かつての仲間達

「ルル!それにみんな!てことは後から来るフレンズって…!」


「えぇ、たぶんみんなの事だったのね。」


 そこにはかつて一緒に旅をしたみんなが揃っていた。

 サーバル、カラカル、トキ、ルル、シロサイ、ギンギツネ。そして…


「後はセーバルとミライさんが居ればあの時のみんなが揃うんだね!」


 そう、後はセーバルとミライさんが居れば、あの時のメンバーが揃う。

 私はみんなの久しぶりに見る顔を見てひどく懐かしい感覚に襲われた。それと同時に嬉しさが私の心をいっぱいにして、いつの間にか笑顔を作っていた。

 ふと気づくと隣にサーバルがいる。

 彼女は私の腕を掴み、引っ張って


「早くセーバルに会いに行こう!」


 そう、元気良く大声で言った。


 うん、会いに行こう。


 私もサーバルより小さな声だったけれど、でも、確かにこう言った。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 太陽は先ほどの位置よりも真上を目指して昇っていた。

 セーバルの縄張りにつけば丁度真上に来るぐらいだろうか、そうなると木の陰で休まなければいけないが丁度良い、みんなで久しぶりにいっぱいいっぱいお話をしよう。


 そして、もう一度冒険をするんだ。小さくて、とてもあの頃には及ばないけれど、それでも楽しくなるだろう冒険を。

 …サーバルとの約束を果たすんだ。

 願わくば、この冒険は楽しく無事に終わって欲しい。

 全ての感情・思いを御守りにぶつけるように、そして願いを叶えてくれ!と強く祈るように、私は御守りをギュッと握りしめ、セーバルの縄張りへと歩き出した。


「園長?なんかすごい顔してるけど、大丈夫?」


 …どうやら深く考え過ぎていたようだ。

 何もないよ。と返事をしておく。


「ほんと?なら良いけど。そういえばみんなアレが終わった後何やってたの?」


「私はラビラビ無しでも大丈夫な様に特訓してたよ!」


「へー、特訓してたんだね!それでどうなったの?」


「えへへ、中ぐらいのセルリアンが出てきても一人で倒せる様になったよ!」


「ほんと!?すごい!ルルも強くなったんだね!私なんてもうとっくに追い抜かされてるかも。」


「えへへ、そんなことないよー。」


「そうかな?ところでシロサイは何をしてたの?」


「わたくしはクロサイと修行してましたわ。スマトラサイが久しぶりに帰ってきたのでとても、まぁ楽しかったですわ。」


「スマトラサイ…?どんなフレンズなの?」


「かつてわたくしとクロサイと共に修行をしていた仲間ですわ。他にしたいことがあると言ってどこかへ行ってしまいましたが。」


「久しぶりに会えたんだ。良かったね!」


「えぇ、久しぶりにいろんな事を話したりしましたわ。」


「私はずっと歌の練習をしてたわ。すごく上手くなったから、聞いてみる?」


「えっ、それはいいや。」


「聞きたいのね。それじゃあいくわよ。」


「「ちょ、ちょ、ちょっとストーップ!!」」


 サーバルとカラカルが必死になって止めようとするが止めることはできず。


「〜〜〜♪ 〜〜♪」


「ぎにゃあ…!耳が、耳が!」


「う、ぐっ、確かに前よりはマシかもしれないけど…!」


「どう?いいでしょ?」


「あなたの技は支援というより攻撃用よね。」


「あら、苦しそうね、私の歌で癒して…」


「ぎ、ギンギツネは何かあった!?た、楽しいことがあったんだよね!」


「わ、私まだ何も話してないけど…でも、そうね。最近キタキツネとよく温泉に入ってるわ。あの子ったら温泉に入ったら顔をとろけさせて、とっても可愛いのよ。」


「温泉かぁ、いいなー私も入りたい!」


「そうね。あの温泉気持ちよかったからまた入りたいわね。」


「私の歌はどうかしら?」


「あはは、またいつか聞くね。」


 そうして話を続けていると、やがてセーバルの縄張りが見え始めた。

 サーバルとカラカルが手伝って見つけたセーバルのお気に入りの場所だ。

 そこにはバオバブの木があって朽ちた緑色のソファが横たわっている。ちょっと前に聞いたミライさんの話では多くのジャパまんが隠されているようだが…。


「みんな!セーバルの縄張りが見え始めたよ!よーしっ、私走っちゃお!」


 そう言って一気にサーバルが走り始めた。


「あっ!走りなら私も負けないよー!」


 ルルもつられて走り出す。


「皆様とお会いするのも久しぶりですし、わたくしも少し走りますわ!」


 シロサイもそれに着いて走り出す。


「むふふ、みんなに着いていって応援歌でも歌ってこようかしら。」


 そんな恐ろしい事を言いながらトキもついていった。


「サーバル…あんたの事は忘れないわ。」


「こんな事ならサーバルにオトキコエナクナールZをあげればよかったわね…。」


 そんな冗談を言いながら、私たちは歩いてセーバルの縄張りに向かった。


 ……向こうからサーバルの悲鳴と恐ろしい何かが聞こえてきたが、気にしないでおこう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 こうして私たちはセーバルの縄張りに着いた。


 しかし…


「セーバル!どこに居るの?セーバルー!!」


 なぜかそこにセーバルはいなかった。


「セーバルー!どこぉ!?」


「サーバル、たぶんセーバルは今はいないんでしょう。それよりも太陽がもう真上に上がってるわ。ちょうどそこにある木の陰で休みましょ?」


「うぅ…でも、」


「あんただっていつも縄張りに居るわけじゃ無いでしょ?大丈夫よ、後で探せば見つかるわ。」


 どうやらサーバルは不安になっているようだ。

 カラカルの言う事はもっともだ。

 当然、セーバルだってずっと縄張りに居るわけではないだろう。


 しかし。どうしてだろう。



 どうしてこんなに胸騒ぎがするんだ?


 …私は再び御守りを握りしめた。

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