『命の天秤』はなぜ長編小説なのか!?(2)

 前回に引き続き、『命の天秤』がどうして長編小説なのか説明していきます。


 本作では、第1幕の本筋『苦悩し続けながら成長する女子大生』とは別に、第2幕『』という、話の大まかな流れがあります。この少年こそ、もう一人の主人公でもあるトーマス・サンフィールド君(以下トム君)です。


 『命の天秤』のメインテーマである『命の尊さ』とは、まさにトム君のことを指していると言ってもよいでしょう。繰り返しになりますが、第1幕では高村 香澄ちゃんを主人公とし、『心の成長』がメインとなりました。

 せっかくなので私は、人の心の「」を表現したいと思いました。そこで第1幕・第2幕という形にストーリーを分けました。


 これらのテーマはどちらも非常に重い内容でもあり、「短編小説では魅力を引き出せないのでは?」と思うこともありました。また私自身も、と、以前から思っていました。

 

 カクヨムで投稿されている長編小説の多くは、10万文字~15万文字くらいが多いと思います。2つに割ると、大体5万~7.5万文字となります。仮に『命の天秤』という作品のテーマが、「ただの女子大学生 高村 香澄の学校生活や青春」を描いたお話だった場合には、私もこれくらい長さにしたと思います。

 ですが今回は『』『』『』といった、非常に重い内容がテーマです。一応第1幕・第2幕に分けましたが、「それでも7.5万文字くらいでは足りないのでは?」と疑問に思いました。


 第2幕では「」をテーマにしつつも、トム君と彼の家族や友達でもある香澄ちゃんたちの視点から、ストーリーは進みます。トム君の亡き両親も登場するなど、第1幕がサブストーリーと思えるほど内容の濃いことが、第2幕の特徴です。

 また「」「」「疑似体験しているかのような、ドラマティックな表現を演出したい」という気持ちも重なり、それが結果的に第1幕・第2幕ともに10万文字以上もあることにつながりました。


 心の内側を上手く表現するために、私は「心理学」という学問に着目しました。一般的には固い学問だと思われがちですが、とても奥が深いのも「心理学」の特徴です。

 そこでお話の中に実体験も踏まえながら、『命の天秤』という作品の執筆を行ってきました。ストーリーの中でも述べていますが、「何百回の講義や授業を受けることよりも、1回の実体験の方が役に立つ」ということを、私はそのまま作品に反映させました。

 舞台となる場所や文化などは、調べることで情報を補うことが出来ます。しかし体験していないことについては、いくらインターネットや書物で調べても、表現出来る内容には限界があります。私が『命の天秤』の執筆において、「」を強く意識しているのには、このような理由があるからです。


 もちろん『命の天秤』の中に登場するすべてのストーリーが、ノンフィクションというわけではございません。ですが今作のメインテーマである、「」「」「」などについては、可能な限り実体験を踏まえて執筆しました。

 1つ事例をあげますと、「哀しみに打ち浸れる人たちの心情」は、しています。詳細は伏せますが、私自身も愛する人を亡くしているという経験がございます。映画や小説などで大切な人を亡くす場面を良く見かけますが、こればっかりは想像で表現することは難しいと思います。

 少し不謹慎な表現ではありますが、実際に大切な人を亡くした経験があるからこそ、『命の天秤』という作品に、そのやりきれない気持ちを表現することが出来たのではないでしょうか?


 しかし多くの読者さまに、フォローや応援コメントをいただけたことから、こうした私の作品への取り組みをしっかりと受け止めてくれたのかな? と一人思っています。


 文字数や長さだけで見るながら、映画やドラマ1本分(約1時間から2時間)くらいはあるのではないでしょうか? 最初から長編小説を書きたいと思っていたこともあり、ある程度文字数が長くなることは考えていました。

 長編小説が苦手な読者さまから見れば、「もっと簡潔に、もっと短く」と思われるかもしれません。ですが長編小説に対する苦手意識というものが、今回の執筆によって変わったことがあります。“私みたいな素人でも、長編小説が書ける……”という今回の経験が、私の心の中で大きな自信へとつながりました。

 そしてカクヨムという世界の中でも、私以上に多い文字数で内容の濃い長編小説を執筆されている方はたくさんいます。今現在3作品目のジャンルを募集中ですが、もしかしたら次回作も『命の天秤』と同じくらいの文字数になるかもしれません。


 これが『命の天秤』という作品が、30万文字以上の長編小説となった裏話となります。次回の裏話は、「なぜ登場人物紹介や補足用語説明などを、別途設けたのか?」についてご紹介したいと思います。


 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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