12話 妖怪戦とかまいたち
まず僕達は三階にある二年生の催しから見ることにした。
二年生の催し物はお菓子を売ることがほとんどだ。
天邪鬼とキャットを見るとまるで遊園地に来た小学生のような顔をしていた。
「まず、何処から行きたい?」
「僕は一組にある『グミ』っ言うのを食べてみたい!」
「私はその横の『クッキー』を食べたいニャン」
「わかった。順番に行くから!最初は一組からな」
僕は天邪鬼に急かせられながら一組に行く。
一組で売っているグミ『果物グミ』・『クーロン』・『ハルビー』の三種類の中から一種類を選び買う。
僕は果物グミ、天邪鬼はハルビ―そして、キャットはクーロンを選び僕は四百五十円を払う。
早速、グミを食べ始める天邪鬼たち。僕はそこまでお菓子に詳しい訳ではないから、クーロンとハルビーがどのようなグミなのか気になる。
二人の顔を見ると、美味しいとかまずいとかの味の感想が出てくるかと思ったら、驚いた顔をしただけで何も言わない。
僕はどうしたのか聞こうとしたら、やっと口を開いた。
「このグミとか言うやつは、少し硬いけど美味しい」
「私としたら、もう少し硬くてもいいかニャ?」
口を開いたかと思ったら、まさかの味の感想では無く硬さの感想を言われた。僕が聞きたいのは味の感想だよ。どんな人でも最初は味の感想を述べてから詳しく伝えるのに、この妖怪二人は僕の常識の斜め上を行くことを言うなんて、驚いた。
「なぁ、味はどんな感じなんだ?」
「味?普通だけど?」
違うよ!僕が聞いたのは何味かってことだよ!なんだよ『普通』ってわからないよ!『ぶどう』とか『りんご』とかあるだろ!
僕は諦めハルビ―とクーロンを一つずつ貰い食べる。
ハルビ―は明るい黄色をしていて、サクランボ味かと思ったらリンゴ味だった。
味の質としては、極端に甘いとかでは無く、甘すぎるわけでは無いし甘くなさすぎるわけでも無い、なんと言ったらいいんだろうか、丁度いい?という感じだ。
そして、クーロンの方はブドウ味だったんだけど硬かった。コンビニやスーパーで売っているグミとは全く違う硬さだった。輸入品だな。
僕は思い出した、さっきキャットは「もう少し硬くてもいいかニャ?」と言っていたが、キャットのあごはどんな力を持っているんだよ。噛まれたら、腕なんて簡単に千切れてしまいそうだ。
ちなみに、僕が食べている『果物グミ』は桃味でさっき食べたグミよりかなり柔らかい。僕はこの硬さに親近感を覚え始めた気がした。
僕たちはキャットが行きたがっていた二組が開いているクッキー屋に行くことにした。
クッキー屋はグミ屋とは違ってあんまり人が入っていなかった。
僕はそんなことを気にしないで教室に入って行くと、教室の奥の方に設けられたイートインスペースでさっき見た女の子と委員長の酒匂鈴が座っていた。
女の子がこちらに気づくと近づいてきた。
「また、会ったなぁ。ちと話がある、来てほしい」
女の子はそう言うと、委員長の方に行ってしまった。僕たちは付いていくと、委員長がこっちを向き無機質を見るかのような目でしゃべりだした。
「東雲さんも可愛いのを持っているんですね。私の物にしたいなぁ、ダメ?」
話し方からしていつもの委員長じゃない。いつもはちゃんと物事を話すのに、なんかねちっこい話し方をしている。
「どうしたんだ?なんかいつもと違うぞ」
「そうかなぁ?気のせいだよ。さぁ、イスにでも座ったらぁ?」
僕が座ろうとしたら……
「ダメだ!」
天邪鬼がそう叫んだ瞬間、天邪鬼の身の丈以上もある大剣が出現し、キャットは手から鋭い爪を出している。
「従僕、こいつは人間じゃない。妖怪だ。名前は無からないけど」
天邪鬼が女の子の正体を看破すると、女の子は身の丈と同じぐらいの剣を出現させる。
「よく分かったなぁ。儂の名は酒吞童子(しゅてんどうじ)じゃ。以後よろしゅうな」
「ふん。童子風情が僕に勝てるとでも?いくよ!」
天邪鬼の一言で開戦した。
この戦いは僕たちの方が途中まで有利だった。が、酒吞童子がひょうたんみたいな物の蓋を開けたと同時にキャットの動きがおかしくなった。時折、酒吞童子から天邪鬼に向けて攻撃をしたりと、不可解の行動をとるようになった。
「私に何をしたニャ……」
「儂の武器はこの剣に加えてもう一つある。それはこの酒便じゃ。この中の酒の匂いを嗅ぐと一時的じゃが、儂の奴隷に出来る。お前さんはそれの影響を受けておるのじゃ」
それが判明したからには、迂闊には近づけない。天邪鬼が距離を取って酒吞童子の様子を見ていると、僕が見慣れたやつが現れた。
「こいつは、異形!だとすると、七五三田もこっちに向かってきているのか」
異形は酒吞童子に向かって体当たりをするが躱されてしまうが、異形は布から手を伸ばし酒吞童子の足を掴むと、壁に向かって投げた。
投げられた酒吞童子は壁から動かなくなった。
「何じゃ!どうなっている?」
酒吞童子の疑問に遅れてきた七五三田が答えた。
「教えてやるよ。お前が張り付いている理由は簡単だ腕を見ろ」
七五三田の言うとおりに腕を見ると、手首の部分に黄緑色をした円盤が装着され、それが壁に刺さっていた。
「その枷はこいつが作った」
すると、突如教室に風が吹いたかと思ったら中に浮いた子供みたいのがいた。
「こいつは『かまいたち』風の刃でなんでも斬る」
「やってみるがよい。所詮は人間が支持するものじゃから、こんなか弱そうな女子(おなご)は斬れないじゃろ」
「貴様はもう少し人間について学んだ方がいいな」
七五三田がそう言うと、一瞬にして酒吞童子の体に多数の傷ができ、血が流れる。
「あぁぁぁぁ。い、痛い。痛いよ。ごめんなさい!許して許して許して!」
「七五三田、やり過ぎだ。やめろ」
「何だ?あいつに同情するのかお前は甘……」
僕は七五三田が良い終わる前に顔をぶん殴った。
それに驚いたのはさっきまで風の刃を受け続けた酒吞童子だった。
「七五三田!相手が妖怪だからってやり過ぎだろ!酒吞童子はイタズラでやっただけで、それに乗った僕たちも悪い。だから、殲滅は止めてくれ。後は僕がやるから」
「勝手にしろ。行くぞ異形、かまいたち」
そう言うと七五三田は教室から出ていく。
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