外伝2話 転生者の姉妹

 百鬼夜行メンバーの笙と五徳は実は姉妹だ。このことは主である七五三田印は知らない。七五三田印が知ったところで、今までの生活が180度変わるわけでも無いし、ドラマみたいに離れ離れになるわけでも無い。いつも通りの生活が存在する。

 私、笙は参考書の問題を解きながら思った。

 「はぁ~五徳ったら東雲蒼の家に入り浸ってそんなにあの男がいいのかしら?」

 私は先日、東雲家に不法侵入したのを東雲蒼に見つかり排除したはずが、失敗し天邪鬼に捕縛された。今でもあのことを思い出すだけで頭にくる。

 「なんで!冗談言っただけなのに痴女扱いされるの!いきなり目の前で服を脱いできたら、そりゃああんな言葉も出るわよ!まぁ、欲求不満というのもあるけど……」

 私たち妖怪には人間と同じように三大欲求を持っているのがいる。その者は全妖怪の中でも一握りしかいない。例えば、天邪鬼などの鬼。鬼は人に最も近い種族からだ。そして、私のような転生者ぐらいである。

 転生者とは、過去に生きた人間が転生先を人間ではなく、妖怪に変えた者のことを言う。この転生者になるには条件がある。それは、死者であること。前世で1つしか悪いことをしてないこと。そして、もう一度生きたいと思うことの3つ。これによって、多くの死者は転生することができない。そして、転生者のメリットとしては、過去の記憶が引き継げることのみ。これは、人によっては必要ないことかもしれないが、主によっては必要になることがある。現にこの私だって勉強で役立っている。

 このことは、私のマスターは知らない。マスターは私たちのことを本当に知らなすぎる。白布こと異形だって、白い布を取ったら猛毒の触手が出てきて相手を殺すことだって出来る。猫又は夜になれば、戦闘能力は昼間の10倍になるというのに、マスターは上手く活用出来ていない。そのせいで、殲滅部隊の中でもかなり下の方にいる。それなのに、マスターは優々と生活を送っている。他の殲滅部隊のメンバーからは「貧弱夜行」と言われている。悔しくないのだろうか?私は悔しい。

 「あ~!もう!腹立ってきた!スイーツ食べに行こ!」

 私は私服に着替え、霊界を出る。今回、私は白のワンピースに白のスニーカーを着ている。あまり、白色の服は着ないけど、今日は日差しがキツイとニュースで言っていた。

 基本的に黒色は太陽の光を吸収するため、夏の日は出来るだけ着るのを避けている。暑いからね。

 霊界と現世をつなぐ道、霊廟を抜けると見慣れた風景が飛び込んできた。

 「ふぅ~ちゃんと転移できた~!」

 私が転移した先は五徳が今住んでいる東雲宅の目の前。目的は五徳を誘うためだ。

 インターホンを鳴らすと、すぐに東雲蒼が出てきた。

 「何の用だ?」

 「五徳はいる?」

 「五徳ちゃん?少し、待ってて」

 蒼はそう言うと、玄関を閉めた。


 2分後……

 「どうしたの?笙ちゃん」

 五徳はそう言いながら玄関の扉を開けてきた。

 「いきなりで悪いけど、今から出かけない?」

 「わかった。少し待ってて。……その前に笙ちゃん。翼出ててる」

 「へ?」

 私は首を曲げ背中を見ると、真っ黒い翼が出ていた。

 「クソ!なんで、あいつは教えてくれなかったのよ!」

 私は東雲蒼が翼が出ているなんて教えてくれなかったことに悪態をつきながら翼を消す。

 翼は能力で出しているだけなので、消すも出すも思いのままだったりする。そして、羽は加工すれば、短剣にもなるほどの硬さと鋭さを持っている。

 しばらくすると、五徳が出てきた。五徳の服装は、私と同じ服だった。つまり、双子コーデというやつだった。

 「ちゃんと目、消した?」

 「消したよ。笙ちゃんとは違って出しっぱなしなんてないよ~」

 五徳は翼の代わりに3つ目の目を出している。転生者には、1つだけ自分が思う装備を顕現させていいことになっている。

 私の翼はさっきも言ったように武器になるが、五徳は戦闘時、錫杖の他に札を使う。札と聞くと、神社で買えるお札のことを想像するだろう。形はあっているのだが、五徳のは戦闘向きの札を使う。例えば札から火が出たり、生物を召喚したり色々出来る。それらを使うには、相手の属性と種族を考えないと札の効果を引き出せないのを五徳は3つ目の目で属性と種族を見て対処することが出来る。そのため、チーム戦の時は指揮官として戦ったりすることがある。百鬼夜行のメンバーからは「神の目」と呼ばれている。因みに私は「蹴堕天」と呼ばれている。これらの二つ名は九尾を使役している日當瀬唯(ひとせゆい)さんがつけてくれた。日當瀬さんは数少ない女性メンバーで時たま遊ぶことがある。

 

 「それじゃあ、行こっか」

 「笙ちゃん。どこ行くの?」

 「まだ、話していなかったね。これから、スイーツを食べに行くよ!」

 それを聞いた途端、五徳は慌て始めた。

 「こ、これからってもう2時だよ!?今から行くにしても返って来るのが遅くなっちゃうよ!」

 「大丈夫だよ。……五徳。私、いつどこのスイーツを食べに行くって言ったけ?」

 私は誰にも、どこのスイーツを食べに行くか言って無いのに、あたかも五徳は行き先を知っているかのように言っていた。

 (まさか、いつの間にか心を読む能力でも手に入れたの?だと、するとすごいとしか言えない。後付けの能力なんて習得するのが大変で多くの妖怪が諦めるというのに、東雲蒼に会うためだけに必死こいて手に入れたんだね)

 「え……い、いや~なんとなく?」

 (当たり前の反応よね。例え姉妹と言えど言えないことの1つや2つ、あるものよ。五徳は私に能力を習得したことを言うと嫉妬に狂って蹴り殺されるとでも思っているのかな?)

 (言えないよ!笙ちゃんと言えど、私が能力を習得したなんて言ったら、錫杖でマスターの為に残してきた処女を奪うつもりだわ。そんなことが起きたら私は笙ちゃんの処女いえ、後ろの処女まで奪わないといけなくなる。バレないように祈っておこう)

 私はそんな最悪な事態にならないように能力について聞くのをやめた。私は正式に行き先を告げる。

 「これから、東京に行ってスイーツを食べよう!」

 「おー!」

 すでに行き先を知っていながらもノッてくれる五徳はとてもいい子だった。

 「笙ちゃん。詳しい場所は決まっているの?」

 「……決まってないよ。だから、適当なホテルにでも入ったらバイキングくらいしてるでしょ。多分」

 「そ、そうだね」

 (あ~不安だ~この行き当たりばったり感。昔から変わっていないよ。笙ちゃん)

 「どうやって行くの?」

 五徳がそう聞いてきた。私には今回、この為だけに買っておいたアイテムをカバンから取り出す。

 「ふふふ。よく、聞いてくれた!これは自分が行きたいところに瞬間移動できるアイテム。名付けて『キ〇ラのつ〇さ』だ!」

 カバンから、鳥の羽見たいのを取り出す。

 「笙ちゃん。ゲームから名前をパクるのはよくないよ」

 「じゃ、じゃあ『ル〇ラの素』でどうかな?」

 「ダメだよ!ていうか、素って何?あの呪文の素って名前からしてまだ使えないよ!せめて、使える状態の名前にして!」

 「う~ん。じゃあ『マジヤバい羽』」

 「ダメ!その名前だと、何の効果があるか分からない闇鍋より怖い闇アイテムだよ!それ」

 ことごとく拒否される私。なんか、いい名前が思いつかない。

 「よし、これで最後にするよ。『瞬羽』……どう?」

 「……いいと思う。一瞬、馬かと思ったけど物が物だし大丈夫だよ」

 五徳からのOKが出たので私たちは肩に1枚それを引っ付けると白い羽が生えて、姿が透明になった。

 「あれ?どこにいるの?五徳」

 「どこ?笙ちゃん」

 目の前にいるはずなのに暗闇にいるみたいに迷子状態になってしまった。私は手をブンブン振っていると、何かに当たった。

 (?)

 私はそれを掴んで引き寄せると、胸のあたりに大きくて柔らかい2つの物体が当たった。

 「五徳?」

 「笙ちゃん?」

 お互い見えないまま目当ての相手だと思い、身体だと思われる所を触ると時折「あっ」やら「ひゃん」やら可愛い声が聞こえた。そしてその声には聞き覚えがあった。

 「この身体は五徳か。にしてもデカいな」

 私は胸だと思われるところを揉むとやはり「あっ」やら「そこっだ、め……」やら興奮してきてしまう声を上げる五徳。

 (ムラムラしてくる。けど、姉妹でヤルなんて近親相姦もいいところだね)

 私はすぐに胸から手を離し、代わりに手を握ってから一言。

 「東京」

 そう言うと、肩に生えた白い翼は羽ばたき、私たちを飛ばした。

 

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