13話 約束と結界
七五三田が教室を飛び出した後、僕はかまいたちの攻撃によっていたる所から出血し涙で顔がぐしゃぐしゃになっている酒吞童子に近づく。
「なぁ、大丈夫か?」
「そんなわけあるように見えるん?見えへんやろ。で、あんたは儂をどうするつもりなんや?」
「僕と約束してくれないか?これは強制だ。約束できないなら、お前は殲滅される。さっきの奴にな」
酒吞童子は殲滅と聞いた瞬間、即答してきた。
「する!今すぐする!」
慌てているのか口調が崩れている。もしかして、古めかしい口調は演技なのか?今はおいておこう……
「僕からの約束としては1つ。二度と一般人に手を出さないこと。それだけだ。もし、お前の主でも解決できないことが有ったら、遠慮なく聞いてくれ。僕の家はお前の主が知っているだろう。多分」
「うむ。了解した。これからよろしく頼む。天邪鬼の従僕よ」
これにて、僕と酒吞童子は約束で結ばれた。
約束を結び終わった瞬間に、酒吞童子の主である僕のクラス委員長もとい酒匂鈴(さかわりん)が目覚めた。
彼女は酒吞童子の酒の能力で気絶していたせいか、いまだに意識がハッキリとしていなかった。
「おお。起きたか。主様。いきなりで悪いのじゃが、もう一回寝てもらう」
酒吞童子はそう言って、酒瓶の栓を開けると委員長に嗅がせる。すると、すぐに委員長は眠るように倒れた。振り返って酒吞童子。
「悪いのじゃが、元通りに戻せないのかの?」
「出来るよ。天邪鬼。お願いできるかな?」
「わかったよ……」
めんどくさそうに天邪鬼が前に出ると、右手を突き出し何か言う。すると、荒れていた教室は綺麗な状態に戻った。
「戻したよ。さて、従僕君。さっさと逃げるよ。野次馬が群がってきている」
天邪鬼が言ってやっと気づいた。教室の外に騒ぎを聞きつけたのか人が集まって来ていた。僕は委員長を担いで急いで教室を飛び出し、裏庭に走る。幸い裏庭には人がいなかった。
「さて、後はどうしようか?僕からすると、余り3人には長いして欲しくない。今回の騒ぎを受けて酒吞童子は殲滅対象の中でも危険な所にいると思う。だから、暫くは静かにしておいて欲しい。そして、キャットはどうする?」
僕が聞いてみると、キャットは俯いてしまった。まぁ、あれを見た後だからなしょうがない。
「私、印君の所に戻りたく無いニャ……印君があの目をすると、私たち『百鬼夜行』に対する態度も変わるから嫌だニャ……」
「ならさ、僕の所に来なよ。天邪鬼はどう?」
「いいんじゃない?僕はOKだよ~」
「じゃあ、決まりだな。七五三田の方には僕からメールしておく。さっき話したように今日は帰ってほしい」
僕は天邪鬼たちを見送った後、委員長を起こし自分たちの教室に戻ると七五三田がいた。教室の中はまだお昼前だというのに人がいない。
「七五三田、結界を張ったのか?」
「そうだ。お前らに話がある。なに、硬くならなくていい。まぁ、座れよ」」
僕たちは七五三田、に促されてイスに着席する。
着席早々、七五三田が委員長に聞きだした。
「なぁ、委員長。お前の酒吞童子。どこで会った?」
「たしか、本厚木の路地裏で会いました」
その答えに七五三田は考えたようにしているかと思ったら何かをいじっていた。
「七五三田、何をいじっているんだ?」
「ああ、これか?これは有害認定を受けてる妖怪の居場所を知る機械だ」
そう言うと、スマホみたいな機械を見せてきた。
その機械には学校周辺の地図が表示され、そこにはいくつかの丸が見えた。その中に3つ固まった丸が僕の家に近づいているのを見つけた。その時、気付いた。七五三田がしたいことに。
「お前、まさか!」
「そのまさかさ」
七五三田の返答に僕は廊下を駆け抜け自分の家に向かって走っていた。
住宅街を走っていると、前から急な突風が吹き僕は尻もちをついた。
強打した尻を擦りながら前を見ると、かまいたちが空を飛び僕の家の方向に進んでいたの発見し、僕はまた走り出す。次は転ばないように。
僕が家に着くと玄関のカギは開いていた。僕は嫌な予感がしながら入ると、リビングで天邪鬼・キャット・酒吞童子が仲良くトランプで遊んでいた。
それを見た僕は緊張が解けたのか壁に寄り掛かると、こちらに気づいたのか天邪鬼が声を掛ける。
「どうしたの?まだ、学園祭は続いているのに」
「怪我はないか?」
「ん?怪我はないよ。てか、どうしたの?」
「酒吞童子が狙われている」
その一言に天邪鬼は緊張するどころか笑い出した。
「大丈夫だよ、従僕。あの殲滅君が持っている機械に酒吞童子ちゃんは引っかからないよ。だってこの家には常日頃から結界が貼ってあるから」
「え……そうなの?初めて知ったんだけど」
「それはそうでしょ。従僕君に話したら殲滅君にも話が伝わっちゃうから」
なるほど、と思ったけど少し驚いている。まさか、自宅に結界が貼られていたなんて思いもよらなかった。だけど、あの時画面に出た丸は何だっただろう?
一安心した僕は学校に戻ろうとしたら、制服のポケットに入っていたスマホが鳴った。
スマホの画面を見ると七五三田からメールが来ていた。
内容としては、機械が指した場所に酒吞童子がいないと言うメールだった。僕は返信として『こっちにもいなかった』と打ち送信し、僕は家を後にし学校に向かう。
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