詩『Sweet Home』の内容について(2)
こんばんは、月影 夏樹です。前回に引き続き、詩『Sweet Home』の翻訳をしていきたいと思います。
『Sweet Home』
迷子になった 僕の行方
はるか彼方の 旗を目印に
絡まる出会いを ほどく
テーブルに咲く 一輪のかすみ草の香り
歩き疲れた街並に 澄んだ木漏れ日落とす
頬にキスする 優しい声と愛
一欠片の言葉の中で
生まれる
今日も安らぎ微笑む
あなたが 僕は好きだよ
(2-a)
言葉の奥に眠る心
重さを足すと その夢はきっと
欲張りになってしまう
(2-b)
夜空に染まる花びらは 小さな
誰かの幸せ写す 一つの希望となるよ
(2-c)
頭をそっと 撫でるこの温もり
そんな当たり前の景色は
世界の宝物
(2-d)
あどけない笑顔見せる
あなたが 僕は好きだよ
赤と白の水平線に浮かぶ
Sweet Home(Sweet World) 僕の想いを(僕の願いを)
この
頬にキスする 優しい愛と心
一欠片の言葉の中で
生まれる
愛で見守ってくれる
あなたが 僕は好きだよ
(2-a)の1行目、「言葉の奥に眠る心」について解説をしていきます。これはトムの内面のことを表している、とても重要な言葉となります。
同居している香澄・メグ・ジェニー・ハリソン夫妻は、トムが両親を亡くしたことを知っています。ですがトムは気を使われたくないという気持ちから、みんなの前では“大丈夫だよ”と言い続けています。
ですが本当の気持ちはまったくの逆で、“大好きだったパパとママがいなくてさびしい……僕のこと……もっと見て欲しい!”という心理状態にあります。
「建て前と本音」を言い換えた文章でもあり、“本当は正直になりたいけど、本音を語るのは恥ずかしい……”という複雑な気持ちを指しています。
この1行目の文章が、2行目以降の「重さを足すと……なってしまう」へとつながっていきます。順番に説明をしていくと、最初の「重さを足すと」とは言葉通りの意味ではありません。
これはトムが同居しているみんなに伝えたいこと、つまり心の奥底に眠らせている本当の気持ちという意味になります。最初は無愛想な態度をしていたトムですが、彼女たちと一緒に暮らしていくうちに心の中にある変化が芽生えます。
二重生活がトムには少しずつつらくなってきた、というとらえ方になります。なので「重さを足すと」という文章の背景には、“本当のことが言えない自分に、コンプレックスを感じている”となります。
“本当のことが言えない”という気持ちが、次の「その夢はきっと」へつながります。「その夢」が示す意味とは、トムが本音をすべて語り、香澄たちへ完全に心を開く》》ということです。表向きは元気よく振舞っていますが、完全に心を許していないという心理状況にあります。
そして「きっと」という表現をしていることにもポイントがあり、これはトムが心の中で思っていることです。ですがあくまでも予測や仮定という段階なので、実際に実現するかは分かりません。
さらにこれが「欲張りになってしまう」へと続き、“彼女たちへ本当に伝えたい気持ちは、一言二言では収まりきらない”という意味になります。ここでも「なってしまう」という表現をしていることから、あくまでもトムが頭や心の中で思っているだけの話となります。
(2-b)の1行目、「夜空に……求めて」を見ていきます。今まではトム君の心境や心理を表現してきましたが、ここに関しては香澄たちのことを指しています。
少しずつ解説をしていくと、「夜空に染まる花びら」とは「景色と一体化する=彼女たちの生活に欠かせない物や人となる」を比喩表現しました。勘のするどい方ならお分かりかと思いますが、この「夜空に染まる花びら」とはトムのことを指しています。
ネガティブな気持ちが拭えないトムは自分のことを、厄介者・いらない子どもと思いこんでいます。しかし同居人として心のケアを行っている彼女たちにとって、トムはとても大切な存在です。特にフローラ(ハリソン夫人)はトムのことを、本当の息子のように可愛がっています。
また「花びら」という比喩を使った理由として、トムが子どもであることも関係しています。サクラという花に例えて説明すると、「花びら」が舞う景色というものは、人の心を落ち着かせる・魅了させることがあります。特に日本では春になると「お花見」をする習慣があり、多くの人たちにとって欠かせない花となります。
あえて「夜空」という単語を使った理由として、“昼よりも夜に舞う花びらの方が、より美しく見える”という実体験が関係しています。
次の「小さな
説明が一部重複してしまいますが、幼くして両親を亡くしたトムにとって、小さな幸せとは特別な時間です。
2行目の「誰かの幸せ……となるよ」についてですが、この誰かとはトムを知っている人が対象となります。同居している香澄たちやハリソン夫妻をはじめ、トムが通っている学校の先生や友達たちも、この「誰か」という中に含まれています。
次の「一つの希望となるよ」については、そのままの翻訳となります。
仮にトムがもっと社交的や明るい性格であったならば、私は「誰か」ではなく「みんな」という言葉を使ったと思います。ですが作中に登場するトムは、“自分が生きているだけで、周りの人たちに元気や幸せを与えている”とは夢にも思っていません。これはうつ病や引きこもりの人に多い心理状態でもあり、一種の固定概念でもあります。
(2-c)の文章については、詩『Sweet Home』の内容について(1)で説明しましたが、ここでは少し意味が異なっています。
この場面における意味では、作中でトムの頭を撫でるフローラ・メグのことを指しています。母親のような優しさと温もりで頭を撫でるフローラと、子どもをからかうような気持ちを頭を撫でるメグ、といった理由があります。
確かに理由こそ異なりますが、「日常」を求めているトムにとっては至福の時間でもあります。なお真面目な性格の香澄・ジェニーについては、トムの頭を撫でるといった愛情表現をとることはありません。
最後の(2-d)についてですが、これも基本的に(1-d)と同じ意味となります。ハリソン夫妻の家に養子として住んでいることもあり、トムが帰宅すると3人の女子大生やハリソン夫妻が“おかえり、トム”と言ってくれる機会も多いです。そんなドラマの一場面を表現したのが、この(2-d)となります。
以上のことをまとめると、下記のような内容となります。
『Sweet Home(2番翻訳)』
[僕(トム)のことをいつも心配してくれる、香澄・メグ・ジェニー・ハリソン夫妻の前では、“大丈夫だよ!”とその場を
こんな心の奥底に眠っている僕の気持ち。本当はみんなへ伝えられたらいいけど、でもそうなると言いたいことや伝えないことがたくさんありすぎて、きっとみんなを困らせてしまうほど、僕は
(2-b)に関してはトムではなく、香澄たちの心情を表現しています。
[私たちがトムに“大丈夫? どこも具合悪くない?”と声をかけると、あの子はいつもうつむいています。どうやらあの子は自分のことを、“僕は厄介者・悪い子”と思っているかもしれません。
だけど私たちにとって、トムはかけがえのない大切な存在です。私たちの生活の一部に溶け込んでいるともいえ、時折見せるあの子の笑顔や寝顔、そして何気ない仕草が大好きです。私たちから見たトムは、日常や家族との団欒といった、小さな幸せを求めているように見えます……私たちの気のせいでしょうか?
色んな個性や表情を持つトムは、日々勉強や仕事に励む私たちの心の癒しとなっています。いいえ、私たちだけではないわ……きっとトムを知るすべての人たちに、あの子は自分でも知らずに幸せの種を
再びトム君の心情に戻ります。
[フローラは僕が困っている時や寝る前になると、必ず頭を撫でてくれるんだよ。僕のママ(ソフィー)も同じように、僕の頭を撫でてくれたから、何だかフローラは僕のママみたい!
……メグも僕の頭を撫でてくれることはあるけど、フローラとは少し状況が違う。どちらかというと、メグは僕をからかっている時に頭を撫でることが多いかな?
二人が僕の頭を撫でる理由は違うけど、この瞬間は僕は好きなんだ! だってそうでしょう!? 頭を撫でられていると、とても気持ち良くなるんだよ! この光景の前では、言葉や年齢なんて関係ない……世界共通の愛の表現方法だよ!
僕が家に帰ると、みんなが“おかえりなさい、トム”って言ってくれることが嬉しい。“うん、ただいま!”って返すと、みんなあどけない笑顔で返してくれるんだよ!
僕にいつも安らぎをくれるみんなのことが……僕は……好きだよ……。でも直接言うのは恥ずかしいから、この気持ちは僕だけの秘密だよ!]
これが『Sweet Home』の2番を翻訳した詩の内容です。次回は残りの部分について、翻訳や解説を行っていきます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!!
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