第53話 男あさり
職場へどんな顔をして行けばいいのか、わかりませんでした。
言いふらし上司にどんな顔をしてみせたらいいのか、わかりませんでした。
恋愛経験も性体験もほぼないのが原因だ、早急になんとかしなければ。
そう思い、出会い系サイトに登録しました。
当時、出会い系サイトは非常に流行していて、街なかで看板をみたり、宣伝用のポケットティッシュをもらったりすることが日常茶飯事でした。
そんな宣伝活動が活発な、最大手と思われるサイトを選びました。
出会い系サイトには不順で危険な出会いだけがあると思っていましたが、そんなウシログライことばかりではありませんでした。
結婚相手を本気で探している人もいました。性格の合うお付き合い相手を求める人もいました。
しかしやはり、目立つのは性的な遊び相手を探している人でした。
私は一回きりの性的な付き合いができれば良かったので、出会いはいくらでもありました。
容姿も年齢も気にしなければ、すぐに会う約束ができました。
何人と会ったか覚えてないくらい、経験を重ね、性行為にすっかり慣れ、男性にも慣れました。
当初の目的は達成しましたが、出会い系サイトでの男漁りはやめられませんでした。
どこかに本当に私を好きになってくれる人がいるのではないかと。
私をどこか遠くへさらっていってくれる人がいるのではないかと、思ったのです。
悟りました。
私はずっと、平安な居場所が欲しかった。
それだけだったのです。
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