第3話 宇宙の構造
「1970年代後半、宇宙ははじめの予想より複雑である事が分かってきました。それまで天文学者は宇宙の物質はほぼ均等に存在していると仮定してきました。もちろん小さなスケールではこれは正しくない。例えば砂浜を遠くから見ると一粒一粒は見えずただ滑らかな砂浜に見えるという事。これと同様に数百万の銀河を考えるような大きなスケールでは、全てが一様にならされていると考えられていました」
「ふむ」
「天文学者が70年代後半にみたモノは、極めて大きなスケールでも宇宙は一様ではないということでした。つまり、多くの銀河が存在する領域と少ない銀河しか存在しない領域とがあったのです。1986年には、天文学者ハクラ、ゲラー、ラパレントは宇宙のかなりの部分についてのはじめての地図が描けるようになりました」
「ほう」
「その年の一月、ゲラーがアメリカ天文学会で『宇宙のスライス』という講演を行いました。これは多くの新聞・雑誌でトップニュースとして報道されることになりました」
「ふむ」
「この宇宙地図の示すものは天文学者たちが予想してきたものとはまったく異なっていました。スライス内の銀河は寄り集まって細いフィラメント状の構造を形づくっていました。フィラメント間にはほとんど何も無い、壮大なボイド(空虚、超空洞)がありました。ボイドは泡のように一様に丸い形をしており泡の壁もはっきりしていた。これが誰も予想出来なかった宇宙の地図、『宇宙のスライス』です。」
「つまり、、、銀河の集まりと集まりの間には丸い空虚があると?」
「はい。まん丸です。ところがその年の大発見は『宇宙のスライス』だけではなかったんです。カリフォルニア大の天文学者フェーバーが、ハワイ会議で彼女を含む七人の天文学者の観測結果を報告しました。」
「ほう」
「宇宙は全体的に膨張しており、二つの銀河を無作為に選ぶと、ふつうはお互いに遠ざかっていく。ところが細かく見れば銀河間の重力が膨張の効果を上回り、膨張宇宙の中に〈固有運動〉を引き起こすことがある。固有運動は銀河同士の離れていく速度を遅くしたり、ときには膨張そのものを止めたりする。たとえば我々の銀河とアンドロメダ銀河は100億年くらいの後に、非常に接近するか、衝突してしまうと言われている。銀河団と呼ばれる銀河の集まりは個々の銀河よりさらに重く、強い重力で大きな固有運動を引き起こす。我々の銀河もアンドロメダ銀河も互いに引き寄せあいながら、乙女座の銀河団の中心に落下している、というものです」
「落下じゃと、、、!」
「はい、さらに調べると我々の銀河を含む数百の銀河が海蛇座とケンタウルス座近くの一点に向かって落ちつつある事も発見されました。他の天文学者達も我々の銀河がその方向に動いているのを知っていました。つまり、海蛇座・ケンタウルス座内に大きな銀河団があり、その重力が我々の銀河をその方向に引いていると考えていました」
「なんじゃ、他の天文学者達も知っていたのか?」
「はい、ところが、この七人の天文学者は海蛇座・ケンタウルス座も同じ方向に動いていることを発見したのです。大きな何かがずっと遠くにありその何かが我々を引いている。この巨大な質量のかたまりをグレートアトラクター(巨大な牽引者)と名付けました。これはほとんどの天文学者にとって予想外でありショックとして受け止められたのです」
「な、なんと、、、」
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