11話 開園と妖怪(仮)
文化祭開園
僕はまず、天邪鬼とキャットに一般客として入ってきてもらうことにした。しっかりキャットには帽子を付けて。そして、天邪鬼には従僕呼びではなく『お兄ちゃん』と読んで貰うことにした。
さすがに巫女服で来させるわけにはいかないから、夕里から服を貸してもらった。
天邪鬼は黒のワンピースでキャットは白のワンピースを着てきた。
合流した後は、三人で三年生が出している出店に食べ物を買いに行った。
「お、お兄ちゃん。僕、フランクフルト食べたい」
「私もニャ!」
天邪鬼が指さす方には大量の人が並んでいた。他の店とは比べ物にならないほどの行列だった。
「なぁ、二人とも。本当に並ぶのか?」
「そうだけど?」
並ぶ気満々だった。僕は仕方なく列に並ぶ。
十五分後……
ついに僕が買う番に来た。僕は一本二百円のフランクフルトを三本買い、そそくさと影が出来ている場所に行く。
「はい。二人とも」
僕は二人に一本ずつ渡す。
「ありがとう。お兄ちゃんはお金は大丈夫なの?」
「問題ないよ」
だって七五三田から貰っているから。五千円を。
七五三田の本業は妖怪憑きの殲滅。一回殲滅したごとに報酬をもらえ、無害認定が出た場合は一回の殲滅の二倍の報酬が貰えると言っていた。
もう食べ終わったのか、串だけをもったキャットがワイシャツを引っ張ってきた。
「どうした?」
「次はあれが食べたいニャ」
キャットが指した方向にはドーナツと書かれた出店があった。
案の定ドーナツ屋にも行列ができていた。僕たちは列に並ぶ。そして人は次々と少なくなり、ついに僕たちの番が来た。
ドーナツ屋には三種類のドーナツがあった。
「キャットは何がいい?」
「う~ん。チョコリング、オールドファッション、フレンチクルーラーか。じゃあ、一つづつで!」
全てがチョコ味だけだった。チョコオンリーだった。
「チョコ食べていいのかよ」
猫ってチョコ食べれなかったような気がするんだけど……
「大丈夫ニャ。私は問題ないのニャ」
「そうなんだ」
僕は一つ百円のドーナツを三つ買ってあげた。
僕がキャットにドーナツを渡すと、天邪鬼が待っている影まで走って行ってしまった。
キャットたちの所に行こうとすると後ろから声を掛けられた。後ろを見ると、夕里がいた。
「どうしたんだ?」
「今の子は誰?彼女?」
夕里は声のトーンを落として聞いてくる。
「今のは七五三田が使役しているやつ。後で紹介するよ」
「そうなんだ……よかった。じゃあね」
夕里はそう言うと教室の方に行ってしまった。『よかった』ってどういう意味なんだろうか。
僕は急いでキャットたちの所に行くと、仲良くドーナツを食べていた。
「二人とも、ドーナツはおいしいか?」
「うん!おいしい!はい、お兄ちゃんの分」
そう言うと、天邪鬼は自分が食べていたドーナツを少し分けてくれた。僕はそのままドーナツを口に入れる。
「おいしい」
「でしょ!こういうのがあるなんて知らなかった今までの自分が残念で仕方ないよ」
天邪鬼は文化祭がとても気に入ったようだ。よかった。
僕は二人を連れて学校に入ろうとしたら、後ろに視線を感じ振り向いて見ると、天邪鬼とあまり変わらない身長の女の子がこっちを見ていた。
その女の子は僕たちの方に向かって歩いてきた。近づいてきたその女の子のことが分かった。
その女の子は黒髪のおかっぱで黒目をしていた。服装は天邪鬼と類似していて、そっくりだった。
そして、女の子は僕の目の前で止まって古めかしい口調で聞いてきた。
「その男よ、儂は酒匂鈴という女子(おなご)を探しておるのじゃが、何処にいるか教えてはくれぬか?」
女の子はクラスメイトで委員長の酒匂鈴の名前を言ってきた。僕は疑問に思いながら居場所を教える。
「ありがとう」
その一言だけ言って女の子は学校の中に入って行った。
「何だったんだ?あいつは」
「僕としてはさほど危険な奴だとは思わないよ」
「私も同じニャ」
僕たちも学校に入った。
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