第8話 ~良い?奴~
此処は?
うっすら霧ががった草原に僕は立っている。
目の前には女性の様な人が一人佇んでこちらを見ている。
「ΞΤΣΨζξφЖ」
は?
僕の耳に聞こえてきたのは言葉らしき声。
唯の音のように発せられた言葉。
訳の分からないまま僕の意識は遠ざかる。
――――――――――――――――――――――――
目を開けると目の前には見知らぬ天井が見えた。
手触りの良い布。
頭に柔らかい感触。
数泊置いて自分はベットで寝ているということに気づく。
寝起きなのか不思議と体の調子が悪い、頭痛がし体のあちこちが痛い、特に左腕。
身動きが取れないまま数分、時間が経つと扉が開く音がする。
「起きたのね」
淡々とした声で僕に話しかけてくる。
無表情の女性がじっとこちらを見ていた。
背が低く青みがかった髪は陽の光に当たって輝いている。
手には見たことの無い果物を持って立っていた。
「誰だ?」
「迷子よ」
「こんな宿屋みたいな所で迷子になるなよ」
「冗談のつもりで言ったんだけど……裏路地で一緒に居たでしょ」
「裏路地?……」
裏路地?
「……」
一緒に居た?
「……」
確か水くれた。
「……あの時の迷子か」
「本気で覚えてなかったのね、暗くて顔が見えなかったのは分かるけど声で判断ぐらいしてよ」
「面倒だ」
「何それ……」
ただでさえ頭痛が酷いんだ、そんな事に頭使っている余裕なんて無い。
女は扉を閉めベットの横まで近づいてくる、そして椅子に腰かけると持っていた果物(あれってリンゴじゃないか?)をナイフで剥き始めた。
「何している?」
「何って頭痛と魔力痛に効くリンズの皮を剥いているだけよ」
「リンズかよ……魔力痛って何?」
「筋肉痛の魔力バージョン」
「なるほど、使いすぎと」
「そうよ」
「どのくらい寝ていた?」
「3日」
どんだけ寝てたんだよ。
「一応言っておくと短い方よ、普通魔力を使いきったら一週間は寝ているから」
「魔力を使いきった?」
「強化魔法による魔力回路からの魔力放出が原因ね」
強化魔法?魔力回路?魔力放出?
「すまん、何言っているか分からん」
「強化魔法は昨日使った自身を強化する魔法事、魔力回路は自分の体に流れている魔力が通っている道みたいな物、魔力放出は魔力回路から魔力が漏れだす事……ここまでで質問は?」
「ない……がどうしてそうなった?」
「魔法使うが初めて人にはよくある事なのよ、貴方の魔力回路は使い込まれてないから自分の意思とは関係なく魔力がドバァーと出てくるのよ」
蓋してない醤油か何かなのか僕の魔力回路は……
「どうすれば良い?」
「魔法を使うしかないわね」
「魔法を使ってこんな風になったのにか?」
「流石に腕全体は魔法初心者には厳しかったから指だけ強化して段々と数を増やしていけば良いのよ」
「なるほど」
「とは言っても今は体を治すことに集中しなさい、後魔力をステータスで確認しといて」
「分かった」
ステータス、と心で呟く。
――――――――――――――――――――――――
名前 アマミネ・タイヨウ
Lv 1
体力 12 /12
魔力 50/50
経験値 0
次のLvUPまで残り 10
攻撃 G-
防御 G-
俊敏 G-
会心 G-
運 SSS+
《取得スキル》
言語解読
色欲の加護
無詠唱
限界魔力
《称号》
巻き込まれた一般人・異世界人
色欲の契約者
幸運
激運
《ステータス恩恵》
金運UP
女運UP
勝負運UP
自動回避率15%
詠唱破棄
――――――――――――――――――――――――
スキルが増えてる……
――――――――――――――――――――――――
色欲の加護
能力①
異性または同姓とスキンシップを取ることでポイントが貰えます。
ポイントが増える毎にランダムでスキルを取得出来ます。
今現在 350P
スキル取得まで 250P
能力②
???????(条件を満たしていません)
能力③
???????(条件を満たしていません)
――――――――――――――――――――――――
なるほどポイントが貯まったからか。
でも僕は寝ていただけで誰かとスキンシップをとった覚えがない。
だとすると……
「なぁ」
「何?」
「もしかして3日間看病してくれていたのか?」
「えぇ」
「そうか」
なるほどこちらに意志がなくても、誰かと話したり触られたりするとスキンシップと見なされポイントが貯まるのか……便利だな。
それにしてもポイントって直ぐに貯まるんだな。
「大変だったのよ、特に尿の時なんて」
「……今何て?」
「?だから尿の時なんて大変だったわよ」
「もしかして痴女か?」
「そのチジョって何の事か分からないけど不快さだけは感じる。それに寝たきりなんだから当たり前でしょ」
「…………そうか」
初めて会った奴が倒れたからといって尿を取るのがこの世界では当たり前なのか?
良い人ばっかなのかこの世界は……
でもそのお蔭でポイントが早く貯まったってことか……何か複雑な気分だな。
「私男の人の性器始めて見たけどあんな風になっているのね」
「そ、そうだな」
「構造からして不便そうに見えたわ」
「そ、そうか」
「それにしてもあの棒の下に付いてた袋は何なのかしら?玉が2つ入ってたけど」
「気にするな」
「興味本意で触ってたら今度は棒の方が可笑しな事になっちゃって」
「……」
「ビックリしたわ、触ってたら急に成長しだしたから」
「すまん」
いや、何で僕が謝らなきゃいけないんだよ。
てかどんだけ僕のナニを観察してんだよ。
「別に良いわ、何もなかったし」
「そ、そうか」
「出たときが一番ビックリしたけどね」
嘘だろ……
やっぱり痴女だろこいつ。
人様のナニで何してくれんだ。
「あぁいう風に尿って出るのね」
「……」
「うん?どうしたの?顔色悪いけど」
「何もない」
「それに……」
淡々と無表情で僕のナニについて語る女を無視して僕は寝ることにする。
頼むから夢であってくれ……そう願いながら。
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