23話 百鬼夜行2と恋人

 私が住宅街を移動していると、ごみ収集所に犬がいることに気付いた。

 (あんな所で何をしているんだろう?今どき野犬なんているわけないし……迷子かな?)

 その犬は何かを察知したのか唸り始めた。その唸り声は私にはしっかり人の声に聞こえた。

 「そこに誰かいるのか!いるなら出てこい!私が相手してやる」

 私はその声を聞いた瞬間、本能的に危険を察知し近くにあった家の陰に隠れる。

 隠れた瞬間、犬は人の形になり辺りを見渡し始めた。その人は身長170ぐらいの男性だった。そして、犬から変身したばかりだと言うのにしっかり服を着ていた。

 (こういうのって大体、裸何だけどな~あの人顔も良いしスタイルも良い。なら、裸も見たかったな~)

 私がそんな下の妄想をしていると一枚の紙が目の前に現れた。その紙は長方形でよくわからない文字が書かれていた。

 (なんか……どこかで見た気がする)

 私は記憶を探っていると、ごみ収集所から「真の姿を現せ!オン・エキアナシ・ソワカ!」よ言う声が聞こえたかと思ったら、目の前の紙が発光し始め光によって影が無くなった私は影から放出された。

 (あれは、札だったのか……じゃあ、あの人は陰陽師!?)

 私は目を閉じながら札を陰陽師に投げつけると、陰陽師は手を複雑にからめ「生あるものは止まれ!」と言うと、私の身体は身動き出来なくなった。

 「お前は、誰だ……」

 「私は、狗神。お前の名は何だ?」

 「……百鬼夜行」

 私が名前を口にすると、狗神は驚いた表情をしたがすぐに戻し、懐から一枚の札を取り出すと私の額に貼る。

 「何をする気?」

 「お前には少しの間消えててもらうよ。オン・エキアソシ・ソワカ」

 狗神が術を唱えると私は札の中に吸い込まれた。

 「所詮は妖怪か……名のある妖怪でも私の前では無力だな」

 狗神は百鬼夜行を封印した札を手にしたまま夜の闇に溶けていった。この戦闘はたった5分だった。


 時間を巻き戻すこと2時間。夜の9時。僕、東雲蒼は幼馴染の夕里の部屋を訪れていた。

 「お邪魔します」

 「そこらへんで座ってて。私、お茶持ってくるから」

 夕里はそう言うと、勢いよく部屋を飛び出て1階に行った。

 幼馴染と言えど、夕里は僕と同じ高校生だから親にも見せられない物があるかもしれない。そんな物を僕は探そうとベッドの下を覗こうとした瞬間、階段を上がってくる足音が聞こえ即座に座り直すとお茶をお盆に乗せた夕里が来た。

 夕里はお茶を置いて僕の前に座る。座った夕里は顔を赤くしながら僕を見つめる。

 「ど、どうしたんだ?顔が赤いぞ」

 「そ、そそそそうかな?」

 「で、どうして僕は夕里に呼び出されたんだ?」

 僕が夕里に聞くと、さらに顔を赤くして黙ってしまった。

 (こういう雰囲気って漫画だと、告白されるんだよな……そうだよな。そりゃあ顔も赤くするなぁ。まぁ、夕里がちゃんと言えるまで待つか……)

 僕はお茶を飲み夕里を見ると手がプルプル震えていた。かなり緊張しているらしい。その緊張が僕にも移って来てさっきから心臓の鼓動が早くなっている。きっと、僕よりも夕里の鼓動の方が早いのだろう。

 

 夕里が黙ってから1時間が経過した時、夕里がやっと口を開けた。

 「ね、ねえ蒼。私はどうかな?」

 (え、えええええ!いきなりハードル高くない!?「今日、何の日」に並んで答えるのが難しい質問をここに入れるってなかなかだな。ここは褒めるべきだと僕は思う!)

 「そ、そうだな……可愛いと思うし、優しいし良い奴だと思う」

 僕がそう率直に言うと夕里は何かを決めたのか僕を顔を見る。

 「あ、蒼。私……蒼のことが好きです!つ、付き合ってください!」

 (やっぱりかーーー!やっぱり告白か。分かっていたけど、すごいな。これだけ本気なんだ、僕も本心を言おう)

 「僕は、夕里を守り切れるか分からないし危険な目にも合わせちゃうかもしれないけど、夕里がそれでも良いなら付き合うよ」

 「ほ、ホントに?」

 「ああ、本当だ。今から僕と夕里は恋人だよ」

 僕がそう言うと、夕里の目から涙が流れてきた。これが、歓喜の涙なんだろう。

 「あ、ありがとう……もしかしたら、断れるんじゃないかと心配したけど、よかったぁ~」

 夕里はそう言うと、僕に抱き着き首に手をまわしてきた。

 (この状態は、うん。どうすればいいんだ!僕も手を回していいのか?あぁーもうどうにでもなーれー)

 僕は夕里の体に手を回すと夕里がさらに密着してきた。

 「ゆ、夕里?」

 「喋らないで」

 夕里はそのままの状態固まっているかと思ったら、僕を押し倒してきた。僕の後ろは幸い何も無かったから頭を打たなかった、そして、夕里は僕に抱き着いたまま倒れたためお互いの顔がとても近い位置にあった。

 (夕里の顔が近い……いい匂いがする)

 僕がそんなことを考えていると夕里は僕の顔を見て微笑んだと思った瞬間、口元に柔らかい感触がした。

 その感触に僕が戸惑っていると、夕里は僕から顔を離すと抱き着くのを止めて離れた。

 「ねぇ、蒼。今日はありがとうね。でも、本当にいいの?」

 「あたりまえだ。僕は夕里が良いから付き合うことにしたんだ。これからはよろしく」

 「こちらこそ」

 

 僕史の中で忘れることはない1日になった。およそ、このことを忘れた時は僕が人じゃなくなった時だろう。

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