第54話 理解しないのは、知識欲がないせい

出会い系サイトで、本気で恋人を探している人と会うことになりました。

ドライブをして、話をして、親しくなって。

私が精神病を抱えていることも伝えました。

相手はそれでもいいと言ってくれました。


「俺が力になるから」


ああ、ここに私の居場所があった。

有頂天になりました。ですが、すぐに鬱の波がやってきました。


生きているだけで辛くて、涙が勝手に出てきて、眠れずに、仕事も休み続けていました。


辛くて辛くて、深夜に恋人にメールを送りました。

どれだけ辛いか、死にたいと思っていること、助けてほしいこと。


『病院に通ってるんでしょ? 早く寝なさい』


その返信で理解しました。

彼は恋人ごっこがしたいだけなんだと。私のことを理解しようとする気すらないのだと。


病院に通って、薬を飲んで、寝ていれば治る。

鬱病は心の風邪、すぐに良くなる。

そんなふうに思っていたようだと、メールの文章から感じました。

辛いと訴えても、話を聞く気もないのでした。


私は携帯をへし折って、ベッドに投げつけました。


恋人はその後、会いに来ることもありませんでした。

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