叫ぶと、
「逃げやしねえよ!こうするんだよ!!」
と、木刀を漬けていたサケ樽を持ち上げると、走ってくるセオシルや観客達にぶちまけた。
「バッシャ~ン!!!!!!」
「ブッ!ペッペッ!」「な!何しやがる!」
すると仲間のアイガが、
「あ、あ、もったいね~…仲間の俺達でさえ滅多に飲めねえのに…」
すると観客の1人が、
「な!なんだ?これはオサケか?ん?こ、こんな旨いオサケがあるのか?」
すると他の男性も、
「たしかに…どうりで…、何かいい匂いがすると思っていたらこれだったのか!」
すべてはオリアンの作戦だった。この作戦を思いついたのはたまたまであった。
オリアンがオサケを湿らせた木刀で衛兵達の稽古をつけている時、オサケの苦手な衛兵が酔っ払ってしまったのを見た時、思いついたのだ。
後から思えば、無造作に散らばらせた木刀…
いや、僕に自分の木刀を持たせた時から、僕の負けは決まっていたのだ。
さらに僕の酔いを早める為に、動き回らせ、木刀を砕きオサケを散乱させる。
オサケが飲めない僕が、全身からオサケを浴びれば、数分で酔っ払うのは目に見えている。
ただあまりにもオサケの散乱が広範囲にわたった為に観客も酔い始め、乱入し向かって来るということになってしまったのだ。
よくよく考えれば、チェスハと結婚し、丸くなったとはいえ、最強には変わりがない、そんなオリアンに突っ掛かって行くなんて、シラフでは到底考えられない事だ。
オリアンは自分に文句を言って来た人達を怒ること無く、さらにオサケを観客達に浴びせ、
「飲みたいヤツは、ドンドン来い!祭りだ!
と、仲間達に食べ物を持って来るように要求した。
観客達が乱入した時は、厳しい表情をしていたラウクン国王だったが、宴会が始まろうとしているのを見て、
「何をしておるのだ、あやつらは…まったく…
国王を無視して宴会を始めるとはな。一言言ってやらねばなるまい。
イサーチェよ、私らも行こうではないか。」
と、言葉と裏腹の笑顔を浮かべ、イサーチェの手を取りオリアン達の元に向かった。
その頃、僕はというと、大の字になったまま眠ったままだった。ただでさえお酒に弱い僕が、オリアン特製のオサケを全身に浴びて大丈夫な訳がない。
騒がしい程のドンチャン騒ぎの中でも、僕の目が覚める事はなかった。
そのうち誰かが唐突に、
「よ~し!タロウを胴上げだ~!!」
と、言ったかと思うと、僕の回りに人が波のように押し寄せ、
「せ~の!ワ~ッショイ!ワ~ッショイ!!ワ~ッショイ!!」
「ありがとうよ!タロウ!!」
「また、遊びに来いよ!」
「やっぱりタロウは、この国の英雄だ~!!!」
人々が思い思いの言葉をかけながら、僕の体は2回、3回、4回、5回と宙を舞っていた。
僕は自分がそんな状況にあるとは気付く事もなく、ただただ深い眠りに落ちていた。
そんな中、僕は夢を見ていた。
空の上で真っ白い雲に寝転んで「プカプカ」と浮いている夢だった。
それはまるで、自分の部屋のベッドの上で寝ているような錯覚さえ覚えた。
「ん~~~ん!なんて気持ちいいんだ~!」
あまりの気持ち良さに背伸びをしたその瞬間、聞き覚えのある声で目が覚めた。
「…ゃん……ちゃん、お兄ちゃ…ん……お兄ちゃんてば!」
僕はその声の方向に顔を向けると、
「なんだ、智恵葉か…もう少し寝かせてくれよ…」
と、いつもの日常のような会話をし、顔を背けようとした時、僕の脳裏に『オリアン』の顔が浮かんだ。
「ち…ちょっと待て…なんでユーリセンチに智恵葉が居る??
そ、そうだ!オリアンと試合をしてて、目の前がグルグル回って…」
僕はベッドから飛び起きた。そして、起こすのを諦め部屋から出て行こうとする智恵葉に、
「智恵葉?!なんでここに居る?どうやって来た?!」
と、叫んだ。すると智恵葉は、明らかに仏頂面で振り向くと、
「はぁ~?何言ってんの、お兄ちゃん…、『なんで』って、ここはあたしの家!『どうやって』っては階段を上がって来たに決まってるでしょ!バッカじゃないの?」
と、捨て台詞を残し、部屋から出るとすぐに階段を下りて行った。
残された僕は、自分の回りを改めてよく見た。
そこは十数年も見慣れた風景だ、見間違う訳がない。明らかに僕の部屋だった。自分は制服ではなく部屋着を着ている。汚れたはずの制服キレイなまま部屋の壁にかかっていた。
「たしかに数分前までユーリセンチでオリアンと試合をしていたはず。帰ってきた?でもどうやって?」
僕が頭を整理していると、階段の下から智恵葉の声が聞こえた。
「お母さん、お兄ちゃん起きたけど、まだ寝ぼけてるよ。」
すると母さんが、
「仕方ないわよ、2日も寝ていたんだから。」
と、ひと言だけ答えていた。
僕はさらに聞き耳を立てた。もう1人の声を聞く為だ。
しかし、いくら待っても、その声はしなかった。僕は我慢出来なくなり部屋を出ると、
「母さん!智恵葉!ミウは!?ミウはそこに居るの?!」
と、階段の下に向かって叫んだ、すると智恵葉が、
「『ミウ』?何それ?知らな~い!てか、まだ寝ぼけてるの~?起きたんなら降りて来なさいよ!いくら休みだからってもうお昼だよ~!まったくだらしが無いんだから!」
「いや!ミウだよ!お前、お姉さんが出来て喜んでいただろ?
ならイサー…、伊佐江さんは?伊佐江さんの事は覚えているだろ!?」
「だから!お兄ちゃんみたいにアニメばかり見ないから、そんな『キャラ』は知らないっての!」
「キャラ?」
僕は智恵葉の言葉を聞いて、母さんに『ミウ』の事を聞くのが怖くなった。母さんまで『ミウ』の事を否定したら………、頭が混乱していた僕は、
「え?ウソ?!ミウが居ないって?…キャラ?覚えていないって、全部夢?まさかの夢オチ?ハ…ハハハ……、ウソだろ……、ま、まあ、そうだよな…、まさかこの僕が『英雄』になって、あんな可愛い女の子と一緒に暮らせるわけないもんな…ハァ~…、アニメの見すぎかなあ~…」
僕は「ガックリ」と肩を落とし、夢なら夢でもいいからもう一度『ミウ』に会えないかと、布団に入ろうと部屋に戻った。
すると、布団の一部がモゾモゾと動いた。僕は「ハッ」っと、初めてミウが部屋に来た時の事を思い出した。
「ミウ!!?」
僕は慌ててベッドの布団を剥ぎ取った。
「ミゥッ?」
そこには小さくて真っ白なヤモリが、大きな目で僕を見つめていた。
「ミウ……」
僕は思わずヤモリを抱きしめた。真っ白な体だが頭の上だけは黒い模様があった。間違いない、ミウだ。
「良かった…夢じゃなかったんだ。ミウは居たんだ。ミウと一緒に暮らせるんだ…」
安心した僕は、思わず涙を流した。
そんな僕に気付いたのか、ヤモリはドンドン大きくなり、僕の腕の中で人間の姿になった。
そして、僕を見つめながら、
「どうしたのタロウ?どこか痛いの?」
と、心配そうに聞いてきた。僕は、
「ううん、大丈夫。嬉しいんだ。ミウの事を知らないって言うから、ミウが居なくなったと思ったんだ…」
するとミウは、僕の目を見ながら、
「居なくなんてならないよ。だって私はタロウのお嫁さんになるんだから。」
そう言うと、ミウは頬を赤らめ目を閉じた。
そんなミウに答えようと、僕は肩を抱いたまま顔を近付けた。すると、
「ガチャ!!」
いきなり部屋のドアが開き、
「あ~!ミウお姉ちゃん!こんな所にい……ゃあ~!!!」
と、僕がミウにキスをしようとしている所を見られてしまった。
僕は慌てて、
「こ…こら智恵葉!いきなり入ってくるヤツがあるか!…」
僕と目が合った智恵葉は、口をパクつかせながらも、僕との目線を外すこと無く静かに扉を閉めた。
「カチャ…」
そして、
「ドドドドドドド~!」
「お母さん!お母さん!!お兄ちゃんがミウお姉ちゃんとキスしてた~!!!」
と、叫びながら階段を駆け下りて行った。
僕とミウは再び目を合わせると、智恵葉の慌てぶりを思い出し「プッ」っと吹き出し、あらためて軽くキスをすると、手を繋いで部屋から出た。
階段を下りながら、さっきあった事をミウに話した。智恵葉にミウの事を聞いても「知らない」と言った事だ。
「あ~、それはね…」
ミウが話始めようとすると、
「ミウお姉ちゃんは、こっちこっち!」
と、智恵葉がミウの手を引っ張り、自分の側に引き寄せた。それを見た僕は、
「さっきは『ミウ』の事、知らないって言ってたくせに…」
と、智恵葉に聞こえるように呟いた。すると智恵葉は「ムッ」として、
「そんな事、言うわけないじゃん!あたしとミウお姉ちゃんは、ホントの姉妹より姉妹なんだから!」
僕は「何を言ってんだ?コイツは?」と思いながらも、自分の家族がミウの事を気に入ってくれているのは、素直に嬉しかった。
その夜、ミウは再び僕の部屋にやって来た。もちろん、母さんの承諾も得ている。智恵葉は2人きりにすると危ないからと、ミウについて来ようとしたが母さんに説得され、次の日ミウと一緒に寝ることを条件に、しぶしぶ首を縦に振った。
僕は2人でベッドに座りながら、ユーリセンチで気を失ってからの事をミウに聞いた。
「ミウ、僕は一体どうなったの?
オリアンと試合をしていて、急に目が回って…」
するとミウは、
「あのねタロウ。タロウは酔っ払って寝たんだって。オリアンが言っていたわ。」
「酔っ払って寝た?!」
僕は驚きながら尋ねた。するとミウは「コクリ」と頷き、
「うん、そう。タロウは物凄く『オサケ』に弱いでしょ?だからそれを利用して、タロウに勝とうと思ったんだって。」
僕は試合の事を思い出しながら、
「もしかして、オサケを染み込ませた木刀も作戦の一つだったとか?」
「うん、そうみたい。会場中に木刀をバラ蒔いたのも、わざと攻撃を受けて木刀を砕いたのも、「タロウにオサケを浴びせる為だ。」って、タロウを運んでくれている時に教えてもらったわ。」
「やっぱりそうだったのか。オリアンから攻撃をしてこないのは、おかしいと思っていたんだよ。多分、オリアンから攻撃を仕掛けて、僕が逃げ回ったら木刀を粉々にして染み込んだオサケを浴びせられないからって思ったんだろうな。
それに今思えば、試合会場にオサケの匂いがプンプンしてたような…、試合に夢中で気が付かなかったけど…。」
「それから、10分1本勝負にしたのは、「タロウが自分の世界に用事があって、早く帰らないといけないのかと思ったから。」とも言ってたよ。」
「え!?そうだったんだ。」
それを聞いた僕は、学校に行く途中にイサーチェをユーリセンチに連れて行ったので、学校の事もあり、オリアンやラウクン国王に「長居は出来ない」と言ったからだと思った。
「じゃあ、オリアンが試合前に言った「お前もその方がいいんだろ?」って言ったのは、僕がオリアンの超スピードを見る事が出来ないって知ってた訳じゃなかったんだ…
ただ単に「用事があるなら、早く帰った方がいいんじゃないか?」って、意味だったのか~…」
「それからね、オリアンに玄関の所まで運んでもらって…」
「え!?ち、ちょっと待って…玄関まで運んでもらって…って?え?そういえばさっきも、運んでもらってる時に聞いたって…、
もしかして、オリアンがこの世界に来たの?!って、大丈夫だった?いくら人型になっても耳や尻尾は付いているんだし…」
するとミウはニコリと笑い、
「そこは大丈夫!ほら、お姉様が初めてこっちに来た時、「誰も気付かなかった」って言ってたでしょ?
それに私達がユーリセンチに行った時にも、何かを食べるまで誰にも気付かれなかったから、「こっちの世界の食べ物を食べなければ大丈夫だろう」って。
オリアンはオオカミの姿のまま来たんだよ。人型より力が出るからって。」
「へ~、そうだったんだ。でもよくトンネルに入れたね。前に試した時は入れなかったって聞いたよ。」
「うん、だから最初は、お姉様に運んで貰おうかって言っていたんだけど…」
「『お姉様』って、イサーチェの事だよね?」
「そう。私と同じで力も強かったし、こっちの世界の事もよく知っているから。
でも、お姉様もラウクン国王もせっかく10年ぶりに会ったのに、また離れるのは可哀想って。それに、ユーリセンチでは力持ちでも、こっちに来たら、ただの女の人でしょ?「タロウを運ぶのは大変だろうから」って。」
オリアンがこっちの世界に来た。確かにオリアンは僕の世界に興味津々だった。ただそれは、食べ物や文化的な事ではなく、化け物じみた力を持つ僕が、自分の世界では『弱い方』だということを確かめたかったのかも知れないと僕は思い、
「オリアンはビックリしてたでしょ?」
僕は、近代的な世界を見てオリアンのビックリした表情を浮かべながら聞いたのだが、ミウは複雑な表情をして、
「うん…、確かにビックリしてた。「なんだ~!!ここは?!!土も山もねえじゃねえか!?鉄の箱もあちこち走ってやがるし、変な匂いも撒き散らしているし、あ~!もう!我慢ならねえ!俺は帰る!!タロウによろしく言っといてくれ!」って、タロウを玄関に置いたらすぐに帰っちゃった。」
僕は話を聞いて「プッ」っと吹き出し、
「アハハハハ、オリアンらしいや。いくら便利でも、オリアンみたいな獣族は自然が豊かな方が暮らしやすいんだろうなきっと。」
「でもそれからが大変だったんだから。」
急にミウの顔つきが真剣になった。
「え!?どういうこと?」
僕もつられて真顔になってしまった。
「タロウを玄関に連れてきて、タロウのカバンに入っていたグミを食べて、タロウにも食べさせて、見えるようになったまでは良かったけど、
もうお昼も過ぎていて、急いでいたからタロウの服もオサケまみれで汚れていたし、どうやって説明しようかと思っていたら、お母様が出てきてビックリしたの。」
ミウの話によると、母さんは僕の姿を見て、多少驚いたものの深くは聞かれなかったそうだ。
学校からも不登校の電話があったそうだが、うまくごまかしてくれていたみたいだった。
それから僕は2人に部屋で服を脱がされ体を拭かれた。と、ミウが赤くなりながら話してくれた。
オサケに関しても、ミウが「タロウは飲んでいない、かけられただけ。」との訴えを信じてくれたらしい。実際、飲んではいなかったので、気分が悪くなったり、吐いたりすることはなかった。
話を聞いた僕は、
「そっかあ、けっこうバタバタしたんだね。みんなとちゃんとお別れの挨拶をしたかったけど…、まあ、また行けばいいのか。」
と、軽く考えていたのだが、それからユーリセンチへの『扉』は開く事はなかった。毎日壁の前を通る度、確認をしていたが壁は壁のままで、しかしそれは『ユーリセンチ』が平穏である事の証明と自分に言い聞かせ、新しく家族になったミウとの生活を楽しんだ。
これは後でわかった事なのだが、ミウがヤモリになっている間は、僕以外ミウに関する事は姿だけでなく記憶も無くなるらしい。
それならば、智恵葉の『伊佐江さんを知らない』という言動も納得がいく。
僕はミウにヤモリの姿になることを禁止した。何故なら、わかってるとはいえミウや一緒に暮らしたイサーチェの事を、智恵葉や母さんの口から「知らない」と聞きたくなかったからだ。
が、たまにミウはヤモリになって、僕の布団に潜り込んでくる。
「まあ、みんなが寝ている時はいいかな?」
と、僕も大目にみているのであった。
そんなこんなで1ヶ月が過ぎた。相変わらず壁は壁のままだ。それを見た僕は、
「ユーリセンチは10年位経っているんだろうな?みんなに会えないのは寂しいけど、幸せならいいか。」
と、いつものように学校に行くのであった。
まさか、違う場所に扉が開いたとは夢にも思わずに…
おわり。
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