第9話 文化祭準備と探索
夏休みが終われば文化祭!ということで、僕が通っている私立桂樹高校は夏休みが終わると、すぐに文化祭がある。この文化祭は金曜日の校内公開と土曜日の一般公開の2日に分かれている。
僕のクラスでは定番のメイドカフェをやる。正直に言って乗り気じゃない。
幸い女子がメイドをやってくれるが、接客は男子が務めることになった。
話し合いの時に、がたいの良い男子が数名メイドになるのが出た時は悪寒がしたのは内緒だ。
残念なことに僕は人と話すのが苦手だ。趣味が合う人だと、何の気兼ねなく話せるのだけど初対面の人や会話経験の少ない人だと、会話にならないことがほとんどだ。
「はぁ、初めての文化祭がまさかのメイドカフェなんて、ついてないな」
これから一週間、毎日放課後に準備がある。それを考えるだけで憂鬱になる。
そんな僕に七五三田が近づいてくる。
「そんなに浮かない顔をしてどうした?」
「ちょっとね」
それ以上は七五三田は言わなかった。かっこいいと思っているのだろうか?そこは「話を聞くぜ」とか来るかと思ったら来なかった。どっかに行ってしまった。そして、僕は1人になる。悲しい。
「はぁ~帰るか」
僕は文化祭の準備にもちろん参加などせず、家の帰路にとこうとしたら……
「あれ?蒼、帰っちゃうの?」
後ろから僕の幼馴染の小鳥遊夕里が声を掛けてきた。
「帰るよ」
「そ、そうなんだ。わかった。あ、天邪鬼ちゃんは今日も私の家にいるから」
「わかった。じゃあな」
あれから、天邪鬼は頻繁に夕里の家に行くことが増えた。
増えたというより、ここしばらく帰ってきてない。
「主が従僕を一人にしていいのかね?」
僕は独り言を言いながら自転車をこぎ、あっという間に家に着いた。
僕は玄関を開け「ただいま」を言うが「おかえり」という声が無い。それもそうだ、天邪鬼は三軒離れた夕里の家にいるのだから。
「天邪鬼がいないなら、僕は寝るか」
僕は制服を脱ぎ捨てベッドに向かう。
体は疲れ切っていた。昨日のことが関係してないなんて言えないが、正直に言うと両足が筋肉痛で痛い。とにかく痛い。
「あの異形だが言う妖怪、足早かったな。明らかに形はどっかの文明に出てきそうな感じなのに、足が速いって中身が実は人間だったりして、50メートル走6秒切る系の人が(笑)」
僕は明らかにおかしい。自覚はしているがやめることが出来ない。それは独り言だ!
百鬼夜行に襲われる前は独り言なんて滅多になかったのが、襲われた後は急に増えた。
他の人から見れば気持ち悪いボッチに見えるだろう。悲しいこと限りない。
その頃天邪鬼は……
「あははは!なにこれ!『俺はお前と一緒に生きたい。だから、付き合ってくれ』って見てる方が恥ずかしいわ!」
僕は夕里ちゃんが持っている少女漫画?を本棚に戻して、別の本を取り出す。今回も少女漫画?だ。
「夕里ちゃんはこんなの読んでて何が楽しいんだろう?僕の従僕みたいに実はエロ本を持ってたりして」
僕は少女漫画?を放り投げ、ベッドの下を覗くが見当たらない。
机の中も調べるが、やはり見当たらない。
「う~ん。持ってないのかな?おかしい。年頃の女の子ぐらいエロ本の一つや二つ持ってるはずなのに。もしや……」
とりあえず僕は先ほど放り投げた少女漫画?を取り夕里ちゃんが帰って来るまで待つことにした。
二時間後……
「遅いなぁ、もう6時だよ?まだ帰ってこない。むぅ~帰ってこない今のうちに、今時の女の子の部屋を改めて観察しちゃうかな」
僕はまず出入り口から見る。ドアは白色を基調としていて、汚れ1つなく清潔感を漂わせる。次は勉強机。机の上にはプリントや教科書が乱雑に置かれている。
「夕里ちゃんは整理が出来ない系女子なのかな?まだ従僕の方が整理できるよ。さて、次は……」
僕はタンスの中を見る。中には、可愛い黒のワンピースだったり、赤のスカートなどが綺麗にしまわれていた。そして、僕はあるものを掴みタンスから取り出す。それは、下着。しかも、黒パン。
「夕里ちゃんはなかなかにエロいのを履くねぇ、やっぱエロ本が無いのは不可解だな」
僕はまじまじと下着を見てから、綺麗にたたんで元あった場所に戻す。
戻した後はさっきまで座っていたベッドを見る。枕元にはペンギンのぬいぐるみが一体いるだけで、後は何の特徴もないベッド。
そして最後に部屋全体を見る。部屋は6畳ぐらいの広さでドアと同じで白を基調としている。白のカーペットの上には座ればちょうどの高さの机が置かれている。
夕里ちゃんはちゃんと女の子らしい清潔感のある部屋にいてよかった。
ん?やっと帰ってきたみたい。僕はもうしばらくここにお邪魔しようかな?
そして、眠りから覚めた蒼は……
「う、う……ん。今何時だ?」
僕は目覚まし時計に手を伸ばし見ると、時計の針は12時ちょうどを指していた。
「え?12時だって。寝すぎたし、夕食食べてない」
僕は一階に降りてリビングルームに入ると、食卓には僕分のご飯がラップされていた。
「今日の夕食はポテトサラダと鯵のかば焼きだったのか」
僕は鯵のかば焼きが乗っている皿を電子レンジで温めている最中に気づいた。ソファで寝ている天邪鬼がいた。
「おい。こんなところで寝てないで、僕のベッドに移れ」
「う……ん。誰?あっ!従僕じゃないか!どうした!」
やけに上機嫌だ。なんか恐怖を感じる。そんなことより
「どうしたじゃないよ。ここで寝てないで、僕のベッドを使え」
「……わかった。……おやすみ」
「あぁ、おやすみ」
天邪鬼はフラフラしながら階段を上がり僕の部屋に行った。と、同時に鯵のかば焼きの温めが終わった。
ご飯をよそい、すべての物に感謝を告げる言葉を言う。
「いただきます」
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