第6話 ~王~

 うん無理だ。

 ステータスを見て僕はそう思った。

 剣崎にあぁは言ったが自分の能力次第では此処に残ろうとも考えたが、これは無理。

 勇者らしい項目が一つも無いんだが……まぁ実際勇者じゃない唯の一般人だから仕方ない事か。

 いやいやそれでも、運以外のステータスが全部G-って何?馬鹿にしてんの?


「どうだ?称号の所に勇者が記されていると思うんだが」


「はい確認出来ました」


「分かった、後で詳細を教えてくれ、人のステータスは見れないのでな」


「分かりました」


「天峰はどうだった?」


「予想通りだ」


「そうか……」


 どうと言うのは、称号の所に勇者があるかという質問だろう。

 勿論ない、ご丁寧に一般人とかかれているからな。

 それにしても、この色欲の加護とはいうのは何だ?称号にも色欲の契約者とあるが。

 僕はそんな痴女っぽい奴と契約をした覚えがない。


「愛宮は……ってまだ寝てんのかよ」


「剣崎そいつは今はほっとけ」 


「そうだな」


「よし確認したところで、いきなりで悪いが魔族に対抗出来るように鍛えてもらうが良いか?」


「勿論です」


「……その前に王と二人で話をすることは可能か?」


 早い内に言って此処を出ていった方が良いだろう。

 正直に言ってしまえば、僕はこの国が滅びようと知ったこっちゃないがそのせいで知り合いが死ぬのは許せない、だから足を引っ張る前に出ていく。


「何故だ?」


「あまり周りには知られなくないからな」


「良かろう、じゃが娘と妻の同席は許してやってくれ」


「別に良い」


「よし皆下がれ!」


 王の言葉に全員が素直に移動を開始する。

 最後に出ていった騎士だけは僕の事睨んでいたけど気にするまい。

 さて、玉座の間に残ったのは王と少女、王妃、そして僕だけとなった。


「さて話とは何だ?」


「簡潔に言うと僕は勇者ではなく巻き込まれた一般人だ」


「「「え?」」」


 親子三人声が被る、仲の良いことで……


「それは本当か?」


「ステータスの称号にも巻き込まれた一般人という表記があった、まず間違えないだろう」


「……すまぬ」


 王の言葉は今までより重く心に響いてくる様に感じた。

 心の底から謝罪しているのが聞いて分かる。


「いや気にしなくて良い、僕としては異世界に来て良かったと思っている」


「そう言ってくれると私も助かる、自国の為とは言え関係のない人を巻き込んだだけでも罪深いと言うのに……その上間違えなど!つくづく私は王失格だな」


「……あんたは正しいよ、王は国民を第一に考えるのが当たり前だと僕は思う、例え理不尽な手を使おうと、自分の手が汚れようと、どれだけの人に非難されようと、関係の無い他人を巻き込んだとしても自分の国を守るのが王の勤め、責任だ……だからあんたは間違っていない」


「だが「それに僕達が召喚された時に先に休ましてくれた、寝床を用意し、朝食を食べさせてくれた、だから僕は感謝はすれど怨みはしない」……ありがとう」


「ありがとうごさいます」


 僕の長い話が終わると、目元に涙を浮かべた王が礼を言ってきた。

 そして、それに合わせるように王妃も頭を下げる。

 少女は話が難しかったのか頭を抱えている……別に理解しなくても良いのにな、親子揃って真面目か。


「それで此処から出ていて許可が欲しい」


「勇者じゃないとは言え召喚したのは此方だ、出ていく必要などないぞ」


「いや出ていきたい」


「周りの目の心配をしているなら私が抑えておこう、このまま追い出したら私の面目が立たない」


「だから良い」


「そうだ!食客として此処に居るというのはどうだ?」


 食客としても、今日この場に居たメイドから騎士から大臣まで全員が僕の姿を確認しているから誤魔化すのは不可能だろう。


「確かに食客として此処で過ごすのも悪くないが、折角の異世界だ楽しまなきゃ損だろ?」


「……そこまで言うなら出てくのは構わん、だが謝罪の気持ちとして何かさせて欲しい」


 そう来たか……でも僕としては何か貰って此処に居たという証拠を残したくない。

 後から面倒事にならないとも限らないしな。


「別にいらない」


「それでは私の気がすまん」


「そう言われても無いものは無い」


「何でも良いぞ」


 どんだけ真面目なんだよ。


 親切もしつこいと迷惑になるって言葉この世界にはないのか?それなら是非広めて欲しい。

 需要は少ないと思うけど少なくても、目の前の王には必要など言葉だ。

 でどうする?本気で欲しい物なんて無い。

 それなら……


「じゃあ一つだけお願いがある」


「何でも言いたまえ」


「あいつらを……剣崎、愛宮を絶対に死なせるな」


「それがそなたの願いか?」


「あぁ」


「分かった必ず守ろう」


「じゃあ僕はもう出ていく」


「部屋を出たら外に居るメイドに案内して貰うと良い、すでに魔法で言ってある」


「どうも」


 僕は一言言うと踵を返し、扉へと足を進める。


 扉を開けると廊下にはメイドが立っており、「ご案内します」と言って先導してくれる。

 城門の前に着くと、門の端と橋に騎士が配置されていた。

 メイドは片方の騎士に近付くと何か話しているように見える。

 そして話が終わる大きな門はゆっくり音をたてて開いていく。

 僕が一歩外に出ようとすると後ろから誰かが駆け寄ってくるのを感じた。

 振り替えると少女が息を切らしながら僕の目の前に立っていた。

 メイドと騎士達は「王女様!?」と驚いていたが、当の本人は息を整えるのに必死のご様子だ。

 やがて呼吸が正常に戻った少女は僕に頭を下げる。


「何か?」


「あ、あの!父上がすいませんでした!」


「いやその問答はさっき終わったんだが」


「父上も悪気があった訳じゃないんです!」


「いやだから終わったって」


「怨まないでください!」


「……怨んでないから」


「ありがとうごさいます!」


 耳が良いのか悪いのか分からない聴覚しやがって……

 あれだけ頭抱えていたのに、僕と王の会話ほとんど聞いてないじゃないか……


「父上は昔から大切な物の事になると周りが見えなくて……城でも噂になっててそれでそれで!父上は良い人なのに勘違いがされている事もあって、それでそれで……」


「……」


 まぁ、あの性格じゃあ勘違いしてる奴も少なからず居るだろう。


 なるほど、自分の父親が勘違いされたままかどうか心配で僕に聞きに来たって所か……


「心配しなくても僕は分かっている」


「本当ですか?」


「あぁ、君の父は王らしく、そして王らしくない立派な王だよ」


「?」


「じゃあな」


 僕の言葉の意味を理解してない少女を無視して外に出る。

 僕が外に出ると同時に門はまた音をたてながらゆっくりと閉まっていく。


「さて……異世界楽しむか!」


 そう言い城下町の方へ歩いていく。


 ――――――――――――――――――――――――


 名前 アマミネ・タイヨウ


 Lv 1


 体力 12/12

 魔力 50/50


 経験値 0

 次のLvUPまで残り 10


 攻撃 G-

 防御 G-

 俊敏 G-

 会心 G-

 運  SSS+


 《取得スキル》

 言語解読【ユニーク】

 色欲の加護【ユニーク】


 《称号》 

 巻き込まれた一般人・異世界人

 色欲の契約者

 幸運

 激運


 《ステータス恩恵》

 金運UP

 女運UP

 勝負運UP

 自動回避率15%


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