第1話 退魔師の背中

この世界は不穏な空気で覆われている。

妖怪、悪魔、神話生物。

これらは普段人の目を隠しながら悪さをする。俺たちは陰と呼んでいる。

そして、今日も陰の気配が濃い。一つの建物に黒くて冷たい感じがする。

「さてやるか。」

長い髪の毛を求め上げ、神社の奉納刀を竹刀袋にしまう。よしっと自分自身を奮い立たせる。

「お兄ちゃん、いくのね。」

玄関で靴を履いていた途中、茶髪の少女が話しかける。

「あぁ、仕事だ。椿。」

「そっか……あまり無茶はしないでね。」

「大丈夫だって、俺は死なねーよ。」

椿の頭を撫でてやる。彼女は口数は少ないが、よく周りを見てくれている。とても頼りになる妹だ。

「じゃあ、行ってくる」

扉を開け、すぐさま陰の気配がする建物まで一気に走る。

この世界の陰が無くなるまで、この仕事は終わることがない。陰から人々を守らなければならない。

それが神流(かんな)神社を管理している南田一家の宿命だからだ。

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退魔師南田焔の憂鬱 @akmo3616

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