番外編23〔史上最大の大祭り〕



番外編23〔史上最大の大祭り〕



意識を失い、衛兵達によって運ばれたラウクン王子は、すぐに着ていた鎧を脱がされ、部屋のベッドに寝かされた。


もちろん、ベッドのすぐ隣には、心配そうにラウクン王子の顔を除き込むイサーチェの姿があった。



僕は、ラウクン王子が着ていた『黄金の鎧』を見て、銅の部分に亀裂が入っているのを見つけた。


「あちゃ~、やっぱり割れているよ…、鎧を着て無かったら死んでいたかも…」


と、心の中で思いつつ、これまた心配そうに、ラウクン王子を見つめるセオシルに、


「ねえ、セオシル?この『黄金の鎧』って、僕は見たこと無いんだけど、新しく作ったの?」


と、聞いてみた。するとセオシルは、不思議な事を言い始めた。


「この『黄金の鎧』は、歴代の国王が『戴冠式たいかんしきに身に付ける鎧なんだ。

だから一生に1度しか着ないものなんだが…」


「え?でも、今日は戴冠式じゃ無いんだよね?」


僕はラウクン王子が、「イサーチェと一緒になるまでは『国王』にはならない」と言っていたのを思い出し、セオシルの顔を見ながら訊ねた。


すると、セオシルは王子の寝顔を見ながら語り始めた。


「ああ、本当は『戴冠式』の時だけ、それまでは厳重に保管されているんだが、今朝になってラウクン王子が「枕元に『白き女神』が現れ、御告げがあった」と言い出したんだ。」


「『白き女神』の御告げ?」


僕は思わずミウの顔を見た。ミウはもともと真っ白な髪で、僕をこの国に連れて来た事から『白き女神』と呼ばれていたからだ。


僕と目が合ったミウは、ビックリしがらも、首を横に振り、自分ではない事をアピールした。

そしてセオシルは、話を続けた。


「王子が言うには、『近くイサーチェが帰って来る。この国で1番頑丈な鎧で出迎えよ。』と言われたそうなんだ。」


「1番頑丈な鎧が、その『黄金の鎧』?」


僕はセオシルに訊ねた。

セオシルは首を縦に振ると、


「そうだ。戴冠式には国内だけじゃなく、国外からも多くの人が集まる、『新国王』を良くないと思ってるものも少なからず居る。

だからこそ、何があっても『新国王』の身を守れるように頑丈で、なおかつ権威を見せつけられるように『黄金の鎧』が作られたんだ。

しかし、その鎧にヒビが入るとはな、手入れは欠かさずしていたハズなんだが…」


僕はセオシルだけには『イサーチェ』の力の事を話そうと思い、


「あのね…セオシル、実はイサーチェ…」


と、その時、


「う…、ん…わ、私は…?」


ラウクン王子の意識が戻り目が開いた。


「ラウクン王子!!?」


イサーチェは、すぐにラウクン王子に近付き、手を取ろうとしたが、先程の事を思い出し、自分の手を引いた。


「ん!…」


ラウクン王子は自ら体を起こすと、


「すまなかった、イサーチェ。せっかく帰って来てくれたのに、無様な姿を見せてしまったな。

そなたの顔を見て体の力が抜けてしまったのかもしれん…ハハハ…」


するとイサーチェは、泣きながら、


「そ、そんな!ラウクン王子のせいではありませぬ!わたくしが…わたくしが、タロウ様の言いつけを忘れて、力一杯…うう…」


イサーチェはラウクン王子の膝に顔を埋めながら泣いた。


するとラウクン王子は、イサーチェから僕の名前が出たことで、


「タロウ?…」


ラウクン王子は辺りを見回し、僕と目が合った。すると、


「タロウ、やはりお主も来ておったか。しかし、お主は相変わらず何年経っても代わり映えしないな。ハハハハ。」


僕は一礼をすると、


「お久しぶりです、ラウクン王子。約束通りイサーチェを連れて来ました。

ちょっと、想定外の事もありましたけど…ハハハ…体の方は大丈夫ですか?」


ラウクン王子はセオシルに体を支えられながら、ベッドに座ると、


「堅苦しい挨拶は抜きだ。私は年を取ったが友人であろう?

ところで、一体私の体に何が起こったのだ?」


ラウクン王子の言葉が終わると同時に、セオシルと一緒にラウクン王子の体を支えていた、イサーチェの指先に、少し力が入った。


「い"っ!」


ラウクン王子は手の甲に激痛が走り、思わず声をあげた。

するとイサーチェは、すぐに自分の手を離し、


「す、すいません!!ラウクン王子!!」


と、ラウクン王子の目の前に立ち、深々と頭を下げた。

何がどうなっているのかわからないラウクン王子は、僕の顔を不思議そうに見た。


「え~っとですね…」


僕が説明をしようとしたとき、今まで部屋の片隅に立っていたオリアンが口を開いた。


「まったく…タロウに関わったヤツはとんでもない事になるんだな…」


「お~、オリアン。お主にも心配をかけたな。」


ラウクン王子の言葉にオリアンは、


「まったく、『女神』様々だぜ、あの鎧を着ていなきゃ、こんなもんじゃすまなかった。そうだろ?タロウ。」


オリアンは、優れた野生のカンで、今のイサーチェの戦闘力を見抜いていた。


「どういう事だ?オリアン?」


「今のイサーチェには、この城にいる衛兵全員でも勝てないだろうよ。

初めてタロウに会った時のような感じがするんだ。」


「はぁ~~??!、どういう事だ?タロウ?」


オリアンの突拍子もない発言に、ラウクン王子は呆れたような声をあげた。


ラウクン王子の問いに僕は、


「い、いや~、どうも僕の国に住んでいると、なんか力が強くなっちゃうみたいで…」


するとラウクン王子は、半笑いで、僕を見ながら、


「何をバカな事を、住むだけで強くなるなんて…そんな事があるはずが…」


「それが、環境の違いや、もともと僕の世界は、この世界と違う世界みたいで…」


僕がどう説明しようか迷っていると、オリアンが、


「ミウ?お前も同じなんだろ?そこの鎧を叩き割ってみろ。」


オリアンの言葉に、少し驚いた様子のミウだったが、力を使ってみたくてウズウズしていたミウは、すぐに僕の顔を見て、目で同意を求めて来た。


僕はオリアンに、


「はぁ~…、でもいいの?壊しちゃって?歴代の国王が着た、大切な鎧でしょ?」


「いいんだよ、もう壊れているしな、チェスハにもっとすげえ鎧を作ってもらえばいい。

で、いいよな?ラウクン王子。」


「え?…は?…」


いきなりとんでもないことを言い始めた2人に、ラウクン王子は戸惑いを隠せなかった。


それもそのはずである、ミウはもともと、この城の手伝いとして働いていた。

元気が良く明るい性格だったが、か弱い女の子であることは、ラウクン王子がよく知っていたからだ。


僕はミウに、


「ミウ、程々にね…」


と、釘をさすと、ミウは嬉しそうに大きく頷いた。


ミウは、僕の言葉に満面の笑顔で頷くと、


「えいっ!」


「ボキッ!ブスブスブス!バキバキバキバキバキバキ…ベキッ、バキッ…」


ミウは、まず鎧の隣に立ててあった剣をヒョイと持ち上げ、両手で持つと、「えいっ!」の掛け声と共に、さやご真っ二つにへし折った。


そして、飾ってある『黄金の鎧』の銅に指で何ヵ所も穴を開けると、頭の兜を両手で潰してみせた。

そして、ものの数分も経たないうちに、この国最強とうたわれた『黄金の鎧』は原型を留める事もなく、粉々になった。


その光景を目の当たりにしたラウクン王子とセオシルは、開いた口が塞がる事もなく、満足そうに笑顔を浮かべるミウを見つめていた。


提案をしたオリアンでさえ、驚きを隠せない程だった。


セオシルは壊れた破片を掴むと、本当は偽物じゃないかと疑うが、それが本物だとわかると、ラウクン王子を見ると、小さく頷いた。


ラウクン王子の視線は、セオシルからゆっくりとイサーチェに移った。


その表情は、少し怯えたようにも見えたので、僕はすかさず、


「ラ、ラウクン王子。大丈夫ですから、この『力』は一時的なもので何日かすれば、元に戻るんですよ。ね、ねえ、オリアン…」


いきなり話を振られたオリアンは、「ハッ」と我に返り、


「あ、ああ、本当だ。ラウクン王子、心配することはねえ、すぐにいつものイサーチェに戻る。」


すると、ラウクン王子は安堵の表情を浮かべ、


「ほ、本当か?オリアン。国王より王妃の方が力が強いとなると、格好がつかないからな…ハハ…」


するとオリアンが、


「そいつは俺が保証してやる。誰にも言ってなかったが、タロウが居なくなる前は、タロウもただのガキに戻っていたからな。あの時のタロウなら、見習いの衛兵でも楽に勝てただろうな。そうだろ?タロウ。」


すると、そこに居たオリアン以外の全員が一斉に驚いた様子で僕を見た。

僕は気まずそうに、小さな声で、


「はい…実はそうなんです。

最初は自分自身でも強くなってる事に気が付かなかったんですけど、その力がだんだん弱くなってる事に気付いて、怖くなって…」


僕は下を向きながら、言葉を濁した。するとセオシルが、


「タロウの口から『怖い』という言葉が出るとはな…」


と、初めて僕が口にした『怖い』という言葉に驚いていた。するとオリアンが、


「あたりめえだ、タロウにだって家族が居るんだ、力があったとはいえ、その家族と離れて何ヵ月も1人で、この国の為に働いたんだ。

力が無くなった事に気付いた時のタロウの恐怖はハンパなもんじゃなかっただろうな。

それこそ、素っ裸でライオンの檻の中に放り込まれたみたいなもんだ。」


僕は、オリアンがそこまで理解してくれていた事に改めて感動をした。


「オリアン……「この国の為に働いた」なんてとんでもない。

このユーリセンチ王国を、ここまで豊かにしたのはオリアンやラウクン王子ですよ。僕なんか少しアドバイスをしたぐらいで…」



「アドバイス…」


その時、オリアンの耳がピクリと動いた。と、同時にラウクン王子の笑い声が部屋にこだました。


「アッハハハハハ!タロウ、謙遜けんそんするな。そなたはアドバイスどころか、実際にいつくつも行動に移したではないか。」


「い、いや…あれは、たまたま…」


僕が言葉を濁していると、オリアンの表情が少しづつ険しくなった。


「たまたま…アドバイス……」


オリアンは、1人でブツブツ言っていたかと思うと、いきなり僕に無理矢理の笑顔を作り、


「なあ、タロウよ?今回はいつまでここに居られるんだ?」


笑顔が少しひきつっているのがわかったが、その意味がわからなかった僕は、最初に考えてた通り、


「3日ぐらい居ようと思ってます。その後は帰って行く所があるので…

出来ればラウクン王子とイサーチェの結婚式を見たかったんですけど、『黄金の鎧』も壊れたし、ラウクン王子もその状態ですし…」


すると、ラウクン王子は「ポカン」とした表情をし、


「ん?何を言ってるタロウ、私は明日、結婚式をり行うぞ?」


「ラ!ラウクン王子!?」


裏返った声が部屋に響いた。

その声の主は、側近のセオシルだった。

ラウクン王子が倒れ、伝統である『黄金の鎧』が壊れた今、結婚式どころではないと思っていたのだ。


それはそこに居た全員が思っていたに違いない。

しかしラウクン王子は、


「セオシル、私がこの時をどれ程待ちわびていたか、知らない訳ではないだろう?

私は、今すぐにでも結婚式を挙げたいぐらいだ。それに『黄金の鎧』はもはや不要だ。黄金の鎧を着て出なくても、隣に『タロウ』が立っていてくれるだけで、国民は納得してくれるはず。

この国に『危機』が訪れた時は、必ず『伝説の勇者』が現れるとな。」


するとセオシルも納得したように、


「確かに『タロウ』が隣に居れば、『黄金の鎧』よりも安心ですね。

さらに『伝説の勇者』が立会人だと、周辺諸国へのアピールにもなる。」


すると、オリアンが話に割って入って来た。


「なんだと、セオシル!俺が立会人じゃ役不足ってか?!」


するとセオシルは、「ハッ!」とした表情で、オリアンを見ると、すぐに頭を下げ、


「も!申し訳ありません!!そ、そんなつもりでは!」


「アハハハハハハ、冗談、冗談だ、セオシル。」


オリアンは、慌てるセオシルを笑い飛ばしたあと、ラウクン王子に、


「なあ、ラウクン王子。その結婚式で、ちょっとした余興をやりたいんだがな…」


「余興?」


ラウクン王子は「あの真面目なオリアンが余興を?」と思いながら、


「別に構わないが、何をやるつもりなんだ?」


するとオリアンは、僕をチラッと見て、


「いやな、前々から考えていたんだよ、今度『タロウ』が帰って来たら、『試合』がしたいってな。」


「え?!?」


驚きの声を挙げたのは、僕だけではなかった。部屋にいた全員が声を挙げた。


「オリアンと僕が試合?」そんな事を考えた事も無かった僕は、


「いやいやいや…チ、チョット待って…」


必死に断ろうとする僕に、オリアンは畳み掛けるように、


「い~や、待てねえ、今度お前が来る時は、俺は死んでるかもしれねえからな。

俺は、今まで誰にも負けた事はねえんだ。

あの、お前が『たまたま』帰って来て、ラクに『アドバイス』をした『第2回『タロウ杯』以外ではな。」


その時僕は、さっきオリアンの耳がピクピク動いたのは、僕の言葉に反応したからだと悟った。

しかし、オリアンが『この国最強』と言われても、力が戻った今の僕の敵ではない。その事がわかっていたので、そんな無様なオリアンの姿を国民の前に晒す事は出来ないと思い、なんとか話を誤魔化そうと、


「そ、そういえば、『タロウ杯』は続いているの?オリアンが「負けた事は無い」って言うことは勝ち続けているってことでしょ?」


「それなんだがな…」


口を開いたのはセオシルだった。


「え?セオシル?何かあったの?」


僕がセオシルに尋ねると、今度はオリアンが、


「「何かあったの?」じゃねえよ。お前が現れた『第2回タロウ杯』あの時の盛り上がりは尋常じゃなかっただろ?

おかげで次の年から癖の無くなったセオシルは更に強くなり、まあ、俺にはまだ勝てないがな。

優勝者の決まっている大会程つまらねえもんはねえ。『第4回タロウ杯』なんて最後観客のタメ息で終了だぜ。」


「え?じゃあ、『タロウ杯』はもう開催はしてないの?」


僕はラウクン王子に尋ねた。するとラウクン王子は、


『タロウ杯』は年に一度のお祭りみたいなものだからな、盛り上がらなくなったから無くすのも惜しいと思って、試しに『女性の部』を開催したんだ。

すると大盛況でな、今は『女性の大会』になってしまったんだよ。」


するとオリアンが頭をかきながら、


「これがな、俺達の『タロウ杯』を越える人気の祭りになちまってな…

でも、俺はタロウが帰って来たら…」


僕はオリアンの話を、またも遮り、


「じ、女性だけの大会って、や、やっぱりチェスハが優勝してるの?この国で1番強いし。」


すると今度は、ラウクン王子が、


「いや、その大会の参加者は国の内外を問わない条件なんだ。とは言っても最終的にはチェスハとエミナーが残るんだかな。

でも、最近はダシールやニーサ、若い者も強くなっている。」


すると突然オリアンが、


「おいおい、『リムカ』を忘れて貰っちゃ困るぜ、参加規定に『年齢制限』は無いんだよな?」


するとラウクン王子は驚いて、


「何!?ついに出るのか?大会に?」


オリアンはニヤリと笑い、


「ああ、やっとな。優勝は無理かもしれねえが、いいとこまで行くと思うぜ。」


「リムカ?」


僕は、初めて聞く名前に、ミウの顔を見た。するとミウは首を横に振り、知らないとアピールをした。


僕はオリアンに、


「『リムカ』って?」


するとオリアンは、照れ臭そうに、


「俺の娘だ…手を出すんじょねえぞ。」


と、僕を睨みながら答えた。僕は、オリアンとチェスハが一緒に暮らし始めたということを思い出し、


「オリアンの子供?もしかしてオリアンとチェスハの子供?」


僕が尋ねると、オリアンは「ムッ」とした表情を浮かべ、


「当たり前だろ!変な事言うんじゃねえ!」


と、一喝されてしまった。

するとラウクン王子が心配そうに、


「しかしオリアン、リムカはまだ10才だろ?大会はまだムリじゃないのか?」


「バカヤロウ、リムカは生まれた時から、武器をおもちゃ代りに遊んでたんだぞ、武器の扱いに関しちゃ、その辺の大人より上手いぜ。」


僕は10才にして、武器を大人より上手く扱うリムカに驚き、


「へ~、さすがオリアンとチェスハの子供だね。

女性の大会は武器を使ってもいいってこと?」


僕がオリアンに尋ねると、


「いいや、武器は『タロウ杯』と同じだ。『木刀』もしくは『棍棒』みたいな、木製で手に持つ物だけだ。飛び道具は禁止。なにやら見たこともねえ武器を持っていたヤツも居たな、2本の棒を鎖で繋げた物とか、3本も居たっけ。」


するとラウクン王子も、オリアンの言葉に付け足した。


「あと、タロウ杯には無かったが、『場外負け』も付け足したんだ。チェスハとエミナーは動きが激しいからな、行動範囲を制限しないと、観客席まで乗り込んでしまうんだ…」


僕は、チェスハとエミナーの試合の様子が、安易に想像出来た。


「コホン…」


咳払いをしたのは、部屋の隅にいたセオシルだ。


「オリアン殿、リムカ様には悪いですが、今回こそナカリーが決勝まで行かせてもらいます。」


「え?!」


僕が驚いたのもムリはない、ナカリーといえば、ミウと一緒にメイドをやっていた娘だ。明るい娘だったが、戦いとは無縁のイメージがあったのだ。

僕はセオシルに、


「ナ、ナカリーってあのナカリー?」


セオシルは、僕の問いかけに、


「もちろんだ、他にナカリーはいないだろ?

毎回、いいところまで行くんだけど、やはりチェスハやエミナーさんには及ばない…しかし、今回は違うぞ。フフフ…」


するとオリアンが、


「なんだ、セオシル、自信満々じゃねえか、何か作戦があるのか?まあいい、返り討ちにしてやる。タロウ、お前もな。」


オリアンは、僕を睨みながら言うと、


「じゃあ、俺はみんなに知らせて来る。」


と言い残し、部屋を出ていった。どうやら僕とオリアンの試合は決定事項みたいだ。


僕はラウクン王子に、


「で、でもいきなり「大会」って、みんな知らないし、そもそも「結婚式」の事も知らないのに、明日って大丈夫なの?」


するとラウクン王子は「フフフ」と笑い、


「その事なら大丈夫だ!イサーチェが戻って来たらすぐに行う手筈だったからな、各国の主要人はすでにこの国に来ておる。『大会』の方も同時に開催しようと思っていたからな、

ただ、オリアンとタロウの試合は予想外だった。

見たい者も大勢居るだろうな。

セオシル!伝令を各国に!明日の正午、式を執り行う!」


「ハッ!承知致しました!」


セオシルは一礼をし、部屋を飛び出して行った。


部屋に残された僕とミウは、


「ラウクン王子?今から伝令を出しても、明日には間に合わない人もいるんじゃ…」


するとラウクン王子は、


「お~!そうか、タロウは知らなかったんだな?

窓の外を見てみろ。」


「窓?」


僕とミウが、窓から外を覗くと、黒龍がオリアンを乗せて飛んでいた。

きっと村のみんなに知らせに行ったのだろう。

ふと、気付くと、黒龍の他にも何やら飛んでいる動物が何十匹も居た。僕は、


「鳥?…」


と、思い、よ~く目を凝らすと、


「ド?ドラゴン!? 」


空に舞っていたのは何匹ものドラゴンだった。黒龍ほど大きくないにしろ、確かにドラゴンだ。

さらによく見ると、足に箱のような物をぶら下げている。


「ラ?ラウクン王子?あれは一体?」


するとラウクン王子は、


「あれは黒龍の子供達だ。」


「黒龍の子供!?」


「ああ、タロウが居なくなってしばらくして、黒龍が小さなドラゴンを連れてやって来た。もともとドラゴンはこの国にたくさん居たからな、何処かに仲間が生きていたのかもしれない。

それから、あっという間に増えて、今は『空の馬車』として手伝って貰ってる。いいぞ~空の旅は快適で。

そうだ!イサーチェ!結婚式が終わったら、『空の馬車』に乗って各国を回ろう!」


ラウクン王子はイサーチェを見詰めながら、抱き締めキスをした。


僕とミウは互いに見詰め合うと、


「あ、あの~、まだ僕達が居るんですけど…」


僕は2人に水を指すように言った。


「お!アッハハハハ、そうだった、そうだった!つい嬉しくてな。

タロウ、明日は忙しくなるぞ。今日はゆっくりしていってくれ。城に泊まればよい。部屋はセオシルに用意させる。」


どうやら、僕に逃げ道は無いらしい…僕は覚悟を決め、


「ありがとうございます。ラウクン王子、お言葉に甘えさせて頂きます。」



こうして、この国最大の祭り、『ラウクン王子の結婚式』と『女性だらけの剣技大会(仮)』が始まるのであった。


オマケで『タロウvsオリアン』も……ハァ~…



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