詩『Sweet Home』の原文と翻訳
前回の告知通り、ここでは詩『Sweet Home』の原文と翻訳後の文章を比較していきます。どうぞよろしくお願い致します。
『Sweet Home(原文)』
迷子になった僕の行方
遥か彼方の 旗を目印に
絡まる出会いを ほどく
テーブルに咲く 一輪のかすみ草の香り
歩き疲れた街並に 澄んだ木漏れ日落とす
頬にキスする 優しい声と愛
一欠片の言葉の中で
生まれる
今日も安らぎ微笑む
あなたが 僕は好きだよ
言葉の奥に眠る心
重さを足すと その夢はきっと
欲張りになってしまう
夜空に染まる花びらは小さな
誰かの幸せ写す 一つの希望となるよ
頭をゆっくり 撫でるこの温もり
そんな当たり前の景色は
世界の宝物
あどけない笑顔見せる
あなたが 僕は好きだよ
赤と白の水平線に浮かぶ
Sweet Home(Sweet World) 僕の想いを(僕の願いを)
この
頬にキスする 優しい愛と心
一欠片の言葉の中で
生まれる
愛で見守ってくれる
あなたが 僕は好きだよ
『Sweet Home(翻訳後)』
[僕(トム)は大好きだったパパとママを亡くしてからは、2人の親友だったハリソン夫妻(作中ではケビン・フローラ)の家に、養子として暮らしています。そんなハリソン夫妻たちと一緒に暮らして、しばらくのことでした。突如香澄・メグ・ジェニーの三人の女子大生が同居人になって、僕は最初戸惑ってしまいました。でも内気で人見知りな僕に、香澄たちはとても優しくしてくれました。
でもいつも甘えているのではなく、僕は僕なりに忙しい毎日を過ごしています。そんな僕を陰からそっと見守ってくれる、ハリソン夫妻と香澄たち。この瞬間や特別な気持ちは……世界共通の宝物だと僕は思うんだ!
パパとママを亡くしてから、僕の生きがいは無くなってしまいました。そんな時、ワシントン州で『詩集コンテスト』なるイベントの告知を知ります。小学生以上であれば誰でも応募可能で、受賞すれば賞金・トロフィーももらえるなんて……寂しい気持ちを紛らわせるためにも、チャレンジしてみよう!
だけど詩なんて一度も書いたことがない僕にとって、それは困難の連続でした。すぐに文章なんて浮かぶはずもないどころか、本当に参加しようかどうか迷ってしまう。そこで香澄たちへ相談すると、以外にも三人とも僕を激励してくれました。
みんなの笑顔が見たい・声が聞きたいから、僕は四苦八苦しながらも詩を完成させました。この目標や夢に向かって頑張る僕の姿は、まさにオリンピック選手のようだね!
詩を作るようになってからの僕の1日は、とても充実していました。ですが同時に1番忙しい瞬間でもあり、普段は学校にも行かなければなりません。やっと学校が終わり家に帰ったころには、僕の心と体はボロボロだよ……
そんな傷ついた僕の心と体を癒してくれたのが、以外にも一緒に住んでいる香澄たちとケビン・フローラたちの世間話でした。僕が話に入ることはあまりありませんが、彼女たちの楽しそうにしている姿を見ると、何だがこっちも元気になるんだよ! 僕の1日は
こうしたみんなで楽しく過ごす時間は、まさに僕が大好きだったパパとママと一緒に暮らしていた時のようです。少し前まではパパとママがいないという生活に慣れず、
最近の習慣なんだけど……僕が夜寝る前になると、必ずフローラが部屋に来てくれるんだよ。そこで僕が“フローラ、お休みなさい”と言うと、“お休み、トム”と言った後に、フローラが僕の頬にキスをしてくれるんだよ! 僕のママ(ソフィー)も必ずお休みのキスをしてくれたから、フローラも僕のママみたい!
寝る前に必ず、“トム、大丈夫? つらいことがあったら、無理をしないでいつでも相談してね”と僕を心配してくれるフローラ……ううん、ケビンや香澄たちも同じように、僕のことを心配してくれる。僕には彼女たちのさりげない一言がとても嬉しくて、まるで神様からの
僕にいつも安らぎをくれるみんなのことが僕は……好きだよ。でも直接言うのは恥ずかしいから、この気持ちは僕だけの秘密だよ!]
[僕のことをいつも心配してくれる、香澄たちの前では、“大丈夫だよ”とその場を繕つくろっています。だけど僕の本当の気持ちは逆で、“寂しくて寂しくて……仕方がない”と思うことが多く、今にも胸がつぶれそうだよ。
こんな心の奥底に眠っている僕の気持ち。すべて香澄たちへ伝えられたらいいけど……でもそうなると言いたいことや伝えないことがたくさんありすぎて、きっとみんなを困らせてしまうほど、僕は駄々だだをこねるだけの悪い子になってしまう。
下記の☆に関してはトムではなく、香澄・メグ・ジェニー・ハリソン夫妻たちの心情を表現しています。
☆ [私たちがトムに“大丈夫? どこも具合悪くない?”と声をかけると、あの子はいつもうつむいています。どうやらあの子は自分のことを、“僕は厄介者・悪い子”と思っているかもしれません。
だけど私たちにとって、トムはかけがえのない大切な存在です。私たちの生活の一部に溶け込んでいるともいえ、時折見せるあの子の笑顔や寝顔、そして何気ない仕草が大好きです。私たちから見たトムは、日常や家族との団欒といった、小さな幸せを求めているように見えます……私たちの気のせいでしょうか?
色んな顔を持つトムは、日々勉強や仕事に励む私たちの心の癒しとなっています。いいえ、私たちだけではないわ……きっとトムを知るすべての人たちに、あの子は自分でも知らずに幸せの種を
再びトムの心情に戻ります。
[フローラは僕が困っている時や寝る前になると、必ず頭を撫でてくれるんだよ。僕のママ(ソフィー)も同じように、僕の頭を撫でてくれたから、何だかフローラは僕のママみたい!
メグも僕の頭を撫でてくれることはあるけど、フローラとは少し状況が違う。どちらかというと、メグは僕をからかっている時に頭を撫でることが多い。
二人が僕の頭を撫でる理由は違うけど、この瞬間は僕は好きなんだ。だってそうでしょう!? 頭を撫でられていると、とても気持ち良くなるんだよ。この光景の前では、言葉や年齢なんて関係ない……世界共通の愛の表現方法だよ!
僕が家に帰ると、みんなが“おかえりなさい、トム”って言ってくれることが嬉しい。“うん、ただいま”って返すと、みんなあどけない笑顔で返してくれるんだよ!!
僕にいつも安らぎをくれるみんなのことが僕は……好きだよ。でも直接言うのは恥ずかしいから、この気持ちは僕だけの秘密だよ!]
[数ヶ月前からハリソン夫妻の養子としてお世話になっている僕のお家に、三人の女子大生がやってきました。いつも明るく元気なメグ・大人しく本が好きなジェニーはアメリカ人で、性格も正反対なところが面白かったです。
そしてもう1人の香澄は日本人で、僕とは国籍や人種も違います。だけどそんなことを
ニュースやメディアで人種や国籍の違いについて話題になることがあるけど、人と人がつながる上においてはそんなことは大した問題じゃないと、僕は思うんだよ。だって実際にアメリカ人である僕が、日本人の香澄と仲良くなれたんだから!
だけど直接面と向かって“ありがとう、僕嬉しいよ” “みんな、大好きだよ”って言うのは恥ずかしいから、この気持ちは僕の心にしまうことにしたんだ。だけどいつかは僕の口から伝えたいから、今は手紙に書き記しておきます。そして一欠片の勇気が生まれたら、その時こそ僕の本当の気持ちを香澄たちへ伝えたい。
この心のモヤモヤ……自分でもどう表現して良いのか分からないけど、何だかとても気持ちがいいね。まるで僕がパパとママに感じていた気持ちが、そのままお姉ちゃんたちに伝えることが出来そうだよ! あぁ、僕にとって居心地の良いこの世界が、
最近の習慣なんだけど……僕が夜寝る前になると、必ずフローラが部屋に来てくれるんだよ。そこで僕が“フローラ、お休みなさい”と言うと、“お休み、トム”と言った後に、フローラが僕の頬にキスをしてくれるんだよ! 僕のママも必ずお休みのキスをしてくれたから、フローラも僕のママみたい!
どうかこの居心地の良い世界が、
この詩では、トム君の心の奥底に眠っている心情が大きなテーマとなります。直接本人に言うのは恥ずかしいけど、本当はとても彼女たちに憧れ尊敬している……自分の気持ちに正直になれない内気な少年っぽい様子も、『Sweet Home』という詩で表現したつもりです。
また「頭をそっと撫でる……世界の宝物」「頬にキスする……
どれも家族を持つ人にとっては、当たり前の光景ばかりです。しかしトム君にとっては、こうした人の温もりを感じる瞬間が大好きです。家族を亡くしたばかりのトム君の切ない気持ちを表現したいという意味を込めて、このような場面をあえて多用しました。
さらに「好き」「家族」というキーワードも重要な意味を持っており、この言葉には相手との距離を縮める魔法のようなものです。特に人種や国籍が違うトム君と香澄ちゃんにとって、この「好き」「家族」というキーワードに秘められた言葉の意味は、とても重要です。
次回は詩『
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