第12話 ~魔法使い~

「「!?」」


 土下座名人の変わりように直ぐ様リアカーから飛び降りる僕と青髪。

 地面に着地するや否やリアカーは足を止め土下座名人はゆっくりと馬から降りる。


「なるほど腐っても冒険者って訳か」


「私達を騙したの?」


「騙した?ハッ!笑えるな俺は依頼内容何一つ伝えてないのにお前らは受けたんだぜ信じるも騙すも無いだろ、それが俺達に殺されるって内容でもな」


「俺達……?」


 すると街道から少しずれた木からゾロゾロと小汚ない格好をした男達が下卑た笑みを浮かべながら出てくる。

 全員手には何かしらの武器を持っている、数は15、どう考えても此方が不利だ。


「なるほど、貴方達は盗賊ね」


「ご明察それにしても馬鹿な奴等も居たもんだな、詳細不明のクエストを受けるなんて……」


「僕もそう思う」


「貴方どっちの味方よ」


 僕がそう言うと横から青髪にツッコまれた。


 どう言われようがこれに関しては盗賊の意見に同意できる。

 詳細不明のクエストを受けるなんて只の馬鹿だ。


「さて大人しく言うこと聞いてくれたら痛いようにはしないぜ?」


「具体的にはどうなる?」


「抵抗しなかったらお前は苦しまずに死ねる。どうだ?」


「逃がしてくれる、という案は無いのか?」


「残念ながら今の所はないな」


「私はどうなるのかしら?」


「お前は殺しはしない、捕まえてアジトでじっくり楽しまして貰う」


「一応聞いておくけど逃がしてくれる、という案は無いかしら?」


「残念ながら無い」


 さてこれで戦うしか選択肢が残ってないが、どう考えても勝てないだろ。

 ステータスが運以外オールGの僕が盗賊と戦っても死ぬ未来しか見えないな。


「青髪策あるか?」


「簡単よ、私がこいつらを殺すわ」


「!?」


 ギルドで感じたのとは全然違う種類の殺意に僕は思わず声を上げそうになる。


「じゃあ任せたぞ」


「貴方は?」


「僕は戦闘に関して素人だ。無駄に何かして足を引っ張るぐらいなら最初から僕は何もしない」


「恐ろしいまでの他力本願ね」


「適材適所と言ってくれ、というかあいつらを殺せるのか?」


「私を誰だと思っているのよ?これでも村じゃ負け無しの無敗魔法使いだったんだから」


「そうか」


「反応薄いわね」


「それよりそろそろ殺しにくるぞ」


「いつの間にこんな近くに!?」


「どう考えても話している間にだろ」


 自分達の目の前に10以上の武装した盗賊が居ると言うのに僕は冷静だった。


「おいおい、この人数相手で二人でどうにかなると思ってるのか?」


「いや全然思わん」


「だから貴方どっちの味方なのよ」  


「思わないさ、二人ならな」


「どう言うことだ?」


 初めて命が脅かされているのに何故か僕の心境は穏やかだ。

 僕の言っている事が理解できない盗賊達は皆頭を抱えている。

 もしかしたら最初からこの事がバレていて、国から自警団が来ているかもしれないと思っているからだ。

 何を勘違いしてるか知らないが僕が居たら勝てないと言いたいんだよ。


「さぁ青髪やっておしまい!」


「その言い方ムカつくわね」


 一度は言ってみたかった台詞第9位を皮切りに青髪は文句を言いながら両手を前へ翳す。


「《錬成・ゴーレム》」


 すると、青髪の前には土で出来た二メートルもある土人形一体が現れる。


「なっ!こいつ錬成魔法の使い手だぞ!距離をとって陣を組め!」


 ゴーレムが現れると同時に盗賊の一人が指示を出す。

 周りはそれに従い下がり隊列を組む。

 流石は盗賊だ、統率された動きに僕は少しだけ感心した。

 そして直ぐに盗賊達は攻撃に転じる、一人の長剣使いがゴーレムの足を切断しようと剣を振るう。


「ゴーレム蹴散らせ!」


 青髪がそう叫ぶと、ゴーレムは長剣使いを目にも止まらぬスピードで蹴り飛ばす。


 巨体とは思えぬスピードに盗賊達は驚きブレーキを掛け近づくのを止める。

 そして一人の盗賊が悪態をつく。


「何だ!?あのスピードは!」


「私のゴーレムは特別制だからね」


「くそっ!怯むな!!いくら早かろうと数で押せば崩せる!」


「「おぉ!!!」」


 全員がゴーレムを次々と串刺しにしていく。

 勝った、と思いにやけている盗賊達に向かって青髪は不適に笑い呟く。


「それ悪手だよ土棘テラ・ニードル


「あぐっ!!うぐぅうぅ!!がぁあぁあ!!」

「うぐ!!ぐああ!!がぁぅあぁぁ!!」


 突如ゴーレムから現れた土の槍に盗賊達は次々と串刺しにされていく。

 腹に顔に足に腕に喉にありとあらゆる場所に刺さっていく槍は真っ赤に染め上がり盗賊は言葉にならない呻き声を上げながら死んでいく。

 即死なら良いが中途半端に息がある奴等口から血を吐き散らかし必死で刺さっている槍を抜こうともがいている。

 端的に言って地獄絵図だ。


「はい終わり」


 青髪がパンと両手を叩くとゴーレムは土に戻り崩れていく。

 解放された生きている盗賊もあの傷では長くは持たないだろ。


「大丈夫かしら?」


「お前凄いな」


「当たり前よ、私を誰だと思ってるのよ」


「無敗の魔法使いだろ?」


「ッゥ!そ、そうよ」


「どうした?」


「何もないわよ!」


 そっぽを向いた青髪の頬は少し赤く染まっていた。

 僕が茶化すと青髪は俯き逃げるようにリアカーへ戻っていく。


「待て…青髪!!!」


 僕が歩き出そうとすると、リアカーの後ろから剣を振り上げて青髪を狙う盗賊が見えた。

 思わず大声で叫んでしまう。

 逆にそれがいけなかったのか青髪は盗賊に気づかず僕の方へ振り返る。


「何?急に大声だして……」


 ヤバイ!今から走っても追い付けない。

 盗賊はニヤリと僕の方を見て笑うと、そのまま剣を青髪の頭へ振り下ろす。


「死ね!!」


「えっ」


 盗賊の声に青髪が振り返るも剣先は目の前まで迫っていた。


 僕は無意識に腕に強化魔法を掛けると、落ちていた大きめ石を掴み肩がハズレるぐらいの勢いで盗賊に投げつける。


「ゴギァ!!」


 一秒も経たず盗賊の頭部にたどり着いた石はそのまま当たり頭ごと吹き飛ばす。

 リアカーに血と脳味噌を撒き散らしながら盗賊は後ろへ倒れる。

 驚いている青髪を見ながら、僕は倒れる。

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