第18話 ~騒音妖精~
「軽いな」
僕は感じたことを素直に言った。
「何じゃ不服か主よ、じゃあ言い直そうか……ゴホン!妾は天妖精、この世界に存在する妖精の纏め役じゃ、この度は妾を主の契約妖精としてお選び頂いた恩情に深く感謝すると共にこれから……って無視するのは酷いのじゃ主よ」
「自分で言っといて何だが長い、会ったばかりの奴にそこまで興味はない」
「むぅー」
僕がそう言うと、天妖精は膨れっ面でまた鹿肉を頬張り始めた。
というかそれ僕の鹿肉なんだが。
「勝手に食うな」
「私と主は一心同体じゃ、主の食べるものは妾も食べなければいけないのだ、これ契約の内」
「今すぐ契約破棄について助言をくれないか?」
「何を言うんだ主よ!天妖精と契約など人によってはドラゴンの肉をくれる人だって居るのじゃぞ!」
「ドラゴンの肉でお前は契約するのか?」
「そんな事、あるわけ……ドラゴンの肉……ないのじゃ!契約は……旨い……そんな簡単……やみつき……になるわけないのじゃぞ!」
「心揺さぶられ過ぎだろ」
案外、高ランクの肉でほいほい契約しそうだなこいつ……
変な天妖精と話していて気付かなかったがアリスがすっと僕を見ていた。
「どうした?」
「貴方大丈夫?さっきからずっと独り言を呟いているけど」
そうか、自分にしか見えない聞こえない奴と話しているんだ、そりゃはたから見たら心配になるだろうな。
「おい天妖精とやら、僕以外に姿を見せることは出来るのか?というかやれ」
「乙女に対する言い方では無いとは思うのじゃが主の命令なら従うまでじゃ!」
すると見えるようになったのかアリスが驚いた表情をしていた。
新鮮だな……
「!?何この見る限り五月蝿そうな女性は」
「主……現れて悪いのじゃが消えて良いか?」
「耐えろ」
アリスの一言は酷いと思うが、僕から見ても確かに五月蝿そうなイメージがあるので否定は出来ない。
長い茶髪で頭には髪飾り、派手な着物を着ていて、どこの花魁だよとツッコミたくなる格好をしている。
だが漂う雰囲気は何故か五月蝿そうだ。
「取り敢えずこいつ天妖精」
「よろしくなのじゃアリス殿」
「よろしく、アマミネそろそろ寝るわよ」
「そうだな」
僕とアリスは焚き火の始末だけすると直ぐに立ち上がりそれぞれの寝床に戻りベッドで横になる。
ちなみに僕の強い反対意見によりベットを作って貰えることになったのだ。
そして少しずつ夢の中へ入り込むことは……出来なかった。
横から声が聞こえてくる。
「……ちょっと待つのじゃ主よ」
「何だよ」
「主!早いのじゃ!自己紹介もアリス殿にまともにしてないし、されても無いのじゃ!」
じゃじゃ、凄く喧しい。今は夜だ、静かにするのが常識と妖精の世界では教えていないのか?
「主!天妖精は凄いのじゃぞ、本当ならこんな粗末に扱ったらいけないのじゃぞ!」
「そうか凄いのか、そうかそうか」
「どれだけ凄いか今から伝えるのじゃ、行くぞこれは妾が生まれて間もない頃の話じゃ……」
むかーし昔のフレーズを聞いた辺りで僕は夢の世界へ旅立ってしまった。
――――――――――――――――――――――――
夜が明けていない内に僕は目を覚ます。
それは練習のため、ではなくこの隣で呪詛の様に昔話を耳元で話してくる天妖精をどうにかするためだ。
気になって寝付きが悪くなる。
「その頃に出会った二人の人間と契約天妖精達は世界の敵である魔王ザルグを倒すために魔界ヘルド、今でいう魔国ダムルへと向かった、しかしそこで待ち受けていたのはボロボロになった魔王ザルグの姿だった……スゥースゥー」
勝手に寝てくれたお陰でどうにかはなったが、凄く続きが気になる所で終わったな、魔国に行って魔王がボロボロになっていたのか、そこが滅茶苦茶気になる。
小説を読んでいるせいなのだろうか、こういう話には少しだけ興味が無い訳ではない。
でもそれをこの天妖精に伝えるのはとても癪だ。
さて、
「明け方までどうしようか」
ボソッのベットの上で呟く。
本当なら二度寝と行きたいがそんな事をして、寝坊でもしようものならアリスの強化パンチが炸裂してしまう。それだけは回避せねば。
ステータス……
――――――――――――――――――――――――
名前 アマミネ・タイヨウ
Lv 11
体力 132/132
魔力 1000/1500
経験値 660
次のLvUPまで残り 120
攻撃 G+
防御 G+
俊敏 G+
会心 G+
運 SSSS+
《取得スキル》
言語解読
色欲の加護
無詠唱
高速詠唱
快速詠唱
限界魔力
結界
《称号》
巻き込まれた一般人・異世界人
色欲の契約者
天妖精の守護者・護
幸運
激運
神運
《ステータス恩恵》
金運UP
女運UP
勝負運UP
戦闘運UP
基礎能力UP
自動回避率15%
詠唱破棄
詠唱省略
詠唱早口
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色欲の加護
能力①
異性または同姓とスキンシップを取ることでポイントが貰えます。
ポイントが増える毎にランダムでスキルを取得出来ます。
今現在 950P
スキル取得まで 450P
能力②
殺意を向けられた人数分だけ貰える経験値が増大する。
(条件……一分の間で50人以上の殺意を受け、それに耐える。殺意の大小は関係なし。
適応……人間族、獣人族、魔族)
今現在 116人
経験値UP 2.16倍
能力③
???????(後99)
――――――――――――――――――――――――
魔力は結構回復しているな、これなら一回練習してもアリスとの修行には影響は出ないだろう。
能力①のポイントが上がりづらくなってるのか、全然貯まっていない。
まぁアリス以外にスキンシップなど取ってないからな、慣れてきても可笑しくないか。
僕はベッドから降り洞窟の外へと向かう。
「で、何でお前が付いてくる」
「何でって、妾は主の契約天妖精じゃぞ。一緒に行くのは当然の事じゃ」
「さっきまで寝てたんじゃないのか」
「天妖精は睡眠を必要としないのじゃ」
「じゃあ何で寝たんだよ」
「分からんかの~女の子が男の子のベッドの端に頭を置いて寝ているとすればする事は1つじゃろ」
「何だ頭でも殴れば良いのか?」
それなら何時でも言ってくれて良いんだぞ。
すぐ殴るから、すぐ殴り飛ばしてあげるから。
「違うのじゃ!正解は撫でるのじゃ」
「撫で潰す?」
「初めて聞いた言葉なのじゃ……主は女の子の扱いが酷いのじゃ」
「僕は男女平等だ、少なくとも自分のより強い女に手加減やら情やら掛ける気はさらさら無いぞ」
僕がそう言うと天妖精は不適な笑みをする。
「ほぉ~分かるのか?」
「強さぐらいなら感じ取れる」
「良いの~その歳で相手の戦闘能力が把握できるのは長生きする証拠じゃぞ」
「そいつはどうも」
はっきり言うなら、こいつはアリスより強いだろう。まだ本気になったアリスを僕は見たとこは無いが、何となくそんな気がする。
それ以降も下らない話をしながら歩いていると、昨日の木の元へと辿り着いた。
「こんな所へ来て何をするのじゃ主よ」
「強化魔法の練習」
「主はそんな初歩の魔法も使えないのか?」
「僕は魔法制御が下手らしいからな使い込んで慣らすんだよ」
「ふ~ん、頑張るのじゃぞ主、妾はそこら辺で遊んでいるのじゃ」
「遊んでいるって何歳だよおま……ビュン……え」
もの凄い勢いで何かが僕の頬を掠り後方へと飛んでいった。
「主、女性に年齢を聞くのは間違いじゃぞ」
「はい」
「頑張れよ主」
さっきと変わらない笑みの筈なのだが僕の危機察知が警報を発令している。ここは素直に従うまでだ。
それにしても僕の周りの女は何で実力行使が好きなのだろうか、幸先不安でしかないな。
「昨日の復習で指に纏わす魔力を少なめに……」
昨日の時とは少し淡い光が人差し指を纏う。
そして木の幹の周りを等間隔で突き刺していく。
魔力が500を切ったことろで止めて、来た道を戻っていく。
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