閑話 ~防具屋事件~
ギルドから数分言ったところにある【防具屋ラグリゼ】は、品数が少ないがその変わり質が良いものが多いらしく一部の冒険者には結構人気の店らしい。
店内に入ると、眼鏡を掛けたオレンジ髪の特徴的な女性の店員が出迎えてくれた。
周りには客の姿はない。
「いらっしゃい!ラグリゼへようこそ!本日はどのような物を御求めで?」
「出来るだけ安くて丈夫な装備が欲しい」
「分かりました!今お客さんにピッタリな装備を持ってきます!予算は?」
「100000ミルぐらい」
「お任せください!」
元気な声でそう言うと、店員はカウンターの奥へと走っていった。
暫くすると、店員は凄い勢いで戻ってきた。
「お待たせしました!こちらはどうですか!?」
「マントか?」
「その通り!マントと言ってもそのマントには、打撃・魔法・斬撃耐性、体温調整が付いている超優れもの!お値段たったの99999ミル!」
「試しても良いか?」
「どうぞ!試着するなり!殴るなり、魔法打つなり、斬るなりしてください!是非どうぞ!」
「もし破れたら?」
「大丈夫です!その時は私が責任をもって作った人に全力で謝りに行きます!」
「分かったじゃあ遠慮なく……ふん!」
ビリッ!!
「「あっ……」」
僕と店員の声が被り、店内には何とも言えない空気が流れていく。
「破れたな」
「……」
「どうすればいい?」
「……」
「起きてるか?」
「……」
「おい!」
「はっ!私は何を!?」
マントが破れてから店員は魂が抜けた様になっていたが耳元で大声を出すと目を覚ました。
破れたショックで記憶障害でも起こっているのか、混乱している。
「マント」
「は、はい」
「破れたぞ」
「え?これって……」
僕が破れたマントを店員に見せると、顔がだんだん健康的な白から真っ青に変化するまでそう時間はかからなかった。
「お客さん!何て事を!」
「落ち着け、よく思い出せ」
「何をですか!?」
「深呼吸」
「え?はいスーハー、スーハー、ス……」
このままだと弁償させられるので思い出して貰う。
「あ!……あぁあああああああ!!!!!!」
どうやら思い出したらしい。
「あぁああ!!!ミルセル・フェルから取り寄せた!最高級品のマントが!破れてボロボロに!!!」
そしてマントを隅々まで見るや否や「……修復不可」と呟くとまた叫び出した。
僕は黙って店を出た。
「宿屋に向かうか」
切り替えて鳴き声と叫び声が聞こえる店から離れていく。
その後【防具屋ラグリゼ】からは一日中不気味な笑い声がしていたらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます