19話 重傷と親友

 五徳が家に泊まりに来たその夜。僕の部屋は妖怪3人によって占拠されていた。そのため、僕はリビングでテレビを見ていた。因みに、まだ両親は帰ってきていない。もう、9時を過ぎているというのに……まぁ、それも仕方ないことだ。母親は病院で看護師をしいて、父親は単身赴任で海外に行っている。何処にいるかは知らない。

 僕がテレビを見ていると、上から誰かが下りてきた。

 「ねぇ、従僕。五徳ちゃんは何処で寝ればいい?」

 「そうだなぁ……僕が使っていた布団を使わせて」

 「うん。分かったよ。じゃ、おやすみ~」

 「おやすみ」

 天邪鬼はそう言うとすぐに2階に行ってしまった。どこか楽しそうだった。

 僕は再びテレビを見ると、ワイドショーをやっていた。どこかのタレントが不倫したらしい。正直どうでもいい。僕はチャンネルを変えるが特に面白いのがやっていなかった。

 「はぁーどうしたものか……1日だとはいえ、自宅に妖怪が3人もいるっていう異様さ、どうしたものかね」

 独り言の内容が明らかに疲れていた。

 僕はテレビを消し、自室に行くとベッドの上に3人がひしめき合っていた。

 「五徳ちゃんって布団で寝ていなかったけ?じゃあ、布団使おっかな?」

 僕は五徳ちゃんが使うはずだった布団に入り寝ることにした。


 深夜、僕は寝がえりがうてないことに気づいて目を覚ました。目を覚ますと目の前に金髪が見えた。

 「五徳……ちゃん?」

 僕が名前を呼ぶが起きる様子無し。さっきまでは気づかなかったけど、五徳ちゃんって結構胸がある。キャットに引き続いて百鬼夜行の妖怪は巨乳が多いいのだろうか?少し気になる。

 そんなことを思っても何も起こらないし、物事が進むことはない。僕は五徳の肩を揺らして起こそうとするが、起きる気配がない。

 「五徳ちゃん。起きて」

 五徳ちゃんに呼びかけるが、なぜにか天邪鬼が起きた。

 「どうしたの?……従僕」

 天邪鬼はベッドからこちらを見ながら話す。が、寝ぼけているようで僕の状況に気づいていない。

 「天邪鬼。五徳ちゃんを起こしてほしい」

 「五徳ちゃん?ああ、本当だ。五徳ちゃん、起きて」

 天邪鬼はそう言いながら五徳ちゃんの背中を殴っている。およそ、力加減は出来ていないんだろう。叩いた時の力が僕の脇腹に伝わってきている。

 「痛い。あ、天邪鬼、力を落としてくれ。五徳ちゃんが死んじゃうし、僕の脇腹も逝く」

 「あ……うん。そうだね……」

 そう言うと、天邪鬼は五徳ちゃんを叩く力を強めた。

 「ゴハッ!な、なんで……」

 僕は天邪鬼の叩きによる衝撃で気を失った。

 

 翌日……

 「う、う~ん。もう起きないと……お腹周りが痛い。五徳ちゃんは起きたみたいだな」

 僕の上から五徳ちゃんがいなくなっていた。ベッドからまだ寝息が聞こえた。様子を見ようと思い、体を起こそうとした瞬間、腹に激痛が走った。

 「くっ……い、いてー」

 服を捲ってみると、右の脇腹が真っ青になっていた。

 「うわっ……なにこれ。さすが鬼。人1人挟んでいたのにこんなにもダメージがくるなんて、すごいな」

 驚きより感心の方が大きく出てしまった。でも、本当にすごい。だけど、直に叩かれていた五徳ちゃんは、こんな痣は擦り傷程度だろう。腹部が消し飛んでなきゃいいんだけど……

 僕はそんなことを思いながらベッドの淵につかまりながらゆっくり立ち上がる。

 ベッドを見ると、寝息を立てていたのはキャットだった。天邪鬼の寝相が悪いのかキャットの方が悪いのか分からないが、タオルケットがベッドから落ちかけていた。僕はタオルケットをキャットにかけてリビングに行く。

 

 リビングでは天邪鬼と五徳ちゃんが仲良くソファーに座ってテレビを見ていた。

 「おはよう。二人とも」

 「ん。おはよう、従僕。……どうしたんだ?そんな怖い顔をして」

 「天邪鬼、夜に五徳ちゃんを起こすように指示したがその時の記憶はあるか?」

 「ん?そんなことあったけ?大体、僕は従僕と深夜に話なんてしてないよ」

 どうやら、覚えてないようだ。僕は次に五徳ちゃんに質問する。

 「五徳ちゃん。いきなりで悪いけど服を脱いでくれる?」

 「え?」

 天邪鬼が驚く一方、五徳ちゃんはウェルカムだった。

 五徳ちゃんは着ていたTシャツを脱ごうとした時、天邪鬼がすごいスピードで手を掴んだ。

 「五徳ちゃん?なんで、脱ごうとしてるの?従僕の命令だからだってこれは聞いちゃだめだよ」

 「そう?ご主人様(マスター)の命令は従わないと。しかも、私の体を求めているんですよ!それは、脱がずにはいられません!」

 「従僕の毒に侵されてしまった。これは、従僕がいけないからここで消すしか……」

 天邪鬼がそう言いながら僕に近づいてくる。

 「冗談だ、冗談だよ。本当は、背中を見せて欲しかったんだ」

 「本当に?」

 天邪鬼の目が狂いに満ちている。これって、1つでも選択間違えたら死ぬやつじゃない?これ。

 「ああ、本当だ。お前が叩いたのは背中だし。嘘だと思うなら見て見ろ」

 僕がそう言うと天邪鬼はすぐに五徳ちゃんのTシャツを捲り背中を見る。すると、見る見るうちに顔色が変わっていった。

 「五徳ちゃん。ごめんなさい。痛かったよね」

 「痛かったけど、ご主人様(マスター)と密着してたからそこまでじゃなから、大丈夫だよ。天ちゃん」

 本気で謝っている天邪鬼に対しあっけらかんと答える五徳ちゃん。こういうの見てると、心が安らぐ。

 その後、2人はまたテレビを見始めた。

 「仲が良いのはいいことだな」

 僕が独り言を言うと、電話が鳴った。こんな朝から誰だろう?

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