守りあおう

「はぁ、はぁ、」


思い出した。

全部、思い出した。


私は未来からここへとやって来たんだ。


それにしてもアタマが痛い、吐きそうだ。


……後ろから誰かが近づいてくる音がする。


「思い出したんですね。あの日の事、ここにやって来るまでの事を。……よかった。」


「……オイナリサマはいつ?」


「今日から一週間前ですね。実はこの冒険の目的はセーバルさんのサプライズだけではないんです。」


「私の記憶を取り戻すため?」


「そうです。」


「そうなんだ…、ミライさんはもう思い出したの?」


「いえ、恐らく彼女は思い出せないでしょう。思い出せるのは直接過去へ戻ったあなたと私のような神の力を持つフレンズだけでしょうから。」


「そう、なんだ。……上手く行くかな?」


「………、分かりません。実は園長さんが時空を超えたのはこれが初めてじゃないんです。」


「え?」


「今回も含めて二回。園長さんはその御守りを使って過去に戻っています。」


「な…!?じゃあ、どうしてその時の記憶がないんだ…?」


「例えその御守りを直接使った者であってもただの人間、フレンズでは記憶を取り戻すことは非常に難しいんです。それに、例え守護けものであったとしても、思い出すのは難しいのです。」


「じゃ、じゃあ、私が今思い出したのは…」


「そうです。それは園長さんが初めて過去へ戻った時の記憶、1回目の記憶なんです。」


「……どうしてあの時教えてくれなかったんだ?」


「……、実は私が先にセルリウムを封じようとしたところを逆に封じ込まれたのです。くっ、情けない話ですっ。」


あぁ、だからあの時、異変の時から全くオイナリサマと会うことができなかったのか。


「……ごめんね、オイナリサマ。私がみんなを守らないといけないのに…。」


「そんな、その役目は私がしなければいけないことなんです!園長さんが気にするようなことでは…。」


「いや、もうよそう、元々一人でなんでも出来る人なんて存在しない。私たちはお互い助け合っていかなきゃダメなんだ。だからオイナリサマ、一緒に頑張ろう?」


きっとオイナリサマは自分が守護けものという役目を背負っていた事で責任を果たさなきゃいけないという使命感に駆られていたんだ。だから一人で全てを守ろうとした。


私も、いつの間にか全てを守らなきゃいけないという使命感を持っていた。でも、それじゃあダメなんだ。


一人で全てを守るなんて出来ない。だから、


だからみんなでこの世界を守っていくんだ。


「!、はい!今度こそ、みんなでこのパークを守りましょう!」


「うん!一緒に守り抜こう!」


オイナリサマと握手をする。その手はがっちりとお互いの手を握りあっていて、決して外れない絆を連想させた。


「そういえば、私がまだ一度も過去に戻ったことの無い一番最初の時はどうなってたの?」


「………園長さん、そのことはどうか聞かないでください。」


「……分かったよ。」


オイナリサマが凄く悲しそうな顔をして俯く。きっと悲惨な目に遭ったのだろう。

そんなオイナリサマがとても可哀想に思えてきて、私の手は彼女の頭を撫でた。


「!?、園長さん?」


「オイナリサマ、ここまでよく頑張ったね。本当にありがとう。このナデナデは今できるお礼、受け取ってくれると嬉しいな。」


「…う、うぅっ、抱きついてもいいですか?」


「いいよ。」


「園長さんっ!」


オイナリサマは大泣きしながら私に抱きついてきた。……本当に辛い目に遭ったんだね。

私はせめて少しだけでも彼女からその辛さを取り除こうと思って頭を撫で続けた。





しかし、どうして私たちはあの時オイナリサマが居なくなった事に気付けなかったんだろう。


………セルリウム、前回の記憶が戻り対策が取れるようになった今でも警戒しておくべきだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

サーバルの小さな冒険 @ozizousama

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ