詩『Sweet Home』の翻訳
詩『Sweet Home』の内容について(1)
こんばんは、月影 夏樹です。先日の告知通り、数回に分けて詩『Sweet Home』の翻訳を行っていきます。この詩のテーマは、「家族愛」「日常」「夢」です。
また子ども目線から親・自分のお世話をしてくれる人に対して、感謝の気持ちを伝えるという意味もあります。
『Sweet Home』
(1-b)
迷子になった 僕の行方
はるか彼方の 旗を目印に
絡まる出会いを ほどく
(1-c)
テーブルに咲く 一輪のかすみ草の香り
歩き疲れた街並に 澄んだ木漏れ日落とす
(1-d)
頬にキスする 優しい声と愛
一欠片の言葉の中で
生まれる
(1-e)
今日も安らぎ微笑む
あなたが 僕は好きだよ
言葉の奥に眠る心
重さを足すと その夢はきっと
欲張りになってしまう
夜空に染まる花びらは 小さな
誰かの幸せ写す 一つの希望となるよ
頭をそっと 撫でるこの温もり
そんな当たり前の景色は
世界の宝物
あどけない笑顔見せる
あなたが 僕は好きだよ
赤と白の水平線に浮かぶ
Sweet Home(Sweet World) 僕の想いを(僕の願いを)
この
頬にキスする 優しい愛と心
一欠片の言葉の中で
生まれる
愛で見守ってくれる
あなたが 僕は好きだよ
それでは最初に、(1-a)の解説から行っていきます。「頭をそっと……世界の宝物」という文章は、実は2番以降でも出てきます。繰り返し使っている言葉でもあり、この詩の中で特に強調したいと思った場面でもあります。
前回紹介した『命の天秤』では比喩表現を多用しましたが、この『Sweet Home』でも、色んな場面で使用しています。そしてこの詩の主人公は、トーマス・サンフィールド(以下トム)です。
この詩を作ったトムの心情は、自分に自信がなく生きがいも失っているという、ややネガティブな精神状態となっています。ハリソン夫妻たちには心を開いていますが、突如同居人になった3人の女子大生(香澄・マーガレット・ジェニファー)には、完全に心を開いていないことが特徴です。そんな気持ちの中で、「家族愛」「日常」「夢」をテーマにした詩となります。
一行目の「頭をそっと 撫でるこの温もり」とは、実は同居している3人の女子大生・親代わりのハリソン夫妻たちのことを指しています。心を開いていないながらも、自分の両親が生きていたころの温もりを、トムは探し求めています。
そして自分の気持ちを上手く表現出来ないことに、トムは一人苦悩しています。そんな気持ちを知りつつも、静かに見守る彼女たちのことを「頭をそっと 撫でるこの温もり」と例えました。
この「そっと」という言葉を使用していることがポイントで、これはつきっきりでトムを心配しているわけではない、3人の女子大生・ハリソン夫妻たちのことを表しています。
不幸な身にあるトムをベタベタに甘えさせるのではなく、あえて“適度な距離感を置くことを表現したい”と思い、「そっと」という言葉を使いました。“普通の家族や少年として過ごして欲しいからあえて何も言わないけど、本当はあなた(トム)のことをとても心配しているのよ”という、彼女たちの心情を表しています。
次の「そんな……世界の宝物」についてですが、これはトムの現段階でのライフスタイルが大きく関係しています。
通常であれば小学生ごろの子どもであれば、両親がいるのが当たり前です。しかし作中では、小学生のトムには両親がいません。それによって、今まで当たり前だった日常がすべて壊れてしまいます。
家族と何気ない会話をしつつ一緒に食卓を囲み、同じ住まいで寝食を共にする……一見するとごく当たり前のことに見えますが、トムにとっては特別な時間でもあります。
特に家族で食卓に囲むという場面については、人種や年齢などに関係なく共通する、幸せの一時でもあります。この人類共通の幸せの時間を、私は「そんな……世界の宝物」という言葉で表現しました。
次の(1-b)について説明します。一行目の「迷子になった 僕の行方」とは、トムのことです。一部重複しますが、両親を亡くしたことで当たり前だったトムの日常や幸せがすべて無くなってしまいます。生きがいを無くし、自暴自棄状態になっているトムを比喩表現した文章となります。
二行目の「はるか彼方の……ほどく」とは、トム自身が望む、生きる意味や未来のことを指しています。最初の「はるか彼方の 旗を目印に」とは、トムの成長した姿を例えた比喩です。
この文章は、一つの目標や夢に向かって懸命に努力する人に例えることが出来ます。今テレビやニュースなどで注目されている、オリンピック選手たちに置き換えてみましょう。
彼らはオリンピックという大舞台に向けて、日々練習に励む毎日を過ごしています。『はるか彼方の=オリンピック(世界大会)という晴れ舞台』で、『旗を目印に=オリンピックでメダル(目指すは金メダル!)を取る』ということです。
そして三行目の「絡まる出会いを ほどく」とは、数々の試練や困難のことを指しています。当然のことながら大舞台で結果を残すためには、練習に練習を積み重ねる必要があります。ですが練習は楽しいことばかりではなく、挫折・怪我による練習の一時中断、といったトラブルも珍しくありません。
この練習をしていれば必ず発生するであろうトラブルやハプニングを、「絡まる出会いを ほどく」という文章に例えました。
ここでは例えとしてオリンピック選手をあげましたが、これをトムに置き換えてみましょう。この詩を作った時のトムの目標・夢とは、『第一回 ワシントン州誕生記念祭! 第一回詩集コンテスト』で、何らかの賞を受賞することです。
これまで文章を書く機会がなかったトムにとって、詩のテーマを考え自分の気持ちを書くという作業は困難を極めました。時には同居人である三人の女子大生たちに相談をしながらも、試行錯誤を繰り返してきました。そうした中で完成した詩が、『Sweet Home』となります。
まさにこの夢に向かって頑張る瞬間のことを表しているのが、「はるか彼方の……ほどく」となっています。
(1-c)の一行目「テーブルに咲く……かすみ草の香り」とは、食卓や部屋で楽しそうに会話する三人の女子大生・ハリソン夫妻たちのことを例えた言葉です。(1-a)と内容が一部かぶっていますが、正確には彼女たちの楽しそうにしている何気ない時間や日常を指しています。そのため『命の天秤』の主人公、高村 香澄ちゃんのことではないです。
詩を作った当初は、「
内気な性格のトムにとって、いつも楽しそうに世間話をする、三人の女子大生・ハリソン夫妻たちに憧れてしまいます。“自分も以前はあんな風に笑っていたけど、今の僕には出来ないな……”というトムの気持ちを、どこか切なさが感じられる一文でもあります。
(1-c)の二行目「歩き疲れた……落とす」についてですが、これはトムの一日を表現しています。
最初の「歩き疲れた街並に」とは、トム自身における一日の流れのことです。学校で授業を受けたり家でご飯を食べたりと、一日にトムは色んなことを体験します。こうした無限のループとも呼べる円を歩くような時間を、「歩き疲れた街並に」という言葉に置き換えました。
その後に続く「澄んだ木漏れ日落とす」とは、三人の女子大生・ハリソン夫妻たちと食事や会話をすることで、トムの疲れが癒える瞬間を例えました。「木漏れ日」とは、森林や木々の間から差し込む日光のことです。
心に光よりも闇が多く残るトムにとっての「木漏れ日」とは、同居人である彼女たちとの何気ない世間話や食事を取る瞬間となります。どこかよそよそしい態度を取ってしまうトムですが、本当は心の中で“この平穏な時間が続いて欲しい……”と思っているのです。
次の「頬にキスする……
また(1-a)で「宝物」という表現を使用しているため、最後の語尾が重ならないようにするために、「贈り物」という文字を「プレゼント」に変えました。
最後の「今日も安らぎ……好きだよ」という文章についても、見た通りの意味となっています。
なお「好き」ではなく「好きだよ」という文章にした理由として、“どこか少年らしい気持ちを残したかった”という私の思いが関係しています。
これが(1)の内容説明となり、翻訳すると以下の通りとなります。
『Sweet Home(一番翻訳)』
[僕(トム)は大好きだったパパとママを亡くしてからずっと、二人の親友だったハリソン夫妻の家に養子として暮らしています。そんなハリソン夫妻たちと一緒に暮らして、しばらくのことでした……
突如三人の女子大学生たちの香澄・マーガレット(以下メグ)・ジェニファー(以下ジェニー)が同居人になって、僕は最初戸惑ってしまいました。でも内気で人見知りな僕に、お姉ちゃんたちはとても優しくしてくれました。
でもいつも甘えているのではなく、僕は僕なりに忙しい毎日を過ごしています。そんな僕を陰からそっと見守ってくれる、ハリソン夫妻と香澄たち。この言葉では伝えられない瞬間や特別な気持ちは……世界共通の宝物だと僕は思うんだ!
パパとママを亡くしてから、僕の生きがいは無くなってしまいました。そんな時、ワシントン州で『詩集コンテスト』なるイベントの告知を知ります。小学生以上であれば誰でも応募可能で、受賞すれば賞金・トロフィーももらえるなんて……寂しい気持ちを紛らわせるためにも、チャレンジしてみよう!
だけど詩なんて一度も書いたことがない僕にとって、それは困難の連続でした。すぐに文章なんて浮かぶはずもないどころか、本当に参加しようかどうか迷ってしまう。そこで香澄・メグ・ジェニーへ相談をすると、以外にもお姉ちゃんたちは僕を激励してくれました。
お姉ちゃんたちの笑顔が見たい・声が聞きたいから、僕は四苦八苦しながらも詩を完成させました。この目標や夢に向かって頑張る僕の姿は、まさにオリンピック選手のようだね!
詩を作るようになってからの僕の一日は、とても充実しています。ですが同時に一番忙しい瞬間でもあり、普段は学校にも行かなければなりません。やっと学校が終わり家に帰ったころには、僕の心と体はボロボロだよ……
そんな傷ついた僕の心と体を癒してくれたのが、以外にも一緒に住んでいる香澄たちやケビン・フローラらの世間話でした。僕が話に入ることはあまりありませんが、彼女たちの楽しそうにしている姿を見ると、何だがこっちも元気になるんだよ! 僕の一日は
こうしたみんなで楽しく過ごす時間は、まさに僕が大好きだったパパとママと一緒に暮らしていた時のようです。少し前まではパパとママがいないという生活に慣れず、
最近の習慣なんだけど……僕が夜寝る前になると、必ずフローラが部屋に来てくれるんだよ。そこで僕が“フローラ、お休みなさい”と言うと、“お休み、トム”と言った後に、フローラが僕の頬にキスをしてくれるんだよ! 僕のママ(ソフィー)も必ずお休みのキスをしてくれたから、フローラも僕のママみたい!
寝る前に必ず、“トム、大丈夫? つらいことがあったら、無理をしないでいつでも相談してね”と僕を心配してくれるフローラ――ううん、ケビンや香澄たちも同じように、僕のことを心配してくれる……。僕には彼女たちのさりげない一言がとても嬉しくて、まるで神様からの
僕にいつも安らぎをくれるみんなのことが僕は……好きだよ。でも直接言うのは恥ずかしいから、この気持ちは僕だけの秘密!]
これが『Sweet Home』の一番を翻訳した内容となっています。次回は2番の内容について、説明をしていきたいと思います。
少し長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました!
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