第7話 ~初めての魔法~

 城下町に着くと辺りを見渡しながらぶらぶら宛もなく歩く。

 一番心配であった読みはスキルにあった言語解読のおかげで文字は全て日本語として頭に入ってくるので解決した。


 取り敢えず、ファンタジー定番のギルドを探して見ようと思う。


 数十分間歩き廻った結果……うん迷子になった。

 さて此処は一体何処だろうか?

 まだ太陽は昇っているはずなのに、辺りは暗い。

 人気は無く、見かけるのは猫みたいな動物だけだ。


 どうやら裏路地へ迷い混んでしまったらしい。


「幸先不安になるな」


 ぼそっと呟く。

 このまま突っ立っていても何も変わらないので前へ進むことにした。

 暗い道をどんどん進む、だが何時まで経っても人の姿どころか声すら聞こえてこない。


 ここでようやく、自分の置かれている状況に焦りを感じ始める。

 一か八か大声でも出して助けを呼んでみるか……


「誰か居るかぁ」


 シーン


 静かだ、僕の上げた声に何の反応も返ってこない。

 数分間本格的に困っていると誰かが後ろから歩いてくる気配がした。

 不良や悪い奴等じゃないことを期待しながらその誰かが来るのを待つ。


「……うん?誰?」


「迷子だ」


「えらく余裕そうな迷子ね」


「お前こそ誰だ?」


 暗くて顔は良く見えないが、話し方とシルエットから女性ということは分かる。


「迷子よ」


「お前も余裕そうだぞ」


「「ハハハハ」」


 二人とも笑ってしまう。 

 変わった奴だな……愛宮よりは幾分かましだろうけど。


「それでお互い迷子だが、これからどうする予定だ?」


「取り敢えず前へ進もうと思うわ」


「あんたもか」


「なら一緒に行きましょ……ほら先導して」


 どう考えて迷子同士の会話とは思えないが、考えても仕方ないので言われた通り先導(狭い道なので必然的に僕が前になる)して歩いていく。

 それにしても、この世界の人達は全員フレンドリーなのか?

 王も少女もこいつも会ったばかりの奴に対しての警戒心が無さすぎる。


「なぁ質問しても良いか?」


「暇だし良いわよ」


「何で迷子になった?」


「その質問そっくりそのまま返してやりたいけど答えて上げるわ、私は今日この国に来たばかりなの、目的は冒険者になる事、そのためにギルドに行こうとしたんだけど気が付いたから迷子……あなたは?」


「お前と一緒でギルドに行こうとしたら気が付いたから裏路地まいご


「奇遇ね」


「そうだな」


 聞いたのは良いが、これと言って興味は無かったので話は続かなかった。

 こいつも同じだろう。

 それ以降は無言で歩き続ける。

 数時間歩き詰めで疲れて来たので僕は少し休むことにした。


「僕は疲れたから休む、先に行きたかったら跨いで行ってくれ」


「偶然な事に私も疲れたから休むことにするわ」


「そうか」


「喉が渇いたわね、水とか持ってない?」


「生憎と体一つだけだ」


「そう、仕方ないかホントは使いたくないけど……《錬成・水》」


「おぉ」


 女は背負っていた鞄を地面に降ろし中から二つコップを取り出すと、《錬成・水》と言って手のひらから水を出してコップに注ぐ。

 それを見て思わず声を上げてしまう。


「どうぞ」


「良いのか?」


「私と貴方の仲でしょ」


「僕とお前にどんな仲がある」


「迷子仲間」


「……どうも」


 女からコップを貰うと、一口飲む。


 ゴクゴク


 想像以上に喉が渇いていたらしい、ほどよく冷えた水を僕は一気に飲み干す。

 飲み終えたコップを女に返し壁に背を預ける、休憩する間暇なのでステータスでも見る。


 名前 アマミネ・タイヨウ


 Lv 1


 体力 12 /12

 魔力 45/50


 経験値 0

 次のLvUPまで残り 10


 攻撃 G-

 防御 G-

 俊敏 G-

 会心 G-

 運  SSS+


 《取得スキル》

 言語解読【ユニーク】

 色欲の加護【ユニーク】


 《称号》 

 巻き込まれた一般人・異世界人

 色欲の契約者

 幸運

 激運


 《ステータス恩恵》

 金運UP

 女運UP

 勝負運UP

 自動回避率15%


 うん?魔法を使ってないのに魔力が減ってるのは何故だ?疲れたからか?

 こいつに聞いたら分かるだろう。


「なぁ質問良いか?」


「どうぞ」


「疲れると魔力は減るのか?」


「?そんなの当たり前じゃない」


「そうか」


 女は不思議そうに首を傾げ(様に見えた)て答えた。

 まぁ、魔法が得意な人間族にとっては常識中の常識だろうからな。

 この機会だ、魔法の事について少し聞いてみるか。


「なぁ良いか?」


「……どうぞ」


「魔法の事について知っている範囲で教えてくれないか?」


「何で人間族なのに魔法の事知らないのよ、まさか獣人族なの?」


「普通に人間だ、僕の生まれた所は少々変わっていてな魔法なんてほとんど使わずに生きてきたんだよ」


「へぇー噂には聞いた事あったけど本当に実在してたんだそんな場所、ちなみにどういう所?」


「大和っていう此処から遥か遠くにある小さな島国」


 日本と言うと何かと面倒が起きるかもしれないので大和と言っておく。

 意味的には同じ場所なので問題はない。


「やまと……聞いたこと無い地名ね」


「だろうな秘境みたい場所だ」


「まぁ良いわ、休むついで教えて上げる」


「どうも」


「じゃあ基礎中の基礎から魔法というのは簡単に言えば妄想を現実に変える力の事よ」


「妄想を現実に変える?」


「えぇ、例えば貴方が頭の中で火の槍をイメージしてかつ相応な魔力さえあれば魔法として発現させることが出来るわ」


「相応な魔力ってどういうことだ?」


「それに見あった魔力が居るって事よ、例を上げるなら魔力が少ない奴が頭の中で国一つ丸ごと破壊できる火球を想像して使おうとするとそれは絶対に失敗するのよ」


「あぁなるほど」


「それに失敗するだけなら良いけど最悪魔力が暴走して破裂……なんて事もあるから気を付けてね」


 案外危ないんだな魔法って……

 でも仕組みは簡単だな妄想を現実に変える……何か中二チック溢れているけど分かりやすい。


「それと魔法を使うにはさっき言った魔力の量とスキル、後詠唱が必要になるのよ」


「詠唱?」


「詠唱と言っても長い文とかじゃなくて、要は魔法の名前ね」


「名前?自分で考えるのか?」


「そうよ此処が一番魔法の恥ずかしい所ね、自分で設定した魔法名を叫ばなければならないから」


「わざわざ言わないといけないのか?」


「何故かそうしなかったら魔法が発現しないなのよ」


 名前を付けるのは良いが、まさか叫ばないといけないとは……最悪だな魔法使うの諦めよかな。

 いやいやそんな事で諦めてどうする僕、折角のファンタジー異世界で魔法を使わないのは損だ。


「スキルも大切な条件よ、ステータスの《取得スキル》の欄に何らかの属性の適正が無いと魔法は使えないもの」


「……マジで?」


「え?そうよ、火の魔法属性を持っている人は水系の魔法は一切使えないもの」


「魔法のスキルってとれるのか?」


「これに関しては先天性ね。後から取得するのは不可能よ、武術とかと違って努力ではどうにもならないから」


 終わったな……

 ――――――――――――――――――――――――

 《取得スキル》

 言語解読【ユニーク】

 色欲の加護【ユニーク】 ――――――――――――――――――――――――

 こいつが言うには魔法には火・水・土・風・雷・氷・光・闇の八属性があるらしいが、僕の取得スキルの欄にはそんな属性をほのめかすスキルが一つもない。

 あると言えば、この色欲の加護って何だ?

 これって調べること出来るのか?試しに押してみるか……

 ――――――――――――――――――――――――

 色欲の加護

 能力①

 異性または同姓とスキンシップを取ることでポイントが貰えます。

 ポイントが増える毎にランダムでスキルを取得出来ます。


 今現在 10P

 スキル取得まで 90P


 能力②

 ???????(条件を満たしていません)


 能力③

 ???????(条件を満たしていません) ――――――――――――――――――――――――

 出た……三つも能力があるのか、でも今使えるのは一つだけ。

 能力①はポイントを貯めればスキルが貰えるってことか、条件がスキンシップっと僕が一番苦手なジャンルなのがいただけないが、これを貯めれば魔法系のスキルが貰える可能性があるってことか。

 能力②、③に関しては条件が分からないから今は気にしないでおこう。


「その様子じゃ魔法属性が無かったのね」


「……」


「安心して魔法属性がないからとって魔法が使えないとは限らないわよ」


「どういうことだ?」


「スキルが無くても体には魔力があるから、自分の体を強化したりすることができるのよ」


「仕方は?」


「まず指先に魔力を流してみて、出来る?」


「それなら教えてもらったことがあるから……ほら」


「!凄いわね完璧よ、自分で言うのも何だけど私は魔力の使い方が上手いのよ、でもそれは私以上ね、よっぽど妄想が得意なのかな」


「本を読むからその影響だろう」


「ふーん」


「何だその疑うような返事は」


「別に……まぁそれだけ上手かったら直ぐ出来るわね、次は指先から腕を覆うように魔力を出してみて」


「こうか?」


「……悔しいけど完璧」


「どうも、で次はどうするんだ?」


「頭でこの腕は硬いと想像してから、何でもいいから適当に魔法名を言ってみて」


 魔法名……腕に纏っている魔力、シンプルにエンチャントとでも名付けようか。

 イメージイメージ硬いと言ってもどれぐらいかが今一想像しにくいな。

 多分硬度によって使う魔力が違うと思うから、そんなに固くは出来ないな。

 よし……


纏いエンチャント


 そう言うと纏っていた魔力は少しばかり発光し腕に薄く白い膜の様な物に変化した。


「これで良いのか?」


「……」


「おい」


「え、えぇそれで良いわよ、試しに地面でも叩いてみなさい」


 腕を振り上げ言われた通り地面に拳を叩きつける。

 そこで僕の意識は途切れた。

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