第58歩: 街は思う その二

 友達と言うものがあるらしい。


 街は思い出す。

 あの竜にのった魔法使いがそんな話をしていた。彼が街を去った日の事だった。

 二人、大切な友達がいると。

 彼らがいるから、彼らにしてやりたい事があるから、もう行かなくてはならない。

 そう言って、来たときと同じように竜に乗って帰っていった。

 友達とは何かと尋ねてみたが、よくわからない事を言われた。自分がそう認めた相手だ、と言うのだ。


 友達がなにかはわからない。

 この街に住んでいた人は、なにも教えてくれたことはなかった。


 ただ、今頃になって、誰かのために何かをしてやりたい、その気持ちは少しわかったような気がした。


 だから今は思う。もし次に会えたら、わたしは彼の友達になれるだろうか、と。 

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