22話 百鬼夜行1
殲滅隊員が住んでいる霊界。ここには多くの人間と妖怪が住んでいる。その中でも、ランキングと言うのが存在する。
ランキングは毎週更新され、ランキング上位者には通常の報酬の他に追加報酬が貰える。そのランキングは人間と妖怪が入り混じっているのに、何故にか上位者には人間が多い。よくある理由としては、使役されている妖怪が倒したのをあたかも自分で倒したかのように報告をするのがよくあることなのだが、それはここ最近ではかなり減った。
それは、人間が武器を使いだしたからだ。今まで、人間は妖怪を倒すすべがなかったが素材加工の技術が発達したため、自分が使役している妖怪から素材を入手し武器を作る者が増えた。
「あ~眠い」
霊界の一室にあるベッドでゴロゴロしている1人の女がいた。その女は鼠色のスエットに鼠色のスポーツブラを着て、パソコンをいじっていた。一目みれば、ニートと言われていても過言ではないような姿だった。
その女の名は「百鬼夜行」。七五三田が使役している百鬼夜行の元締めである。普段人前に出るときは魔法で身体を包み正体を隠している。人によっては男に見えたり女に見えたり、巨人に見えたり異形に見えたりする。このことから「数多の仮面」と呼ばれている。これは日當瀬とか言う人間の女がつけた名前だ。
たしか、あの人も主と同じ高校生だったような気がする。気のせいだったかな。気のせいじゃなければ、桂樹高校とか言う高校に所属していたような。学年は知らないけど……
私はパソコンの時計を確認すると、午後5時を示していた。
「もう、こんな時間か~そろそろ出かける準備でもするか~」
パソコンを閉じ、ベッドから降りると着ていたスエットを脱ぎ捨てて黒いジャージに着なおす。そして、上も黒のジャージを着て部屋を後にする。
私はこれから毎日行っている夜の散歩に出かける。散歩って言っても夜の闇に紛れて歩くだけなんだけど……それに、私には重要なミッションがある。それは、ランキング上位者にのみ配布されているソナーを使って野良妖怪の殲滅をすることだ。特に殲滅数は決まっていないが、殲滅した数によって報酬が変わる仕組みだが、私は5体まで殲滅し後は見逃すか、可愛い子は眷属にしている。
最近眷属にしたのは、雪女と猫又の2人。この2人だけではないが、幾つかの妖怪は量産型と言っては悪いが、かなりの数がいる。今回手に入れた雪女は引きこもりで、猫又は綺麗好きと言う性格だったため、この2人がいれば暮らしには困らないパーフェクトな収穫だったと今でもうれしく思っている。その2人は他の部屋にいるのだろう。
私は霊廟を抜け現世に降りる。そこは、多くの人が帰宅するために帰路についていたり、飲みにそこら辺の飲食店に急いでいたりとせわしなかった。
「さてと、まずは」
私は人目のつかない路地裏に入ると、体を能力で包み暗闇と同化する。同化することによって影があるところでしか行動できないが、誰にもどんな妖怪にも気づかれずに移動することが出来る。
完全に日が落ちるまで影の中でスマホをいじくる。スマホではニュースサイトを見ている。妖怪の私はこの世界の情勢とかは関係ないが、エンタメは興味がある。誰が結婚しただの離婚しただの見るのが楽しいからだ。
私はとある記事が気になった。
「高校で火災。20人が負傷」と言う記事だった。この規模の火災は人の手によって発生するものではない。あまりにも規模が大きすぎるからだ。そこで、私は妖怪の仕業だと確信した。
「そこまで強くはないか……どんな妖怪だろ」
私はスマホの画面から目を離すと、辺りは暗くなっていた。
「そろそろ動きますか……」
私は影の中を動く。速さとしては、自分の足で歩くよりかなり早い。例えるなら、ギアが5段階の自転車に乗ったとする。その自転車でギア5の状態で全力で漕いだ時と同じくらいだ。
影の中を進んでいるため、遮蔽物もなく車に轢かれることもなく進める。そのため、私は生身のまま外をあまり歩かなくなった。コンビニに行くときもうまく影に入り、帰りも袋ごと影に入れて帰る。あまり足を使わないので、時たま使い方を忘れ派手に転ぶ時があるが、基本的には傷だらけになる。転んだだけなのに車に轢かれるた様な悲惨なことになることがほとんどだ。そして、本気泣きをする。
私は、人間で言えば20歳を超えているが転べば泣くし、設置物に足の指をぶつけては泣くし、主から叱られたら泣くから、百鬼夜行の元締めとされる私は中身が小学生と何度も言われる。その度に相手を泣くまでいや、泣いても攻撃をする。
それなのに、何度も小学生と言ってくる奴がいる。そいつは殲滅ランキングトップの奴だ。名前は確か……源元帥とか言っただろうか?あいつは座敷童を使役していた。
座敷童とは岩手県を中心に存在する妖怪で、子供の姿をしているらしい。私は1度会ったことがあるが、めっちゃくちゃ可愛いかった。妹にしたいくらい可愛いかった。だけど、口を開けば棘を感じる言葉ばっかり言う。私は「何?この人、堕落牛?」なんて言われた。泣きそうだった。
その時、私の顔を見た座敷童の主は「なんか、ごめんな。こいつも悪気があったわけじゃないんだ。許してやってくれ。ほら、これをやるからさ」そんなことを言いながら源は私に1万円を出してきた。
「わ、わかった……ありがとう」私は貰った1万円をスエットのポケットに入れて自分の部屋に行った。
「ご主人様……私はあの人を傷つけてしまったのですか?」
「そうだね……もし、座敷ちゃんが気になるなら後で謝ってきたら?」
「私一人に?このか弱い体をした5歳児に?」
「う、嘘だよ~ちゃんと僕も付いて行くからさ」
そう言うと、座敷童は少し微笑んだ。
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