第7話 転校生と無害認定
学校にはHR(ホームルーム)の5分前に着いた。
僕が在籍するクラスはいつもと変わらず流行りの歌やファッションなどの話ばかりで騒がしい。
HRの始まりを知らせるチャイムが鳴ると担任の飯島先生が入って来た。
飯島先生は女性なんだが、少し男勝りなところがある。
「皆座れ。HRを始める前に1つ知らせがある」
知らせとは何だろう?この時間帯だと転校生が来ることが定番中の定番だけど。
「夏休みが終わって早々だが、転校生だ。入ってこい」
飯島先生に呼ばれて入って来たのは、見覚えがある人だった。
「初めまして、これからよろしくお願いします。俺の名前は七五三田印です。七五三に田んぼの田で『しめた』と言います」
簡単な自己紹介を終えた七五三田は先生に言われた席に座る。
その間、僕は複雑な顔をしていただろう。理由は明白だ。夏休み中に七五三田が使役している『百鬼夜行』に殺されかけたのだから。
今日は始業式だけだから、午前中で学校が終わる。放課後は何をしようかと考えていると、七五三田が話しかけてきた。
「やぁ、また会ったね。元気か?」
「あぁ。おかげさまでな。で、何の用だ?」
「今日の放課後、時間ある?」
「あるが要件はなんだ?」
「ちょっと話したくて。じゃ」
七五三田は僕の返事を待たずにどっかに行ってしまった。
まさか、こんなにも早く接点を持つとは僕は運が無いな。
放課後……
「じゃあ。帰ろうか」
「どこかに行くんじゃないのか?」
「俺がしたい話は喫茶店などじゃ出来ない話だから、お前の家に行く」
おいおい、どこかに特殊な性癖を持ってるやつがいたら、今の会話はギリグレーゾーンだろう。
「おい待て、これだけは約束してくれ」
「ん?なんだ」
「絶対、百鬼夜行を出さないのと、天邪鬼と敵対しないでくれ。たのむ」
「それぐらい分かっている」
僕と七五三田は僕の家に向かう。
「なぁ、聞いていいか?」
「なんだ?言ってみ」
「この前、僕を追いかけまわした白い布を被った妖怪はなんだ?」
僕はずっとあいつ呼ばわりしていた妖怪のことを聞いてみた。
「あれは『異形(いぎょう)』別名『白布(しろぬの)』と言う妖怪だ。実は、目が付いてなくてね、気配と聴力だけで相手を探して追いかけてくる、夜には会いたくないね」
「確かに。追いかけられた方から言えば、あいつ結構足早くない?」
「異形はどちらかと言うと走り専門のジャンルの妖怪だしね。でも、打撃にはめっぽう弱いから殴れば撃退できたんだよ」
僕はいつの間にか楽しく談笑していたと言っても、この前の襲撃のことだったけど。目の前には、天邪鬼がいる僕の家が見えてきた。
「もうすぐ、僕の家だ。天邪鬼には話をしておくから、二階の一番奥の部屋にいてくれ」
「わかった」
僕はリビングでゴロゴロしていた天邪鬼に百鬼夜行の主の七五三田が家に来ていることを伝える。
「じゃあ、僕は君の部屋でじっとしてればいいんだね。わかったよ」
天邪鬼はそう言って僕と一緒に部屋に入る。
部屋の中では七五三田が僕の漫画を読んでいた。
「七五三田、お茶持ってきたぞ」
「ありがとう。で、君の後ろにいるのが天邪鬼か?」
「そうだよ。天邪鬼も挨拶したら?」
僕がそい言うと、天邪鬼が前に出ていき自己紹介を始める。
「僕は東雲蒼の主の天邪鬼です。よろしくお願いします」
人見知りしているのだろうか?いつもと違って丁寧な言い方だ。
だが、自己紹介された七五三田は何故にかポカンと口を開けている。
「どうした?七五三田」
「いや、ちょっと驚いただけだ。俺はいままで幾つもの妖怪と会ったが、こんなに丁寧な妖怪始めて見た」
「珍しいのか?」
「珍しいもなにも多分この世に丁寧な妖怪はこの子以外いない。だとすると、むやみやたらに人を襲ったりはしなさそうだな。んじゃあ、今をもって天邪鬼とその従僕の東雲蒼を無害認定する」
「無害認定?」
「知らないのか?無害認定とはな、各地域にいる俺みたいなやつらが実際にその妖怪に会って危険かどうかを定めるんだ。そして、危険じゃないとわかったら今後一切その妖怪を殲滅しないことを無害認定と言うんだ」
僕はそれを聞いて安心した。これで、七五三田とは敵対しなくてすむ。
「よかったな、天邪鬼」
「よかったよ。これで無害認定が出てなかったら、正直に言って絶望していたよ。だって君が使役している妖怪『百鬼夜行』なんかに襲われたりしたら、死んじゃうよ」
嬉しそうな顔をする天邪鬼。
「これで俺は君たちを襲う理由は無くなったし、これからは仲良くしていこう。なにかあったら頼ってくれ、俺に出来る範囲で手助けする。それじゃあ、俺はここで帰るよ。今回来た目的は天邪鬼が無害か有害か見に来ただけだし。じゃ」
そう言って、七五三田は帰って行った。
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